銀河英雄伝説_Die_Neue_These
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この項目では、田中芳樹の小説について説明しています。

1988年から2000年までのアニメ化作品については「銀河英雄伝説 (アニメ)」をご覧ください。

2018年以降のアニメ化作品については「#アニメ『銀河英雄伝説 Die Neue These』(2018-)」をご覧ください。

ゲーム化作品については「銀河英雄伝説 (ゲーム)」をご覧ください。

銀河英雄伝説
ジャンルスペースオペラ[1]群像劇[2]歴史小説[2]
小説
著者田中芳樹
出版社徳間書店
レーベルトクマ・ノベルズ
刊行期間1982年11月 - 1989年7月
巻数全14巻(本編10巻+外伝4巻)
その他他の版の詳細については#既刊一覧を参照
テンプレート - ノート
ポータル文学

『銀河英雄伝説』(ぎんがえいゆうでんせつ)は、田中芳樹によるSF小説。また、これを原作とするアニメ漫画コンピューターゲーム朗読オーディオブックなどの関連作品。略称は「銀英伝」[3]。2022年1月時点で累計部数は1500万部を突破している[4]。1982年から2023年までに複数の版で刊行されている。
作品概要

遠未来の銀河系を舞台に、数多くの英雄たちによる攻防と権謀術数を、ラインハルト・フォン・ローエングラムヤン・ウェンリーの2人を軸に描くスペースオペラ

対立する陣営のイデオロギー、人物像、権謀術数、歴史、人物模様などの群像劇の流れを前面に出し、「後世の歴史家」の観点から叙述することで、架空の歴史小説のような体裁をとっている。作者はのちに架空の歴史小説『アルスラーン戦記』を発表することになるが、この『銀河英雄伝説』においても、作者の歴史・文学の知識は色濃く反映されており、中国史をはじめとする歴史上のエピソードがしばしば顔をのぞかせている。

架空の要素としては、執筆時の現行技術の延長線上である「宇宙艦艇」「宇宙要塞」「ビーム兵器」などが登場するが、運用法は執筆時の戦争における地上の戦線や陣形などの概念の延長上にある。

超能力」「魔法」「未知のエネルギー」「戦闘用ロボット」「アンドロイド」「クローン人間」といった世のありかたを大きく変える要素や、「異星人種族」を登場させなかったのは、史実、あるいはそれを基にした過去の文学作品を念頭に、人間同士の営みから生み出される歴史ドラマとしての構成を意図したためである。一方で「超光速通信」「ワープ航法」「重力制御」「サイボーグ[5](義手や義眼など)」といった執筆時における非科学的な要素は登場している[6]
出版歴

本作の原形となったのは、1970年代の末に当時は李家豊(りのいえ ゆたか)名義であった田中芳樹が、幻影城の「幻影城ノベルス」から新書ノベルズとして出版する予定で書き進めていた『銀河のチェス・ゲーム』である[7]。この作品は幻影城の倒産によって未完のまま中断したが、のちに徳間書店の編集者がその原稿を読み、本編より数世紀前のエピソードを描いた序章の部分を膨らませて描くよう勧めた。

1982年11月、徳間書店のトクマ・ノベルズより『銀河英雄伝説』が刊行された。これは本編第1巻「黎明篇」に当たるが、本作に先立ち同社から刊行された著作『白夜の弔鐘』の売り上げ不振[8]、その時点では2巻以降を出すかどうかは未定(売れ行き次第)だったため、初版には巻数およびサブタイトルが入っていない。

結果的には第1巻が増刷されるに至り、第2巻も刊行されることとなり、以後は第1巻も含めてローマ数字で巻数表記が付くようになった。当初はさほどの売れ行きではなかったものの、3巻を皮切りに人気に火がつき、1987年までに本編全10巻が書き下ろし刊行された。1988年には読者の支持を得て、第19回星雲賞日本長編部門を受賞した[3]

本編以外に外伝があり、1984年から1989年にかけ、徳間書店『SFアドベンチャー』に連載または同誌増刊号に一括掲載された長篇が4本(いずれも新書ノベルス1冊分)、同誌読み切りの短篇4本に、漫画の原作になった短篇『黄金の翼』がある。短篇の方は長らく単行本未収録であったが、徳間デュアル文庫版で1冊にまとめられた。

外伝は全6冊の執筆が予告され5冊が刊行されているが、最後の1冊分は未だ書かれていない。その理由について田中は「アルスラーン戦記などで手一杯となったことと、構想らしい構想が出てこなかったこと」を挙げており、「あれはもうなかった事にしておいてください」と今後執筆はないことを明かしている[9]

