鉄人28号_(架空のロボット)
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鉄人28号(てつじんにじゅうはちごう)は、横山光輝の漫画作品『鉄人28号』およびその派生作品に登場する架空のロボット。28号なのはB-29が由来である。
機体解説神戸市で展示されるモニュメント

太平洋戦争末期、大日本帝国が起死回生を目的として乗鞍岳の研究所において極秘裏に建造していたロボット兵器、その28番目の設計機。原作では敷島博士が中心となって完成を見るはずであったが、起動実験の失敗を最後に計画は中止となり、研究班は特攻機開発のため南海の孤島にある秘密研究所へと配属された。しかし研究所の存在がアメリカ軍の知るところとなり島が爆撃を受け、研究員の大半が失われた事によって鉄人計画そのものも忘れられていた。戦後になり、計画に携わったと思われる謎の覆面の男によって乗鞍岳にて完成をみる。その後、コミックスの改訂版やアニメ化に合わせた再編集等で、正太郎の父親で科学者「金田博士」の設定が加わり、鉄人28号は金田博士が中心として戦時中に設計が行なわれ、先の爆撃で計画が頓挫したものの、戦後に戦争とは無関係に「科学者として素晴らしいロボットを完成させたい」という理由で金田博士と敷島博士の協力のもとで誕生した事になった。これによって鉄人の所有権と操縦者としての正当性を正太郎に付加したと考えられる。現在、「原作完全版」では上記の「謎の覆面の男」、「カッパコミックス版(再編集版)」では後記の「金田博士・敷島博士」になっている。

内蔵武器や固定兵装を持たず、特殊鉄鋼による頑健さを武器とし、動力を手足等にも内蔵した補助装置(独立連動装置)により、不測の事態で手や足など各部が破損しても、出力は常に安定して稼働する事ができる。また、体格以上の怪力は連動装置の出力を練り合わせた結果であると推察されている。背部ロケットは初期設計には存在せず、ニコポンスキー率いるS国スパイが鉄人を手に入れた際に独自設計して取り付けた。ロケットの出力は戦艦を動かす程強力だが、たいてい壊れるのはロケットからである事から、鉄人本体ほどの強度や頑健さは無いものと見られる。破損に追記するならば、右腕関節が多く目立つ。手足が破壊され、もぎ取られても稼働には支障は出なかったが、さすがに片手片足では戦闘継続自体は無理だった。ロビーの怪ロボットとの戦いでは熱線が腹部装甲を貫通して内部に直撃、完全に機能を停止したこともあるが、鉄人を流用しようとしたロビーによって修理された末、奪回されている。後のファイア三世戦においては熱線に耐性を見せており、ビッグファイア博士は「特殊鉄鋼を使っているな」と分析している。

大きさは連載当初は身長3メートル程度で描かれていた。しかし、しばしば人間を手のひらに乗せて運んだりするシーンや、連載後半にはビル5?6階相当の立ちシーンが現れるようになる。

鉄人が実現するには複数のアクチュエータと関節をフレキシブルに結合し、複数のアクチュエータが必要に応じて協調し大出力や高速動作を実現する多自由度干渉駆動技術が必要。現実にこの技術は筋電義手の研究開発を行なっている電気通信大学の横井浩史教授が研究している。

なお、後年になるに連れて、鉄人以上の優れた強力なロボットが現れ始め、これらに対して鉄人自体のパワーや性能の優位性だけで対抗する事が叶わなくなっていき、力を受け流す等の戦法や敵ロボットの弱点を推測し攻める等、敷島博士に指示を受けたり、操縦者の技術や知恵を駆使して戦うようになり、より正太郎の操縦者としての判断力や行動力が鉄人に加味されていく事になる。
操縦器

