金瓶梅
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この項目では、明代の小説について説明しています。その他の用法については「金瓶梅 (曖昧さ回避)」をご覧ください。
金瓶梅(崇禎本の挿絵)
呉月娘、孟玉楼、西門大姐、陳経済が骨牌で遊んでいるところへ、潘金蓮がやってきた場面(第十七回)。.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ポータル 文学

『金瓶梅』(きんぺいばい、.mw-parser-output .pinyin{font-family:system-ui,"Helvetica Neue","Helvetica","Arial","Arial Unicode MS",sans-serif}.mw-parser-output .jyutping{font-family:"Helvetica Neue","Helvetica","Arial","Arial Unicode MS",sans-serif}?音: J?n Ping Mei)は、明代長編小説で、四大奇書の一つ。著者は蘭陵の笑笑生ということになっている。万暦年間(1573年 - 1620年)に成立したと考えられている。タイトルの『金瓶梅』はストーリーの中心となっている3人の女性、潘金蓮、李瓶児、春梅(?春梅)の名前から1文字ずつ取ったものである。

『金瓶梅』は『水滸伝』の 第二十三話から二十七話までの武松エピソードを拡張し、詳細にしたものであり、『水滸伝』からのスピンオフ作品である。『水滸伝』の武松の虎退治のエピソードを入り口とし、そこに登場する武松の兄嫁の潘金蓮は姦通した後殺されずに姦夫西門慶と暮らし始めるという設定となっている。ストーリーが『水滸伝』から分岐した後は、富豪の西門慶に、金蓮も含めて6人の夫人やその他の女性がからみ、邸宅内の生活や欲望が展開してゆく。『水滸伝』同様に北宋末を舞台とするが、綿密かつ巧みに描写されている富裕な商人の風俗や生活には、明代後期の爛熟した社会風俗が反映されている。
あらすじ第四回
西門慶と潘金蓮が武大の隣家で逢引をしている場面。部屋の外で座っている人物が手引きした隣家の老女。(崇禎本の挿絵)

河北清河県薬屋を営む西門慶は大金持ちの趣味人で色事師である。正妻の呉月娘以下4人の夫人がいるにも拘わらず、蒸し餅[注 1] 売りの武大の妻、潘金蓮と密通し、その後武大を殺させて彼女を第5夫人にする。『水滸伝』ではここで西門慶と潘金蓮が武大の弟、武松によって成敗されるが、『金瓶梅』では西門慶は逃げのびる。武松は西門慶ではなく別人を殺めてしまい、武松に同情する人もいたが、西門慶の働きかけもあって孟州に流される。西門慶はさらに隣家に住み未亡人となった李瓶児を第6夫人に迎え、潘金蓮の女中の?春梅をはじめとする女中たち、使用人の妻たち、芸者たちとも関係を持ち情欲の限りをつくす。

潘金蓮は西門慶を相手にすねたり、怒ったり、また西門慶の夫人たちや愛人たちと喧嘩をしたり、嫌がらせをしたり、彼女らの不満をあおったり、さらには別の男と関係したりとさまざまな出来事を引き起こす。そのうちに李瓶児に待望の男児が生まれるが、嫉妬した潘金蓮は彼女や男児に嫌がらせをつづけ、最後には男児をに襲わせ死なせてしまう[注 2]。子を亡くして失意の中李瓶児も病気になる。呉月娘に対し、「子供ができたら大切に育てて、自分の子供のように人の闇討ちにあってはならない」と言い残して亡くなる。

西門慶はもとの薬屋の他にも質屋呉服屋専売などにも手を広げ、ますます大きな財力を手に入れる。財力のみならず街の提刑所(検察と裁判を扱う役所)の長官となり権力も手に入れる。そのように西門慶はすべての成功を手にしたのだが、潘金蓮は、西門慶が不思議な僧侶から貰った媚薬を、それとは知らず限度以上に西門慶に与えてしまい、西門慶は死んでしまう。西門慶の商才と権力に依存していた家業は破綻し、一人また一人と西門家を去っていく。潘金蓮は不祥事が露見して西門家を追い出される。同じ時期に孟州から戻ってきた武松に色目使いをするが、武松は兄の敵としてようやく潘金蓮を成敗する。

やはり西門家を追い出された春梅は名家に嫁いで他の女たちを見返すが、西門慶の娘婿で、かつて西門慶の家に住んでいた陳経済との再会で転落が始まる。陳経済が殺された後、夫も戦死し、春梅の生活は次第に自堕落なものになっていき、最後には使用人と関係している最中に急死する。

一方、西門家には正妻の呉月娘、西門慶との子で西門慶の死後誕生した孝哥、そしてその他義理堅い使用人たちだけが残されていた。ある夜、昔知り合った不思議な僧侶の寺に呉月娘らが滞在した。その時、僧侶の導きにより西門慶以下亡くなった者たちがそれぞれ別の地で生まれ変わって新しく生を受ける場面を目撃する。次の朝、実は「孝哥は西門慶の生まれ変わりであること」をその僧侶に示され[注 3]、その僧侶の勧めで、西門慶の前世の罪から救うために孝哥を仏門に入れる。呉月娘自身は頼りになる番頭に西門を名乗らせて、西門家の事業を継続させ、長生きして人生を全うした。

作品は次のような結びの詩でしめくくられる。.mw-parser-output .templatequote{overflow:hidden;margin:1em 0;padding:0 40px}.mw-parser-output .templatequote .templatequotecite{line-height:1.5em;text-align:left;padding-left:1.6em;margin-top:0}

