銀河鉄道の夜
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銀河鉄道の夜
訳題Night on the Galactic Railroad
作者
宮沢賢治
日本
言語日本語
ジャンル童話
刊本情報
収録宮澤賢治全集 第三卷
出版元文圃堂書店
出版年月日1934年
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『銀河鉄道の夜』(銀河鐵道の夜、ぎんがてつどうのよる)は、宮沢賢治童話作品[注釈 1]。孤独な少年ジョバンニが、友人カムパネルラと銀河鉄道の旅をする物語で、宮沢賢治童話の代表作のひとつとされている。

作者の死により未定稿のまま遺されたこと、多くの造語が使われていることなどもあって、研究家の間でも様々な解釈が行われている。この作品から生まれた派生作品は数多く、これまで数度にわたり映画化やアニメーション化、演劇化された他、プラネタリウム番組が作られている。
成立

1924年ごろに初稿が執筆され、晩年の1931年頃まで推敲が繰り返された後、1933年の賢治の死後、草稿の形で遺された。初出は1934年刊行の文圃堂版全集(高村光太郎ら編。全国書誌番号:.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}47022638。)である。未定稿のため本文の校訂が研究者を悩ませてきたが、筑摩書房版全集(『校本宮澤賢治全集』、1974年)の編集過程で綿密な検討が行われ、第1次稿から4次稿まで3回にわたって大きな改稿が行われたことが明らかになった[注釈 2]

第1-3次稿(初期形)と第4次稿(最終形)の間には大きな差異がある。「銀河鉄道の夜」という題名や、冒頭の三章分、そして結末のカムパネルラが川で行方不明になる挿話などは第4次稿で追加されたものである。また、第3次稿までは「銀河鉄道の旅はブルカニロ博士(後述)の実験により主人公が見た夢だった」という設定であるが、最終形に博士は登場しない。

文圃堂版全集以来長く読まれてきた刊本では、ブルカニロ博士の存在が大きな位置を占めていたが、博士の登場しない展開が最終形であることが判明しており、校本全集以降の刊本では博士の登場する展開を「初期形」として別作品と扱っている[注釈 3]。以下のあらすじは第4次稿(最終形)によるものである。

