鉄道信号機
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この項目では、鉄道信号機全般について説明しています。日本での鉄道信号機については「日本の鉄道信号」をご覧ください。

踏切を渡るものに列車の接近を知らせるものについては「踏切警報機」、「交通信号機」をご覧ください。

路面電車については「交通信号機」もご覧ください。
ヨークイギリス国立鉄道博物館に展示されている腕木式信号機

鉄道信号機(てつどうしんごうき)英語 railroad signalは、鉄道線路脇に設置されて前方の状況を運転士に伝える装置である。信号機は、運転士に列車が安全に進行できる速度を指示し、または停止を指示する。運転士は信号機の現示を確認してそれに従って運転を行う。
信号機の用途と設置位置

信号機は下記の指示を現示する。指示は複数の組み合わせであることもある。

路線前方(
閉塞区間)における列車の在線状況

列車が進行してよいかどうか

分岐器が正しく開通しているかどうか

どの進路が開通しているか

次の信号機の現示状況

列車の運行順序

信号機は下記のような場所に設置される。

閉塞区間の先頭

分岐器や跳ね橋のような可動物の手前

他の信号機の手前

踏切の手前

プラットホームやその他列車が停車する必要のある場所の手前

連動駅

鉄道路線は通常、信号機が連続的に設置されて制御されている。複線では通常、列車の進行方向が1方向に限定されるため、信号機の向きも1方向に向けて設置される。単線並列の区間では、両方の線路に双方向に信号機が設置される。側線や留置線・車両基地操車場内での列車は信号機で制御されないが、車両基地や操車場と本線の出入り線などは制御されることが多い。
現示と指示イギリスの腕木式信号機、従属信号機付きフィンランドのMuhos駅西側にある遠方信号機。その先の信号機が停止であることを現示している。後方の列車は駅を出発する急行81列車。

現示とは、信号機の見た目、表示状況であり、指示とは現示が意味する内容を指す。日本ではルートシグナルスピードシグナルを兼ねて現示するのに対し、アメリカでは、信号機の指示に慣習的な名前が付けられており、例えば"Medium Approach"とは「中くらいの速度を超えずに前進して、次の信号機での停止に備える」という意味である。歴史的に鉄道事業者によりそれぞれ異なった意味が同じ現示に対して与えられているため、合併によって誕生した現代の鉄道事業者では、地域ごとに信号現示の解釈規則が異なることも珍しくない。

色灯式の信号機において、各灯火の色が全体の灯火組み合わせに包含されているという点は重要である。例えばアメリカにおいては、進行現示として赤の灯火の上に緑の灯火を表示するものが多い。この場合、赤の灯火は停止現示を意味するのではなく、現示の組み合わせ要素であるに過ぎない。灯火が消灯している場合など、現示が完全に表示されていない場合には、表示されているものから推測しうる最も制限の厳しい指示と受け取られる。

信号機は、設置されている位置から先の区間において、列車の動きを制御する。また、前方に設置されている信号機の状態に関する情報を伝える。信号機は、前方の分岐器や線路の区間を「防護する」(protect) と呼ばれる。前方の (ahead of)、という言葉はしばしば誤解を招くため、公式には外方 (in rear of)、内方 (in advance of) という言葉が用いられる。列車が信号機によって停止している時、その列車は信号機の外方におり、信号機によって防護されている区間(閉塞区間)が内方である。

信号機には絶対信号機 (absolute signal) と許容信号機 (permissive signal) の区別がある。絶対信号機では停止現示が出ている時にはそこから前進することは許されないが、許容信号機では停止現示が出ていても、手前で一定時間停止した後、低速で前進することが許されている。さらに、許容信号機の中には勾配信号機 (grade signal) として指定されるものがあり、この場合は停止現示でも列車は実際に停止せずに、いつでも停止できる程度の速度に落としてそのまま前進することが許される。これは重量貨物列車など、上り勾配区間で一度停止してしまうと再発進が困難な列車に対応するために設けられている規定である。連動装置によって制御されている信号機は一般的に絶対信号機であり、在線状況によって自動的に現示が変化するような信号機は一般的に許容信号機である。

運転士はどの信号機が自動的に現示変化するものであるかに注意を払う必要がある。イギリスでは、そのような信号機には黒い水平線を引いた白い四角の板が取り付けられている。そして、そのような信号機で停止現示に遭遇した場合、列車無線や信号機に備えられている電話で信号扱手と連絡を取ることができなければ、運転士の権限で先へ進むことができる。しかしながら、連動装置で制御されている信号機や準自動変化の信号機(黒い水平線の上に"semi"と書かれている)では、運転士だけの判断で進行することはできない。

自動車の信号機と違い、表示は運転士のためだけに行っている場合がある。このため、編成が長い列車の場合、乗客や外から見ている人には信号無視に見えるが異常では無い。(閉塞されるため先頭車両が通過するとその編成が残っていても赤信号となる。この赤信号は次の編成の為の信号である)
信号機の形式

