金属半導体接合
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金属-半導体接合(:Metal?semiconductor junction)とは、金属半導体が緊密に接触する接合の一種を示す固体物理学の用語である。この接合は最も古い実用的な半導体デバイスで用いられている。金属-半導体接合は、整流作用があるものと無いものに分類される。整流作用がある金属-半導体接合はショットキー障壁を形成しており、ショットキーダイオードで用いられる。整流作用が無い金属-半導体接合はオーミックコンタクトと呼ばれる[1]。(整流作用がある半導体-半導体接合pn接合として知られる。)

オーミックコンタクトは電荷がトランジスタと外部回路との間を容易に移動できるため、通常はオーミックコンタクトが好ましい。しかしショットキーダイオードショットキートランジスタ、金属-半導体電界効果トランジスタ(MESFET)などはショットキー障壁が用いられている。
ショットキー障壁高さゼロバイアス(熱平衡状態)での金属-半導体接合のバンドダイアグラム。n型半導体におけるショットキー障壁高さΦBは、界面での伝導帯端ECとフェルミ準位EFとの差で定義される

金属-半導体接合がオーミックコンタクトとショットキー障壁のどちらを形成するかは、接合のショットキー障壁高さΦBに依存する。ショットキー障壁高さΦBが熱エネルギー kTよりも十分に大きい場合、半導体は金属との界面で空乏層を形成しており、ショットキー障壁としてふるまう。ショットキー障壁高さが小さい場合、半導体に空乏層は形成しておらず、オーミックコンタクトを形成する。

ショットキー障壁高さの定義は、n型半導体とp型半導体とで異なる。n型では伝導帯端とフェルミ準位の差、p型では価電子端とフェルミ準位の差である。接合の近くでの半導体のバンドのアラインメントは一般的に半導体のドーピングレベルに依存しない。よってn型とp型のショットキー障壁高さについて、理想的な場合は次の関係が成り立つ。 Φ B ( n ) + Φ B ( p ) = E g {\displaystyle \Phi _{\rm {B}}^{(n)}+\Phi _{\rm {B}}^{(p)}=E_{\rm {g}}}

ここでEgは半導体のバンドギャップである。

実際のショットキー障壁高さは界面内で一定ではない[2]
ショットキー=モット則とフェルミレベルピニング.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{display:flex;flex-direction:column}.mw-parser-output .tmulti .trow{display:flex;flex-direction:row;clear:left;flex-wrap:wrap;width:100%;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{margin:1px;float:left}.mw-parser-output .tmulti .theader{clear:both;font-weight:bold;text-align:center;align-self:center;background-color:transparent;width:100%}.mw-parser-output .tmulti .thumbcaption{background-color:transparent}.mw-parser-output .tmulti .text-align-left{text-align:left}.mw-parser-output .tmulti .text-align-right{text-align:right}.mw-parser-output .tmulti .text-align-center{text-align:center}@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{width:100%!important;box-sizing:border-box;max-width:none!important;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow{justify-content:center}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{float:none!important;max-width:100%!important;box-sizing:border-box;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow>.thumbcaption{text-align:center}}ショットキー=モット則:接合されると、シリコンの仕事関数Φが銀の仕事関数にマッチするように、シリコンのバンドが曲がる。バンドは接合上でベンディングを保つ。このモデルは、銀はn型シリコンに対して非常に小さいショットキー障壁を持ち、良いオーミックコンタクトを作るとされる。金属誘起ギャップ状態からのフェルミレベルピニング効果を示した図:シリコンのバンドは表面状態により予め曲がっている。これらは接合の直前に再び曲がる(仕事関数をマッチするため)。しかし接合すると、バンドの曲がり方はAg-Si結合の化学的性質に依存して変化する。[4]銀とn型シリコンの接合の形成モデルのバンドダイアグラム[3]。実際はこのショットキー障壁はおよそΦB = 0.8 eVである。「en:Metal-induced gap states」も参照

ショットキー障壁についてのショットキーモット則は、半導体の真空電子親和力(またはイオン化エネルギー)と金属の真空仕事関数の差としてショットキー障壁高さを考える。 Φ B ( n ) ≈ Φ m e t a l − χ s e m i {\displaystyle \Phi _{\rm {B}}^{(n)}\approx \Phi _{\rm {metal}}-\chi _{\rm {semi}}}

このモデルは真空中の2つの物質を接合する思考実験から導出され、半導体-半導体接合でのアンダーソンの法則の考えと同様のものである。多くの半導体で程度の差はあるがショットキー=モット則が成り立つ。[5]

ショットキー=モット則では半導体のバンドベンディング(英語版)の存在を予言するが、ショットキー障壁の高さが正しくないことが実験的にわかっている。フェルミレベルピニングと呼ばれる現象は、バンドギャップ中の状態密度が存在する点をフェルミ準位に固定(ピニング)される。フェルミ準位のピニングにより、ショットキー障壁高さは金属の仕事関数とほとんど無関係になる。[5] Φ B ≈ 1 2 E b a n d g a p {\displaystyle \Phi _{\rm {B}}\approx {\frac {1}{2}}E_{\rm {bandgap}}}

ここでEbandgapは半導体でのバンドギャップのサイズである。

1947年にジョン・バーディーンは、バンドギャップ内のエネルギーを持ち電荷をもつことができる状態が半導体界面に存在すれば、フェルミ準位のピニング現象は自然に生じると考えた。この状態は、金属との化学結合により誘起される(金属誘起ギャップ状態(英語版))か、真空中の表面ですでに存在していた(表面状態(英語版))かのどちらかである。この高密度な表面状態は金属から与えられた多量の電荷を吸収するため、半導体は金属の詳細な性質の影響を受けない。その結果半導体のバンドは、金属からの影響を受けずに、(高密度なために)フェルミ準位にピニングされた表面状態に対する位置へと曲がりを調整する。[3]

フェルミ準位ピニング効果は多くの商業的に重要な半導体 (Si, Ge, GaAs)で強く[5]、半導体デバイスの設計を難しくする。例えば、ほとんどすべての金属はn型ゲルマニウムに対して大きなショットキー障壁を作り、p型ゲルマニウムにはオーミックコンタクトを作る。これは、価電子端が金属のフェルミ準位に強くピニングされているためである。[6]これを解決するには、バンドのピニングを取るために中間絶縁層(ゲルマニウムの場合、窒化ゲルマニウムが用いられる[7])を加える等のプロセスが必要である。
歴史

金属-半導体接合の整流特性は、1874年にフェルディナント・ブラウン硫化鉄半導体に接触した水銀を用いて発見した。[8]

ジャガディッシュ・チャンドラ・ボースは1901年に金属-半導体ダイオードの米国特許を申請して、1904年に特許として認められた。.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ウィキソースにJC Bose patentの原文があります。

グリーンリーフ・ホイッティア・ピカードは1906年にシリコンを用いた点接触整流器の特許を取得した。1907年にジョージ・ワシントン・ピアース(英語版)は、学術雑誌フィジカル・レビューに、ダイオードの整流特性は多くの半導体上に多くの金属をスパッタリングすることによって作られることを示した論文を発表した。


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