鉄人は小型の操縦器(リモコン)によって操縦される。ある程度の命令の範囲内での独立稼働が可能な自律思考回路も備えてはいるが、格闘戦や災害救助活動時等の精密で多様な判断が必要な場面では目視操縦が基本である。小型で簡素な割に多彩で幅広い操縦方法と、強力な操縦電波と大きな有効範囲、操縦の精密性と正確性は鉄人本体以上に価値があり、後年では鉄人本体より操縦装置の仕組みをほしがったスパイ団も登場する(にせ鉄人事件)。負傷した大塚署長やニコポンスキーでも片手で操縦できる簡易な操縦性は便利な反面、操縦機が盗まれた際は敵が鉄人を簡単に悪用できる危機を生む事になった、不乱拳博士に至っては、ものの数分で奪った鉄人の操縦方法を調べてみせ、レクチャーされた黒覆面団の首領は、すぐに鉄人を使って正太郎に追い打ちをかけた(ブラックオックス)。

つまるところ、この操縦器さえあえば「誰でも強力な鉄人の力を運用できる」ので、鉄人自体が犯罪の中心になる場合が多く、誕生初期は鉄人の強力な力を狙った犯罪者の事件が二重三重で複雑な絡み合いをみせる事になる。これは鉄人自体が犯罪を呼び込んでいる状態で、大塚署長のもと警察の管理下に置かれる結果に繋がったと考えられる。(これらの構図は魔人や精霊付きの魔法のランプ、魔法の壷の争奪戦に近しい)後年は科学技術が進んだ所為で鉄人以上のロボットが作られるようになった為か、鉄人自体が犯罪の元凶になることが激減し、警察が対処できない武装した犯罪者あるいは、ロボット犯罪や特殊な事例(巨大アリ事件・光る物体事件)等に対する切り札として用いられる事が多くなる。実働は金田正太郎への協力要請という形らしく、自衛隊や政府からは警視庁の大塚署長経由で正太郎宛に鉄人出動要請が来る場合が多い。これはなぜか?(連載中、アニメ化にあたって金田博士等の設定が加味された為か)鉄人の所有権が正太郎に移っており、リモコンと鉄人は正太郎邸に置かれ、正太郎が個人で鉄人を運用するようになった為と見られる。ただし原作完全版では明確な設定に至る描写は見られず、他の再編集ないしアニメ版の設定と混同、踏襲されていると思われる。

原作版ではリモコンのダイアルを回して操縦するが、白黒アニメ版では原作ではアンテナにあたる操縦レバーを動かして操縦するように変更された[1]。海外版では、ダイヤルの方を鉄人側に向ける描写がある。

原作の初期には覆面の男製のリモコンと、復員した敷島博士製のリモコンが存在し、敷島製のリモコンの方が優れており誘導電波が強い。この二つを同時に使用すると鉄人本体が混乱して制御不能の状態で暴走する。(この時は本体の受信装置が未完成のまま)覆面の男のリモコンはジャネル・ファイヴが鉄人を盗む際に利用したが、奇岩城にて鉄人自身の手によって破壊されている。その後もモンスター事件(不乱拳博士の銃撃)、ロビーのロボット事件(正太郎により撃ち壊される)、にせ鉄人事件(誘導妨害で狂った鉄人の体当たりで)などで、リモコンは幾度も破壊されており、その都度、敷島博士に修理されている。このリモコンも少しずつ改良されており、アンテナが折りたたみのループアンテナから二本の棒状のアンテナに、スイッチも小型の複合スイッチが、少し大きめのTVの電源と音声調整つまみのような、押すスイッチとボリュームダイヤルチックなものに変わっていき、後年では前後にスイッチが増設されている。
弱点

鉄人の弱点は、まず第一に操縦電波が比較的容易に乱される事である。などの自然災害による電波妨害を受けると普段の10分の1位しか力を発揮できないらしく、自然災害の場合、全く運用できない訳ではないが、太陽黒点異常によるデリンジャー現象など予想外の事態で操縦を受け付けず暴れ出してしまった事例もある。初期には受信装置が未完成で混信しやすい所為か、雷に反応し暴れたりした為にジャネル・ファイヴには「狂人ロボットめ」と悪態を突かれている。後年では敷島博士が改良したのか、雷で暴れる事は無くなったが機能不全(ロケットが止まったり、動きがぎくしゃくした)を起こす程度になっていた。この弱点を的確に突いたブラックオックス電波妨害装置は鉄人にとって天敵であり、逆に鉄人が盗まれ悪事に走ったり暴れたりした際は電波妨害装置で機能不全を起こさせることで、鉄人を取り戻したりしている。

