金属探知機
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金属探知機(きんぞくたんちき)とは、電磁誘導を利用して金属の有無を探知する機器である。
概要

今日では地雷原において地中に埋設されている地雷の探知、空港港湾などにおける所持品のチェック(ナイフ銃器の探知)、地理学探査、考古学探査そして探し(トレジャーハンティング)などにおいて広く活用されている。また衣料品や食品加工などの金属を含まないはずの工業製品における異物の探査、建物の鉄骨や鋳鉄管(水道管や下水管など)、電線などの探知にも用いられている。

金属探知機の基本構造は、振動子コイルから成っており、振動子から発生する交流電流がコイルを通過することによって磁場が発生し、金属がそのコイル付近に接近すると電磁誘導の効果から金属に渦電流が発生し、そこでも交流磁場が発生する。このため、磁場の変化を探知することで金属が探知できるのである。
開発の歴史
黎明期の金属探知機

金属探知機はかなり古くから使用されている。19世紀の終わりごろ、多くの科学者や技術者が今まで積み上げてきた理論を応用して金属を探知できる機械を開発しようと試みていた。金属鉱山において金属が探知できる機械があれば作業効率が大幅に高まると期待された。初期の金属探知機は出来が未熟であり、また電気の消費量が大きかったので稼動させられる時間はきわめて短かった。

1881年、スコットランドの物理学者で電話の発明者であるアレクサンダー・グラハム・ベルが金属探知機を使って当時のアメリカ合衆国大統領ジェームズ・ガーフィールドの体内に埋まっている弾丸(彼は銃で肩と胸を撃たれた)を探知しようと試みた。この実験では金属探知機は反応したものの、大統領の横たわるベッドの金属製の縁にも反応を示し弾の探知は失敗に終わり、大統領も銃創からの感染症が原因で銃撃の約2ヶ月後に逝去した(ガーフィールド大統領暗殺事件)。
金属探知機の改良

1930年代に入り金属探知機は大きく発展を遂げる。ジェラルド・フィッシャーは電波を用いた航空機の航路管制装置を開発し、これによってや悪天候時でも航空機を運用できるようになった。ところが、地中に金属等の鉱物が多く含まれていたり、大工場の屋根などに金属が多く使用されている場所では、電波を金属が吸収して、電波の進行方向を変えてしまうため、この管制装置が使用できなかった。この仕組みを逆に応用したジェラルド・フィッシャーは電波の歪みを探知することで金属を探知する新しい金属探知機を開発した。

1937年に彼は金属探知機の特許を申請し受理された。これは世界初の金属探知機に関する特許であった。この金属探知機は直ぐに実用性が評価され、第二次世界大戦中地雷探知機として使用された。この金属探知機は真空管が装備されており、非常に重くまたバッテリーを別に装備する必要があった。

第二次世界大戦後、余剰となった大量の金属探知機が市場に流れ、遺物の探査などに活用された。ここから、現代の"埋蔵金探し"など金属探知機を利用した趣味的な活動が盛んに行われるようになる。
更なる改良

金属探知機の製造メーカーは独自の技術やアイデアを盛り込んでいく。1950年代に創業した米・カリフォルニア州のホワイト・エレクトロニクスは "Oremaster Geiger Counter" という装置を開発した。探知装置の分野でのもう一つのリーディングカンパニーと呼ばれているのが BFO (Beat Frequency Oscillator) の分野で先進的なチャールズ・ギャレットである。

1950?1960年代にトランジスタが開発されたことで金属探知機はより小型軽量となり子供でも扱えるまでになった、また電気回路が改良されたことで小さなバッテリーでも稼動するようになった。これらの革新によって偉大な発見が連発する。太古の金の装飾品、ローマ帝国時代の金庫、宝石で装飾されたダガーナイフ、じりといったあらゆる金属製品が土中から探知・発見された。上記の宝の発見によって一夜にして大金持ちになることができる、言わば本物の"魔法の杖"の需要は鰻登りに急増していった。この需要の大きな高まりに答える形でアメリカイギリスで金属探知メーカーが次々と誕生した。
探知技術

その後技術革新が次々と行われ、ほとんどの中小金属探知機メーカーが淘汰されていった。 Goldak,Metrotech,Igwt,Tec, そして最近では Arado などが趣味用(個人の宝探し用)金属探知機の製造から手を引いた。

近年の金属探知機における最も大きな改良点は、誘導平衡 (Induction Balance) システムの開発であり、これは二つのコイルを装備させることで磁界の向きを向かい合わせてゼロ磁場を作り出す。金属物体をコイルに近づけるとゼロ磁場が崩れて、スピーカーから音がでる。金属に交流電流による刺激を与えるとそれぞれ特有の反応を呈することは昔から科学者の知るところであった。それぞれの金属物質は駆動電流に反応して、誘導電流に特有の位相角を呈する。これによって探知する必要のない金属の位相角を除去することで、特定の金属だけを探知できるようになった。

このように技術の発達とともに発達した金属探知機であるが、一方で探知範囲が旧式のものと比べて狭くなるという弊害も発生した。さらに、探知対象となる金属の周辺にはかなりの確率で、鉄などの対象でない物質も存在している。金が、とりわけ純粋でなく合金状態で存在している際、アルミ箔のそれと極めてよく似ている位相角を呈するため、この区別をするための機器の設定は容易ではない。がしかし、貴重な発見や砂浜に埋まって見失ったダイヤモンド指輪を鉄分を含んだ石ころやアルミホイルであると勘違いして素通りしないためにも、十分に探知機のセットアップを行う必要があった。
パルスインダクション

それまでの誘導平衡型 (Induction Balance) と異なり、パルスインダクション型は高圧の電流をパルスとして地中に発射して金属を探知する。金属の存在しない地面であれば、パルスは一定の速度に従って消失する。金属が存在している場合、パルスが金属を流れるため消失までの時間がわずかに長くなるのでこの差から金属の存在を探知できる。

またこのパルスインダクション型は塩などの鉱物に反応しないため海中での金塊探査などに利用される。また探知範囲(探知できる深さ)が非常に広いという長所もある。一方で、このパルスインダクション型は「金属を探知する」能力に長けている一方で、金属から非鉄(などのレアメタル)と鉄を判別する能力に乏しいという欠点がある。

しかし探査機器の開発を長年行っていたアイルランドのエリック・フォスターは1983年に金属選別型パルスインダクション金属探知機を開発してそれまで多くの技術者が抱いていた概念を根底から覆した。これはそれぞれの金属が持つパルスへの反応や金属物の大きさから目標の金属だけを探知する回路を装備しており、例えば金の指輪を探している際には金の指輪にだけ反応し、銅の硬貨には反応しない。
未来の金属探知機

最新の金属探知機はマイクロチップ技術を応用して高度にコンピューター化されており、探査精度、金属識別、探査速度等を調節すると同時に、別の機会に使用する際に備えて記録しておくことも可能である。


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