ひとり書読み嘆きにくれる
めぐる因果を誰が知ろ
豪奢西門世継ぎに困り
狂者経済刃(やいば)にかかる
楼の月影あくまで冴えて[注 4]
瓶の紅梅夜空にしぼむ[注 5]
あわれ金蓮咎めを受けて
浮名千年語り草—小野忍・千田九一訳、『金瓶梅 第10巻』岩波文庫、1974年、p.300

閥閲遺書思惘然 誰知天道有循環
西門豪難存嗣 經濟顛狂定被殲
樓月善良終有壽 瓶梅淫佚早歸泉
可怪金蓮遭惡報 遺臭千年作話傳—『金瓶梅』第一百回 韓愛姐路遇二搗鬼 普靜師幻度孝哥兒[2]
登場人物
西門慶(せいもん けい、さいもん けい)
薬を商う新興商人で道楽者。薬屋から始まって次々に事業を拡張し、権力を手に入れ、また色欲の限りを尽くす。『金瓶梅』の主要なモチーフの一つが因果応報であるが、潘金蓮に夫を薬で殺させ、自らも潘金蓮に与えられた薬で死ぬことになる。また、使用人である来旺の妻(宋恵)を奪ったその因果応報で、死後には自分の妻(孫雪娥)は来旺に奪われる。
潘金蓮(はん きんれん)
仕立て屋の娘。美人で生意気で口が達者。足が小さいことから金蓮と名づけられた[注 6]。女中として出された家の主人との情事がばれて、武大のもとに嫁がされる。その後西門慶と愛し合い第五夫人として嫁ぐ。『水滸伝』の潘金連は単なる無学な女中のように見えるが、『金瓶梅』では音曲に造詣がふかく、楽器の演奏もよくこなす教養のある女性である[注 7] 。李瓶児の子供を殺した報いを受けて、自分の子供も堕胎せざるを得ないはめになる。この子供が授かったのは西門慶の死後の不倫の結果だったからである。
李瓶児(り へいじ)
西門慶の第六夫人。隣の花家の妻であったが西門慶と愛し合う。夫の花子虚が病気で死ぬと、花家の邸宅や財産を持って西門家に嫁いでくる。潘金蓮ともうまくやっていきたいと思うが、潘金蓮にライバル視されているのでうまくいかない。他人の心の機微に疎く、無知で利己的。おとなしく上品な女性[注 8] で潘金蓮とは対照をなしている。子供を殺されて失意のうちに自身も病気で亡くなる。
?春梅(ほう しゅんばい)
潘金蓮にあてがわれた使用人。元々は呉月娘の女中だったが、潘金蓮が西門家にきたときに呉月娘が彼女に譲った。美人であり、彼女も西門慶の愛人の一人である。闘争心が強い。呉月娘の女中であったころは「孫雪娥に包丁の背で殴られていた」というが、後半部分で孫雪娥をいびり返す。潘金蓮とは信頼し合う仲で、潘金蓮は死後に幽霊となって夢の中で春梅に自分の埋葬を頼む。
呉月娘(ご げつじょう)
西門慶の正夫人。奥向きを統率する。まじめな性格で、正夫人らしい威厳をたもち[注 9] 、西門慶も粗略には扱わない[注 10] 。潘金蓮ら我の強い妻たちの為に気苦労が絶えない。まじめに生きた女性らしく、まっとうに人生を終える。
李嬌児(り きょうじ)
西門慶の第二夫人。妓女出身で金に意地汚く、西門家では家計を取り仕切る。西門慶の死後、真っ先に身の回りのものを盗み出して廓に帰り[注 11] 、さっさと他家に嫁いでいく。
孟玉楼(もう ぎょくろう)
西門慶の第三夫人。多額の持参金を持って嫁いできた資産家の寡婦。 常識的でバランスの取れた性格の持ち主で潘金蓮とも仲がよい。他の夫人たちとは違い、常識的な手順で西門家に嫁いできているし、出るときもきちんと呉月娘に見送られて西門家を出ている。批評家の張竹波の解説では、彼女こそ「本物の美人」であり、それを正当に評価しないのが作者の意図した西門慶の人物像であるとする[5] 。単に"いい人"というだけでなく、自分を脅しにきた陳経済を冷静にあしらい、かえって罠にはめようとするなど豪胆な一面ももつ。
孫雪娥(そん せつが)
西門慶の第四夫人。西門慶の娘の使用人出身で料理場を取り仕切る。スープを作るのが上手い。不平や文句が多く、そのことが元で潘金蓮が西門家にきて間もなくすぐに喧嘩になった。西門慶の寵愛を失い、さしたる財産も持っていないことから、他の5夫人より低く扱われている[注 12]
陳経済(ちん けいさい)
西門慶の娘婿で商人。終盤の主要人物。西門家を追い出された潘金蓮を受けだそうとするが、必要な金の準備が間に合わなかった。出世と転落を繰り返す。良家に嫁いだ春梅と関係を結ぶが、街で起こったトラブルが原因で執事に切り殺される。
武松(ぶ しょう)
武大の弟。人食い虎を素手で退治して有名になる。『水滸伝』では西門慶・潘金蓮に復讐を遂げるが、『金瓶梅』では最初の部分で怒りに任せて西門慶と会っていた下級役人を殺して流刑になる。そして後半の部分で、西門家を追い出されていた潘金蓮を妻に迎えると偽って買いうけ、全てを白状させてから切り殺す。ここでも因果応報の構図が表現されている。つまり潘金蓮は夫の武大を殺した報いとして夫の武松に殺される筋書きである。
武大(ぶ だい)
潘金蓮の前の夫。前妻との間の迎児という名の娘が一人いる。まじめなことが取り柄の醜男で、蒸し餅の行商をする。西門慶と潘金蓮の間をとりもった老婆の策略で、西門慶の渡した砒霜(亜ヒ酸)で潘金蓮に毒殺される。
特徴


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