鉄道車両におけるハイブリッド
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この項目では、内燃機関とエネルギーの貯蔵機構を併載する鉄道車両について説明しています。その他の用法については「ハイブリッド機関車」をご覧ください。

鉄道車両におけるハイブリッド(てつどうしゃりょうにおけるハイブリッド)では、内燃機関と、蓄電池フライホイールなどのエネルギーを貯蔵する機構を併載する鉄道車両について扱う。

2000年代以降の環境意識の高まりは、従来、自動車との比較でエネルギー効率が高く環境に優しいとされてきた鉄道車両の分野にも及びつつあり、より一層のエネルギー効率の向上が求められつつある。

ハイブリッド鉄道車両は、ディーゼルエンジンによって発電した電気を蓄電池に貯め、主電動機のみで駆動する(電気式気動車に蓄電池を付加した形)シリーズ方式と、ディーゼルエンジンと主電動機(電源はシリーズ方式に同じ)の双方を直接駆動に用いるパラレル方式(マイルドハイブリッド方式を含む)の2つの方式に大別される。なお、方式については事業者ごと、あるいは車両ごとに独自の呼称が使用されている場合がある。
概要
特徴

ハイブリッド機関車・気動車の利点としては、回生ブレーキを使用して発生した電気を蓄電池に貯蔵するなどすることにより、従来は制動時に摩擦熱として捨てられていたエネルギーの回収が可能で、それを動力用として再利用できる点が挙げられる[注 1]。また、力行時に必要とされる出力をエンジンだけに頼ることがなくなるため、エンジン稼働時間の短縮や小排気量化が可能となり、排出ガス量の低減。ただし、欠点としては蓄電池の搭載により重量が増加するため、上り勾配斜度や距離などの条件次第ではむしろエネルギー効率が落ちることも考えられる。

鉄道車両でのハイブリッド機構の開発・導入は特に気動車を中心に19世紀末から行われているが、20世紀末から21世紀にかけての環境意識の高まりとともに、さらなるエネルギー効率の向上を目指して各国で導入が進んでいる。
日本におけるシリーズハイブリッド式気動車の導入「日本の電気式気動車#電気式の将来(ハイブリッド気動車・新世代の電気式気動車)」も参照

日本国有鉄道(国鉄)時代から、出力が低い割りに重量が過大となる電気式気動車が敬遠されてきた日本では、2000年代以降、シリーズハイブリッド気動車という形で電気式気動車の導入への試行が行われた。日本で電気式気動車が顧みられるようになったことには、次のような背景がある。

性能面 ディーゼルエンジン技術向上によるエンジンの軽量化・高効率化が進み、ステンレス素材等による車体の軽量化も進展する一方、軽量な誘導電動機交流発電機が鉄道車両用に実用化され、電気式気動車が液体式気動車と遜色ない性能を得られるようになった。

液体式気動車に対する総合的な優位性 液体式気動車における専用機器類として、液体変速機、変速機と台車間の推進軸(プロペラシャフト)、駆動力を台車内で直角に方向転換する減速機といった装置が挙げられる。これらは日本国内の限られた気動車向けに比較的少数が供給されているに過ぎず、コスト高の原因である。加えて、走行中に角度を変えながら高速回転する推進軸回りは脱落事故のリスクが付きまとい、安全上問題であった。電気式気動車は、台車および主電動機、動力伝達装置を電車と共用でき、制御装置や補助機器類についても電車と共通化させやすい。電車の駆動系機器は液体式気動車のそれより格段に量産規模が大きく、台車内でパッケージ化されていて安全性・信頼性にも優れるため、その採用はイニシャルコスト、メンテナンスコストの両面で得策である。

技術的拡張性 電気式気動車は、エンジンと駆動系が機械的に切り離されているため、電車同様、システム全体のモジュラー化が容易となる。これにより、ハイブリッド方式の採用や、発電ユニットをエンジンから燃料電池に置き換え得るなど、技術の進展に合わせた拡張性に優れる。

また、ハイブリッド鉄道車両を含む電気式気動車については、甲種内燃車運転免許だけでなく、甲種電気車運転免許でも追加の教育を受ければ運転することができるようになっており、鉄道事業者の運転教育などのコストが低減されている[1][2]

なお、日本における電気式気動車の復権は当初ハイブリッド気動車によって開始されたが、蓄電池を搭載しない純粋な電気式気動車の導入も広がりつつある。
方式シリーズハイブリッド
シリーズ方式「シリーズハイブリッド」も参照

シリーズ方式(直列方式)は、エンジンで発電機を駆動して発電し、モーターを車軸の駆動と回生に使用し、さらにエンジンで発電した際の余剰電力および回生ブレーキにより発生した電力を回収するための蓄電池を有するもので、電気式気動車に蓄電池を付加した形(あるいは電車にディーゼル発電機と蓄電池を付加した形)である。自動車では日産自動車の「e-POWER」や、ダイハツ工業の「e-SMART HYBRID」が同様のシステムとなる。

電気式気動車の発電機とモーターの間に大容量バッテリーを追加することにより、エンジンと発電機双方の小型化とエンジンの使用率低減を可能とし、効率を改善したのがシリーズ方式である。モーター駆動であるため出力制御が容易で、通常の内燃車に必須な変速機や推進軸が不要であることが利点であるが、内燃車と電気車のシステムが共存するため、システム占有体積と重量が大きくなること、エンジン動力を一旦電気に変換する際に発生するエネルギーの損失が多く、回生制御が働かないと効率が落ちることが欠点となる。パラレルハイブリッド
日野自動車・HIMRシステムの例
パラレル方式「パラレルハイブリッド」も参照

パラレル方式(並列方式)は、搭載している複数の原動機を車輪の駆動に使用する方式である。エンジンの出力はトルク × 回転数の関係にあるため、低回転時には十分なパワーが得られないばかりかアイドリングを含めて効率が悪く、排出ガスの浄化能力も落ちる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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