信号機は、現示の表示方法と、線路に対する設置方法で分類できる。
機械式信号機ポーランド、Ko?cierzynaにある腕木式信号機イギリスの腕木式信号機、かつてのイギリス国鉄サウス・リージョン (South Region) のもの

最も古い形の信号機では、現示は信号機の一部分が物理的に動くことで行われた。最初期のものは、運転士から見えるように正対して向けるか、運転士から実質的に見えないように線路に平行して向けるか、回転させることのできるボードであった。

腕木式信号機は1840年代にジョセフ・スティーヴンス (Joseph James Stevens) によって特許が取得され、間もなく広範囲で使われる機械式信号機となった。

腕木式信号機の腕は、異なる角度に回転する腕と、色つきレンズによって構成されている。通常は、これらの2つの部品が1つに構成されて一緒に回転するが、例えばソマーサルト信号機のように腕の中央部分を支点に回転するようになっていて、レンズと腕が分離している方式の信号機もある。腕木が水平に突き出している状態が最も制限的な現示に対応し、それ以外の角度になっている時は、より制限のない現示を意味している。

腕木式信号機には下動作式のものと上動作式のものがある。制限が少ない現示になるにつれて、下動作式では腕が下に回転し、上動作式では腕が上に回転する。どちらの方式でも2現示または3現示を用途に応じて表示できる。アメリカの信号機では腕が下に下がった状態が進行である。インドでは真横に腕が出ている状態を"Die"、上か下に回転している状態を"Do"と呼んでいる。

夜間に列車を運転できるようにするために、信号機にはライトが備えられている。通常は、常に点灯しているオイルランプと、その前で動作する色つきレンズの組み合わせで、外から見た光の色を変えられるようにしている。このため、運転士は昼間の現示と夜間の現示を組み合わせて覚える必要がある。

色や腕の形を信号機の種類や表示できる現示の種類に応じて変えることは一般的に行われている。よく見られる方式は、赤い方形の腕を場内信号機に、黄色い魚尾状の腕を遠方信号機(通過信号機)に用いるものである。三番目の種類の、遠方信号機とは逆側に矢印状の腕を出した信号機もあって、「一旦停止した後制限速度で進行」という現示に用いられることがある(重貨物列車などに対してはしばしば一旦停止も免除される)。

初期には、腕木式信号機はリンク機構により制御されていた。信号扱所てこが設置されており、てこからリンク機構により繋がっている分岐器と信号機を動かしていた。また電動機油圧によって駆動されるものもある。信号機はフェイルセーフに設計されており、駆動する動力が失われたりリンク機構が破損したりすると、重力により腕が水平の位置に移動するようになっている。下動作式の信号機では、この動作を実現するためにはカウンターウェイトが必要であり、上動作式の信号機の方が広まる理由となっていた。

機械的な信号機は色灯式信号機に置き換えられたり、場合によっては路側に信号機を必要としない信号システムに置き換えられたりして、次第に消滅しつつある。

緑の灯火は安全側の現示とすることが一般的であるものの、歴史的にそうであったわけではない。鉄道の信号の歴史のごく初期では、進行に白が、停止に赤が使用されており、当初は緑は注意の現示であった。しかしながら、時隔法の使用が中止された時に緑は用いられなくなった。緑はその後白の進行現示を置き換えるようになった。これは、停止現示であるはずの赤のライトの色つきレンズが破損すると、運転士に白(進行現示)であると誤解させる恐れがあったためである。黄が注意に使用されるようになったのは、コーニング社が緑や赤の色合いを含まない完全な黄のガラスを発明してからのことである。
色灯式信号機イギリス・ネットワーク・レールの2現示式色灯信号機、停止現示になっている

電球の導入によって、日中でも十分視認できる明るさの色のついた光を出すことができるようになり、多くの鉄道事業者で色灯式信号機への移行が行われた。

頭部 (signal head) は信号機の現示を行う部分で、多数の現示を行う信号機では1つの信号機で複数の頭部を持っていることもある。信号システムによっては、単一の頭部に補助灯火を組み合わせることで、基本現示からの意味の変化を持たせることもある。

色灯式信号機には2つの形態がある。よく用いられている形態は複数灯火式のもので、電球とレンズが、交通信号機のようにそれぞれの色別に分離している。通常、ひさしがそれぞれの灯火に取り付けられて、外部から日光が差し込んで現示を誤解させることを防いでいる。また、色つきのフレネルレンズが使われて、光を集中させるようになっている。ただし、反射材は日光を反射させて誤認を招くため普通は使わない。灯火は垂直に並べられるか、三角形に配置され、通常は緑が一番上、赤が一番下に配置される。3現示以上の信号機では、色の組み合わせ表示のために複数の頭部を持っていることもある。

サーチライト式信号機も、あまり一般的ではないが用いられている。


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