本作はラインハルトの死をもって完結しており、最終巻あとがきで著者は後日談も含めた続編を書かないことを宣言している。実際、前述の外伝は全て、本編以前あるいは本編では描かれなかった隙間を埋めるエピソードとなっている。

本作はベストセラーかつロングセラーとなり、刊行以来重版増刷が繰り返されてきたトクマ・ノベルズ版の第1巻は初刊からほぼ20年目にして100刷の大台を超えている。

新書ノベルス版以外に、箱入りハードカバーの愛蔵版、徳間文庫版、2000年から2003年にかけて「ファイナルバージョン」と銘打って刊行された本編全20巻、外伝全9巻、これにハンドブックを加えた全30巻の徳間デュアル文庫版(巻数が増しているのは、ジュブナイル向けに従来の1巻分を2分冊にしているため)など、様々な版が刊行されている。各版の主な違いについては既刊一覧の項を参照のこと。

版元を徳間書店から東京創元社に変えた新装版が、2007年2月から2009年6月にかけて、創元SF文庫より全10巻+外伝全5巻として刊行された。
他メディア化関連

※詳細は# メディア展開・商品化を参照。

アニメ・漫画・朗読オーディオ・舞台(宝塚歌劇含む)など、多彩なメディアで本作を基にした作品が作られているが、特にアニメについては1988年から2000年にかけて劇場版アニメおよびOVAシリーズ『銀河英雄伝説』が制作。2018年からは完全新規制作アニメ『銀河英雄伝説 Die Neue These』シリーズが公開(現在も展開中)。

朗読オーディオに関しては1988年 - 2000年版のアニメを補完する意味合いもあり、2013年6月には創元SF文庫の朗読・オーディオブック版も株式会社アールアールジェイのサイト「キクボン」にて随時発売され、本伝の全朗読を完遂。さらに2015年12月に唯一アニメ化されていなかった『銀河英雄伝説 外伝 ユリアンのイゼルローン日記』が、アニメの声優陣が再集結して制作された[10]
あらすじ

遥かな未来、銀河に進出した人類は、二大陣営に分かれて戦っていた。皇帝と貴族が支配する銀河帝国(帝国)と、帝国から脱出した共和主義の人々が建国した自由惑星同盟(同盟)である。広大な航行不能宙域の間に挟まる2か所の回廊宙域でのみ結ばれた両陣営の戦争は、開戦から実に150年間が経過していた。長き膠着の果て、ラインハルト・フォン・ローエングラムとヤン・ウェンリーという若き英雄が相次いで両陣営に登場することで、歴史は大きく動き始める。
ラインハルトとヤンの台頭(原作1 - 2巻)

帝国の貧しい貴族に生まれたラインハルトには母代りの敬愛する姉と、無二の親友キルヒアイスがいた。しかし、彼が10歳の時に、姉が皇帝の後宮に収められたことを契機として、ラインハルトは軍人の道を歩み始める。それは、いつか皇帝から姉を取り戻す力を得るためだった。

彼はキルヒアイスと共に戦場で武勲を重ね、後に"常勝の天才"と呼ばれることになる軍事的才能と、皇帝の寵姫となった姉の後ろ盾により、20歳の若さにして帝国元帥の地位を手に入れる。皇帝はラインハルトが倒す前に病死するが、その後に起きた帝位継承権争いの内戦にもラインハルトは勝利する。

憎んできた大貴族たちを滅ぼし、新皇帝を傀儡として、ついに彼は帝国の最高権力者にまで登りつめる。しかし、その内戦でラインハルトはキルヒアイスを失い、それにより姉も彼と距離を置くようになる。ラインハルトは心の渇きを感じるようになり、まるでそれを満たそうとするかのように、亡き親友と約束した宇宙の統一へと邁進して行く。

一方、同盟に生まれたヤンは、歴史家を志す青年だったが、経済的事情により学費が無料の士官学校に入学する。軍で思わぬ功績を立てたヤンは宇宙艦隊の幕僚となり、ラインハルトが指揮する帝国軍との戦いで、劣勢な味方の全面的な崩壊を防いだことにより、若くして艦隊司令官に抜擢される。

ヤンは、帝国軍の前線基地で同盟軍が幾度も攻略を試みながらその都度多大な犠牲を出して失敗したイゼルローン要塞を無血占領し、それに続く戦いで、またもやラインハルトの完全勝利を阻止したことで、"不敗の魔術師"と呼ばれるようになる。
帝国軍の侵攻と自由惑星同盟の併合まで(原作3 - 5巻)

