この項目では、地球における金星の太陽面通過について説明しています。その他の天体における金星の太陽面通過については「金星の太陽面通過 (曖昧さ回避)」をご覧ください。
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2004年6月8日の金星の太陽面通過。ドイツのイェーナにて。
地球における金星の太陽面通過(きんせいのたいようめんつうか)は、金星が太陽面を黒い円形のシルエットとして通過していくように見える天文現象である。金星が地球と太陽のちょうど間に入ることで起こる。日面通過や日面経過、太陽面経過とも呼ばれる[1]。記録に残る初の観測は、1639年にエレミア・ホロックスによってなされた。
金星の太陽面通過は非常に稀な現象で、近年では8年、105.5年、8年、121.5年の間隔で発生する。直近では協定世界時2012年6月5日から6日にかけて起こった。次回は2117年12月10日から11日にかけて起こる[1]。
金星の太陽面通過を観察することで、地球と太陽の間の距離(1天文単位)が算出可能となる。1天文単位の距離を得るために、1761年と1769年の太陽面通過では欧州を中心として国を超えた国際的な観測事業が行われ、世界各地に天文学者が派遣された。この観測プロジェクトは科学における初の国際共同プロジェクトとも評される[2]。
太陽面通過の経過
2012年の金星太陽面通過
6月5日15時27分、サンフランシスコにて
6月5日19時6分、リッチモンドヒルにて
6月6日6時11分、ラグーザにて
6月6日7時33分、クウェート市にて
6月6日7時47分、モスクワにて
6月6日8時41分、広州市にて
6月6日12時10分、新潟市にて
金星太陽面通過の動画、半田市内にて
太陽面通過の間、金星は太陽の表面を東から西へ動いていく小さな黒い円盤のように見える。天体が太陽の手前を通過し、それによって太陽の一部が隠されるという点で日食と似ている。しかし、日食において太陽を隠す月の視直径(地球から見た見かけの直径)が約30分とほぼ太陽と等しいのに対し太陽面通過時の金星の視直径は約1分と太陽のおよそ30分の1しかない[3]。金星は直径が月の約4倍もあるにもかかわらず、視直径がこのように小さいのは、太陽面通過時の金星は地球からの距離が約4100万キロメートルであり、月(地球から約38万キロメートル)の100倍以上も遠くにあるためである[4]。金星の太陽面通過の概略図(2012年の通過をモデルにしたもの)
太陽面通過の開始前、金星は太陽の東側から太陽に徐々に接近してくる。しかしこの時には金星は夜側の面を地球に向けているため、見ることはできない。続いて金星が太陽面に接触する。この瞬間を第1接触という[5]。さらに金星が太陽面の内側に入り込み、金星が完全に太陽面上にのった瞬間を第2接触という[5]。