なお、「最終形」とは「第4次稿以後の改稿が確認されていない」という意味であり、「賢治が第4次稿を決定稿とし、これをもって正式な作品とみなした」という事ではない。
あらすじ天の川(7月22日)(草稿で実際に章番号が振られているのは「一、」と「三、」のみで、他は全集での校訂時に補われたものである)
一、午后の授業
銀河系の仕組みについての授業。天の川について先生に質問されたジョバンニは、答えを知りつつ気もそぞろに答えることができない。次に指されたカムパネルラも、答えない。
二、活版所
放課後、ジョバンニは活版所活字拾いのアルバイトをする。仕事を終えたジョバンニは、パン角砂糖を買って家へ急ぐ。
三、家、
家に帰ると牛乳が未だ配達されていない。病気の母親と、北方へ漁に出たきり帰ってこない父のことやカムパネルラのことなどを話す。ジョバンニは、銀河のお祭り(烏瓜あかりを川へ流す)を見に行く、と言って家を出る。
四、ケンタウル祭の夜
牛乳屋(牧場)に行くが、出てきた老婆は要領を得ず、牛乳をもらえない。途中で、同級生のザネリたちに会い、からかわれる。一緒にいたカムパネルラは気の毒そうに黙って少し笑っている。銀河のお祭りを楽しむザネリたちと別れて、ジョバンニは一人町外れの丘へ向かう。
五、天気輪の柱
天気輪の柱の丘でジョバンニは一人寂しく孤独を噛み締め、星空へ思いを馳せる。
六、銀河ステーション
突然、耳に「銀河ステーション」というアナウンスが響き、目の前が強い光に包まれ、気がつくと銀河鉄道に乗っている。見るとカムパネルラも乗っていた。
七、北十字とプリオシン海岸
北十字の前を通った後、白鳥の停車場で20分停車する。二人はその間にプリオシン海岸へ行き、クルミ化石を拾う。大学士がの祖先の化石を発掘している現場を見る。
八、鳥を捕る人
気のいい鳥捕りが乗車してくる。彼は、鳥を捕まえて売る商売をしている。ジョバンニとカムパネルラは鳥捕りにを分けてもらい食べるが、お菓子としか思えない。突然鳥捕りが車内から消え、川原でさぎを捕り、また車内に戻ってくる。
九、ジョバンニの切符
(以下、全体のおよそ半分にわたり章立てはない)アルビレオ観測所の近くで検札があり、ジョバンニは自分の切符だけが天上でもどこまででも行ける特別の切符であると知る。の停車場のあたりで、鳥捕りが消え、青年と姉弟が現れる。彼らは、乗っていた客船が氷山に衝突して沈み、気がつくとここへ来ていたのだという。かおる子(姉の少女)とは長い会話を交わす。蠍(さそり)の火を眺めながら、かおる子は「やけて死んださそりの火」のエピソードを話しはじめ、ジョバンニたちは、黙ってそれを聞く。その後列車はケンタウルの村を通過する。少女たちと別れ際に、「たった一人の本当の神様について」宗教的な議論が交わされる。天上と言われるサウザンクロス(南十字)で、大半の乗客たちは降りてゆき、ジョバンニとカムパネルラが残される。二人は「ほんとうのみんなのさいわい」のために共に歩もうと誓いを交わす。その直後、車窓に現れた石炭袋を見たふたりは、非常な恐怖に襲われる。ジョバンニはカムパネルラをはげますが、カムパネルラは気の乗らない返事をしたのち、「あすこにいるのぼくのお母さんだよ」といい残し、いつの間にかいなくなってしまう。一人丘の上で目覚めたジョバンニは町へ向かう。今度は牧場で牛乳をもらい、川の方へ向かうと「こどもが水へ落ちた」と知る。同級生から、カムパネルラは川に落ちたザネリを救った後、溺れて行方不明になったと聞かされる。カムパネルラの父(博士)は既にあきらめていた。博士は、ジョバンニの父から手紙が来た、もう着く頃だとジョバンニに告げる。ジョバンニは胸がいっぱいになって、牛乳と父の知らせを持って母の元に帰る。
解説

「けれどもほんたうのさいはひは一体何だらう。」

漁から戻らない父のことでクラスメイトにからかわれ、朝夕の仕事のせいで遊びにも勉強にも身が入らない少年ジョバンニは、周りから疎外され、あたかも幽霊のような存在として描かれている。

星祭りの夜、居場所を失い、孤独をかみしめながら登った天気輪の丘で、銀河鉄道に乗り込み、親友カムパネルラと銀河めぐりの旅をしばし楽しむ。二人は旅の中で出会う様々な人の中に次々と生きる意味を発見して行く。旅の終わりにジョバンニはさそりの話に胸を打たれて、カムパネルラに、みんなの本当の幸いのためにどこまでも一緒に行こうと誓い合うが、カムパネルラは消えてしまう。悲しみのうちに目覚めたジョバンニは、まもなくカムパネルラが命を犠牲にして友達を救った事実を知る。この瞬間、ジョバンニは銀河鉄道の旅が何を意味していたのか気づいて、みんなの本当の幸いのために尽くすことに、生きる意味を悟った[1]

さらに父が間もなく帰ってくることを知らされ、勇気づけられる。こうしてジョバンニは星祭りの夜、幽霊であった自分と決別して、母の元に戻ったのである。みなみじゅうじ座石炭袋。上方の明るい2つの星はβ星α星

銀河鉄道の旅は、銀河に沿って北十字から始まり南十字で終わる異次元の旅であり、ふたつの十字架はそれぞれ石炭袋を持っている[2]。石炭袋が一般に暗黒星雲だと知られるようになったのは最近のことであり[3]、かつては天文分野の専門書でもしばしば「空の穴」と表現されていた[4]。賢治は南北ふたつの石炭袋を冥界と現世を結ぶ通路として作品を構成した[3]とされている。

南十字の天上に行かなかったカムパネルラの行方については、ブルカニロ編にふれ輪廻したという解釈[5]や、母の記述にふれ、万物の母の元に帰ったという解釈[6]など、様々に解釈されていて定説はない。


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