同盟軍の戦力はラインハルトとの戦いで著しく損耗し、国防はイゼルローン要塞とそこに駐留するヤン艦隊に託されるようになる。安全な場所にいる主戦論者が戦争を煽り立て、衆愚政治化が進む現在の同盟を憂うヤンであったが、民主主義を信奉する彼は一軍人としての職務を全うしようとする。その一方で、独裁者のラインハルトが清廉な政治を行い、戦場では常に陣頭に立つことを高く評価して、その矛盾に悩むのだった。元戦災孤児であり、今はヤンの被保護者として学ぶユリアン・ミンツ少年は、そんなヤンの姿を見て少しずつ成長していく。

イゼルローン要塞が位置する回廊とは逆方面のもう一つの回廊に位置する、帝国のフェザーン自治領は、経済力を武器として両勢力を相手に事実上の中立を保っていた。だが、亡きキルヒアイスに誓った宇宙統一を目指すラインハルトは、圧倒的戦力をもってフェザーンを併合すると、そのまま同盟領に侵攻する。

ヤンは劣勢を覆すためにラインハルトとの直接対決を望み、彼を戦場に引きずり出すために、帝国軍の艦隊を各個撃破していく。ラインハルトはヤンの意図を見抜いたが、ヤンへの勝利に拘ってヤンと直接対決し、敗北寸前にまで追い込まれる。

ところが、帝国軍の別働隊が同盟の首都を包囲し、恫喝に屈した同盟政府が停戦命令を出したことで、宇宙はラインハルトによって統一されることになる。ヤンは後日の帝国への抵抗活動の核とすべく、一部の部下に僅かばかりの艦艇を託して逃亡させる。また、ラインハルトはこの同盟領侵攻中より、不意の発熱を繰り返すようになっていく。
同盟の滅亡とヤンの暗殺まで(原作6 - 8巻)

ラインハルトは傀儡としていた幼帝を廃して自ら皇帝に即位し、ヤンも軍を退役する。しかし、同盟領に進駐した帝国軍の司令官は潜在的な脅威としてヤンを排除しようとし、その意を汲んだ同盟政府までもがヤンの殺害を謀ったので、ヤンは同盟首都からの脱出を余儀なくされる。

ヤンと彼の部下たちは帝国から分離独立を表明した地方政府に身を寄せ、イゼルローン要塞を再奪取し、宇宙に民主共和制の種を残そうとする。ラインハルトはこのことを口実に、同盟を完全に廃し、ヤン一派を討伐するために出兵するが、ヤンは圧倒的な大艦隊を相手に善戦を続ける。

やがて交戦中にラインハルトは発熱して倒れ、その最中に亡きキルヒアイスの優しい姿を思い出したことで、ヤンとの会見を望むようになる。だが、ヤンは会見に向かう途中でテロリストに暗殺されてしまい、ラインハルトは好敵手の死に失望して、そのまま軍を引き上げる。
ヤンの死からラインハルトの死まで(原作8 - 10巻)

同盟を完全併合したラインハルトはフェザーンへの遷都令を布告する。銀河には新たな平和の世が訪れたものの、ラインハルトの体調はさらに悪化していく。一方、ヤンの遺志を継いだ僅かな人々はイゼルローン要塞に立てこもっていた。ヤンの薫陶を受けたユリアンは、若くしてヤンの後継者に選ばれ、イゼルローン軍の軍事指導者に就任する。

ユリアンは、ラインハルトの本性が"戦士"であり、戦うことによって相手の意志の重さを測る人物であることを見抜き、帝国と対等に交渉するには何らかの軍事的成果が必要であるとの結論を導きだす。イゼルローン軍はラインハルトに最後の決戦を挑み、艦隊戦の最中、ユリアンはラインハルトの旗艦に乱入する。多くの味方の死と引き換えにラインハルトの前にたどり着き、最後には力尽きて気を失ったものの、その姿に心を動かされたラインハルトは全軍に停戦を命令し、戦いは終結する。

