金属
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この項目では、物質について説明しています。青森県弘前市の地名については「金属町」をご覧ください。
ガリウム の結晶。リチウム原子番号が一番小さな金属

金属(きんぞく、: metal)とは、展性塑性(延性)に富み機械工作が可能な、電気およびの良導体であり、金属光沢という特有の光沢を持つ[1]物質の総称である[2]水銀を例外として常温常圧状態では透明ではない固体となり[2]、液化状態でも良導体性と光沢性は維持される[3]

単体で金属の性質を持つ元素を「金属元素」と呼び[4]、金属内部の原子同士は金属結合という陽イオン自由電子を媒介とする金属結晶状態にある[5]。周期表において、ホウ素ケイ素ヒ素テルルアスタチン(これらは半金属と呼ばれる)を結ぶ斜めの線より左に位置する元素が金属元素に当たる。異なる金属同士の混合物である合金、ある種の非金属を含む相でも金属様性質を示すものは金属に含まれる[2]
定義
性質からの定義

その性質から、以下の5つの特徴をすべて備えるものを金属と定義している[6]
常温の時固体である(水銀を除く)。

塑性変形が容易で、展延加工ができる。

不透明で輝くような金属光沢がある。

電気および熱をよく伝導する。

水溶液中でカチオン(陽イオン)となる。

ただし、金属元素以外でも特定環境下では金属状態となる可能性も指摘され、例えば常温で200GPa高圧下では水素は金属様性質を帯びると推測されている。これを金属水素と呼称する[7]
化学結合からの定義

金属を原子化学結合で定義する場合、特有の金属結合で説明される。これは、カチオン化した金属元素が規則正しく並び、その間を自由電子が動き回りながら、これらがクーロン力で結びついている結合を指し、常温下でこのような結合状態にある物質を金属と定義している[6]

原子の配列は、ほとんどの場合、面心立方格子構造 (fcc)、体心立方格子構造 (bcc)、六方最密充填構造 (hcp) のいずれかを取り、元素の種類や同じ元素でも状態によってそれぞれの構造となる。この構造はそれぞれ原子充填率が異なり、金属の塑性変形に影響を与える[6][8]外部の力が加わった際の、イオン結合と金属結合に起こる差異

自由電子理論では、金属とは陽子がつくる格子立体の中を電子が自由に飛び回っている状態 (Drude, 1900)、自由電子の気体の中に鋼体球(陽イオン)が浸かっている状態 (Lorentz, 1923) という表現で、カチオンと電子雲が結合する様子と自由電子のふるまいを説明した[9]。この自由電子の存在が金属の特徴をもたらす。物体に外部の力が加わってズレが生じた際、イオン結合の物質は静電反発が起こり壊れるのに対し、金属は自由電子が取り囲んでいるために結合が安定する[10]。金属光沢は、自由電子がほとんどの可視光をはねかえす、実際は自由電子の集団が様々な波長の光を吸収し再放出するために、全体では反射し光沢を持っている様に見えることによる[11]。導電性には、電荷を持つ電子が自由に動き回りながら電極間に電荷を受け渡すことで寄与している[11]
バンド理論における金属金属、半導体絶縁体バンド構造の模式図

原子中の電子が取りうるエネルギーのレベルは、複数の原子が存在する状態下ではおのおのが重ならない電子軌道を取る。量子力学が要請するこの分裂によって生じる軌道は、金属においてアボガドロ数程度の原子が存在する状況ではエネルギーが低いところから順々に埋められ、最も高いエネルギー(フェルミエネルギー)を持つ電子が球状のフェルミ面を形成し、全体として定まった幅を持つ[12]。これは「バンド構造」と呼ばれる(バンド理論)。このバンドには物質によっては電子が軌道を取りえない断絶したエネルギー領域(バンドギャップ、禁制帯)があり、電子が取りうる最大のエネルギー領域がこのバンドギャップ部分にあると、電子軌道はギャップよりも低く原子核に束縛される[13] バンド領域(価電子帯、バレンスバンド)に詰まってしまい、電流は流れない。しかし金属にはこのバンドギャップが無いため、電子は自由に動くことができ、電流が流れる[14]

半導体は、このバンドギャップが1eV前後であるため、光や熱のエネルギーを加えることで電子の一部をバンドギャップよりもエネルギー位置が高いところにある伝導帯(コンダクションバンド)まで引き上げることができ、結果通電するようになる物質である[14]
性質
融点

自由度を規定するギブスの相律では、物質の状態は以下の式で示される。 F = C − P + 2 {\displaystyle F\,=C-P+2} ただし、

F {\displaystyle F} は、自由度(平衡状態中に取り得る外的因子の数)。

C {\displaystyle C} は、成分の数。

P {\displaystyle P} は、その体系中において存在する相の数。

金属の相律を考える際、わずかな圧力変化が及ぼす影響は無視してかまわないため、変数2が表す示強性のうち圧力を減らした次式を用いる。 F = C − P + 1 {\displaystyle F\,=C-P+1}

純金属の成分 C {\displaystyle C} は1となるため、上式を変形すると F = 2 − P {\displaystyle F\,=2-P}

となり、 P {\displaystyle P} = 2 すなわち固相液相が共存する状態での自由度 F {\displaystyle F} は0になる。これは、純金属が一定の融点を持つことを示す。一方、合金では C {\displaystyle C} は2、 F {\displaystyle F} は1となり、融け始める温度(固相線温度)と完全に融ける温度(液相線温度)が異なるため、固相線温度を融点と置いている。これらの変化は、溶融状態の金属を徐々に冷却しながら凝固させ得られる冷却曲線から分析する[15]

この、一定である純金属の融点(凝固点)は、温度の定点として利用されている。国際温度目盛1990年改訂 (ITS-90) ではスズアルミニウムなどの凝固点が採用されている[15]融点から沸点の間で液体状になった金属、または狭義では室温付近で液体状になる金属を液体金属という[16][17]
硬さ

金属は一般には硬いものとしてイメージされ、ひっかき硬さなどの意味に置いては実際に硬いものが多い。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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