第二の弱点に運用の範囲が、目視操縦できる範囲に制限される事が挙げられる。高度な判断や状況の対応ができない場合、命令の優先順位に従って行動するらしく、大雑把な誘導や破壊行動くらいしかできない(熱源か移動物体を追いかけて破壊)。強力な敵に対しては細かい戦闘指示が必要であり、不測の事態に有効な対処を行えない。その為に操縦者の目視有効範囲外での運用がおのずと制限される。実際、目視範囲外の戦闘ではオックスやVL2号ファイア二世に敵わず遅れを取っており、自律性の高いロボットや犯罪者が逃げ去る際も、状況が目視できない場合は追跡を断念している。カニロボットが登場した沈没船引上げの時は海底カメラで状況を見ながら操縦し勝利している。逆に見えない敵が目視できない状況で空や海底に殺到する時、正太郎や敷島博士は容赦なく鉄人を敵がいるあたりに適当に暴れ込ませる、「暴れ回れ!」戦法に出る事が多いので、見えないからと侮ると痛い目に遭う事もある。

第三の弱点は操縦者がおおよそ無防備なことである。正太郎自身も遠隔操縦ロボット戦において「ロボットより、操縦者を倒す方がはやい」と発言している。これは外部内部問わず、人が操縦するロボット全般の弱点と言えなくもないが、鉄人の物語ではリモコン操縦者は先の目視範囲内に留まっている場合が多いために操縦するロボットの近くにいる事が多く、内部操縦のように装甲の中に守られている訳ではないので(内部操縦の場合は、ロボットの動きや敵の攻撃等の衝撃を緩和する機構も必要になるなど、また別の問題が生じる)、強靭なロボット本体より生身の人間の方が攻撃しやすいためである。

この「ロボットより、操縦者を倒す方がはやい」戦法は手を変え品を変え、敵も味方も問わず用いられるが、砂漠の国王軍に相対した正太郎の鉄人の操縦者被弾擬態作戦など、操縦者の対処次第で戦術的に補う事も可能で、このような駆け引きが作品の面白さでもある。例外として身体能力が強化された超人間ケリーの存在がある。彼は銃弾やロボットの格闘戦に恐れる事無く、近距離から事細かな指示をギルバートに与えて、ロボット戦や操縦経験豊かな正太郎の操縦技術を、自身の能力を利用した操縦で、正太郎を上回る事で鉄人を追い詰めた。
派生作品における鉄人28号
実写ドラマ版

旧日本軍の軍部命令を受けて法師が岳の研究所において敷島博士を中心とする技術陣が数か月の努力の末に建造していたロボット兵器、その28番目の設計機。身長はわずか2メートル程度で胴体は樽型、頭部が太い。両手は動かすことはできない。両耳にアンテナが付いており、フランケンシュタインのごとく両手を上げながらのろく歩行する。目から怪光線を出す。第7話からは胴体が伸び、両腕が大きくなり、頭部も原作に近いデザインに変更、怪光線も胸から出すようになる。第13話で仮面団のロケットを取り付け、飛行可能になる。
太陽の使者 鉄人28号

太陽の使者 鉄人28号』では金田正太郎の父・金田賢太郎博士が開発し、敷島大二郎博士によって完成された巨大ロボット。全高20メートル、重量25.8トン。リモコンで操縦され、直接搭乗するパイロットはいない。動力源は太陽エネルギー転換システム。独立連動システムが搭載され、機体の一部が破壊されても持続的な稼働が可能。必殺技はハンマーパンチ、フライングキック、ローリングアタックなど。普段は敷島博士宅のテニスコートの下にある格納庫に収納されている。

リモコンはアタッシュケースにアンテナが付いた形で、ビジョンコントローラーと呼称される(略称は敷島牧子の命名で「Vコン」)。中には鉄人のアイカメラ(暗部での視界確保用の照明装置「センサーライト」を併設)に接続されたモニターと、2本の操縦桿がある。操縦電波はレインボーウェーブ[2]と呼ばれる特殊な電波で妨害されにくくなっている。
超電動ロボ 鉄人28号FX

超電動ロボ 鉄人28号FX』に登場。


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