『釣り』フランス語: La Peche
英語: Fishing
作者アンニーバレ・カラッチ
製作年1595年以前
種類キャンバス上に油彩
寸法136 cm × 253 cm (54 in × 100 in)
所蔵ルーヴル美術館、パリ
『釣り』(つり、仏: La Peche、英: Fishing)、または『釣りの場面』(つりのばめん、英: Fishing Scene)は、イタリアのバロック絵画の巨匠アンニーバレ・カラッチが1595年以前にキャンバス上に油彩で制作した絵画である。1665年に、カミッロ・パンフィーリ
(英語版)王子がルイ14世に贈った[1]。現在、作品はパリのルーヴル美術館に所蔵されている[1][2][3]。同じく、ルーヴル美術館に所蔵されている『狩猟』は本作と対をなす[1][2][3]。この絵画と対作品の『狩猟』は、1683年の画家シャルル・ルブランの目録に含まれていた。これら2作品は、1695年11月にルイ14世の弟の居室に掛けられていた。間違いなく、この用途のために2作品はそれぞれの場面に合わせた事物の装飾がある、豪華な金鍍金の付いた額縁に入れられていた。それらの額縁は、ルイ14世時代の額縁製造の最良の作例のうちに数えられる。1955年にニスが洗浄された際、本来の金鍍金を覆っていた19世紀の金鍍金が除去されたが、フランスの企業「ル・ブラン」がその大がかりな作業を行った[4]。
作品アンニーバレ・カラッチ『狩猟』 (1595年以前)、1.36 x 2.53メートル
この絵画は対作品の『狩猟』とともに、アンニーバレがファルネーゼ宮殿の装飾をするため1595年にローマに赴く以前のボローニャ時代に制作された。この時期、彼は風景画に非常な興味を抱いており、彼の実験的模索はプッサンの古典的構図を先駆したものとなっている。しかし、これらの作品において、アンニーバレは、ヨーロッパ中で称賛された風景画を制作していたヴェネツィア派のバッサーノ一家
(英語版)の工房の伝統にならい、別の方向性で制作した。すなわち、アンニーバレの関心は田舎の風景にあったのである。口実としてのいかなる宗教的主題もなしに、彼は森と川が真の主題の、狩猟と釣りを取り上げた2点の純粋な風景画を描いた。そのため、画家は貴族階級と一般の人々の生き生きとした生活を表す自然を描くことができた。構図は、視覚的に分割される部分から成り立っている[5]。ファルネーゼ宮殿の装飾画と並び、これら2点の絵画はカラッチの傑作に数えられ、ずっと芸術家たちにより賞賛されてきた。『狩猟』は、エドゥアール・マネ、アンリ・マティス、エドヴァルド・ムンク、ジョルジュ・ルオーに模写された[2][6]。
『狩猟』が大地を象徴する暖色系の色調に彩られているのに対し、本作の『釣り』は水を象徴する青色を基調とした静けさの漂う情景を描き出している。優れた風景画家であったアンニーバレの自然に対する豊かな感受性と確かな表現力を示す魅力的な作品である。美しい水辺の情景と、その中に溶け込み、自然の中に憩う人々の姿が生き生きと描き出されており、柔らかな陽光の下で微妙な変化を見せる陰影描写が画面の隅々にまで豊かな表情を与えている。とりわけ、移ろいやすい空や水面の繊細な表現がすばらしい。この詩情あふれる牧歌的な風景画で、アンニーバレは抒情的な側面を垣間見せている[3]。
脚注^ a b c “La Peche”. ルーヴル美術館公式サイト (フランス語). https://collections.louvre.fr/en/ark:/53355/cl010062397 2024年3月2日閲覧。