しかし、不治の病による発熱に苦しむラインハルトの肉体は、もはや死を避けられないまでに衰えていた。ユリアンと数回の会談を重ねたラインハルトは、イゼルローン要塞の返還と引き換えに、旧同盟首都星系での共和主義者の自治を認めた後、フェザーンにて崩御する。その時、ラインハルトは25歳。皇帝に即位して、わずか2年余りのことだった。
登場人物詳細は「銀河英雄伝説の登場人物」を参照
ラインハルト・フォン・ローエングラム
本作の銀河帝国側の主人公であり、物語全体の主人公。”常勝の天才”の異名を持つ、作中屈指の軍事の天才。最愛の姉アンネローゼを皇帝の寵姫として奪われた反抗心から銀河帝国(ゴールデンバウム朝)の打倒ひいては銀河を統一して全てを手に入れることを志す野心家の青年。同盟側の主人公ヤンと並ぶ天才的な軍事の才能を持ち、最下級貴族の出ながら数々の武功を挙げて本編開始時点で20歳の若さながら既に上級大将・伯爵の地位にいる。物語序盤のリップシュタット戦役(皇位継承戦争)を経て帝国の全権を手に入れ事実上の最高権力者となった後は、銀河統一のために対同盟との戦争に力を入れるようになり、好敵手である同盟側の主人公ヤン・ウェンリーと熾烈な戦いを重ねる。同盟を降して銀河統一を果たした後には新銀河帝国初代皇帝となりローエングラム朝を開闢する。その後は独立勢力となったヤンに手を焼きつつ、地球教やラングといった佞臣の陰謀にも対応を追われる。作中最後の戦いとなるシヴァ星域会戦においてヤンの後継者となったユリアンの実力を認め、自治政府という形での民主共和制の存続を許す。物語終盤で体調を崩すシーンが目立ち始め、やがてこれが未知の病かつ不治の病と判明し、25歳で崩御したところで物語は閉じる。詳細は「ラインハルト・フォン・ローエングラム」を参照
ヤン・ウェンリー
本作の自由惑星同盟側の主人公。”不敗の魔術師”の異名を持つ。民主共和制の理念を第一とする共和主義者の青年将校であり、帝国側の主人公ラインハルトと並ぶ作中随一の軍事の天才。「魔術師ヤン(ヤン・ザ・マジシャン)」、「奇蹟のヤン(ミラクルヤン)」などとも呼ばれる。士官学校を卒業したばかりの21歳の時に任地の惑星エル・ファシルで活躍したため、「エル・ファシルの英雄」と呼称される。本来は歴史家志望であり、経済的問題で軍人の道を歩むこととなったために、およそ軍人らしくない性格・態度をしており、そのために上官受けが悪く、その活躍や能力に比して本編開始までは重用されずにいた。物語序盤のアスターテ会戦において完全な敗勢の状況から代理で艦隊指揮を執ることとなって戦果を挙げ、その後に新設の第13艦隊司令官に任命されて作中で活躍する。選挙対策を目的とした腐敗した同盟政府や、軍上層部の政治劇などに翻弄される理不尽な展開にも、あくまで民主共和制の軍人として振る舞い無敗を重ねるが、結果的にラインハルト率いる帝国に同盟自体は蹂躙されていく。同盟滅亡後も民主共和制の理念を守るために、エル・ファシル独立政府の事実上のリーダーとして強大な新帝国軍と戦い、回廊の戦いを経てついに目標であった和解の道を開くも、その矢先に地球教のテロに遭い、暗殺される(第8巻)。その後、その意思は被後見人のユリアンに引き継がれる。詳細は「ヤン・ウェンリー」を参照

銀河英雄伝説の登場人物 - 総覧。凡例などを記載。

銀河英雄伝説の登場人物・銀河帝国 - 銀河帝国側の登場人物の一覧。

銀河英雄伝説の登場人物・自由惑星同盟 - 自由惑星同盟側の登場人物の一覧。

銀河英雄伝説の登場人物・その他 - フェザーンや地球教などの登場人物の一覧。

銀河英雄伝説の歴史上の人物 - 作中の歴史上の人物の一覧。


物語の世界銀河英雄伝説の用語については「銀河英雄伝説の用語」を、登場勢力については「銀河英雄伝説の登場勢力」を、舞台については「銀河英雄伝説の舞台」を、戦役については「銀河英雄伝説の戦役」を参照

物語の舞台となる未来の宇宙、人類はワープ航法を実現させて太陽系外に進出し、銀河系の3分の1にまでその居住圏を広げている。
舞台設定

銀河系
銀河帝国と自由惑星同盟の間には航行不能な宙域が広がり、ワープ航法でも飛び越えることのできない障壁となっており、両国間はイゼルローン回廊ならびにフェザーン回廊と呼ばれる二つの狭隘な航行可能宙域を介してのみ往来できる[11]。イゼルローン回廊には要塞が置かれ民間船の往来を扼する一方、フェザーン回廊にはフェザーン自治領が存在し、両国間の交易の要衝として富を蓄積するとともに、その富を背景に帝国・同盟に対して政治力・経済力を及ぼして軍事行動を抑制している。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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