量化
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量化(りょうか、: Quantification)とは、言語論理学において、論理式が適用される(または満足される)議論領域の個体の「量」を指定すること。
概要

例えば、算術において、「全ての自然数にはその次の数が存在する」と言った場合、あるいは論理学で、「ある議論領域に特定の属性をもつ事象が少なくとも1つ存在する」と言った場合、いずれも量化を行っている。量化を伴う言語要素を量化子(quantifier)と呼ぶ。量化子を使った表現は量化されており、述語や関数の自由変項を量化子によって束縛することで量化が行われる。量化は自然言語でも形式言語でも行われる。自然言語での量化子の例として、「全ての」、「いくつかの」、「多くの」、「一部の」などがある。形式言語では、量化は(論理)式の構成要素の一部であり、ある式から別の式を生成する。言語の意味論によって、それら構成要素が妥当性の範囲でどう解釈されるかが指定される。量化は変項束縛操作の一例である。

述語論理における2種類の基本的量化として、全称量化存在量化がある。これらの詳細は各項目にあるので、ここでは両者に共通する量化の概念を述べる。

全称量化子は、"A" を逆さにした "∀" で表される。存在量化子は、"E" を裏返しにした "∃" で表される。これらの量化子は、Mostowski と Lindstrom の研究を端緒として一般化されていった。
自然言語における量化

全ての人間の言語は、完全な数体系がない場合でも、量化を利用している(Wiese 2004)。例えば、日本語での例は次の通りである。

「全ての方針に目を通す必要がある」

「川を渡っている人のうち何人かが白い腕章をしている」

「私が話した人々のほとんどが、誰に投票するか決めていなかった」

「待合室の誰もが小沢氏に対する少なくとも1つの不満を持っていた」

「クラスの誰かが、私の出した全ての問題に答えられるはずだ」

「多くの人々は賢明である」

これらを量化を使わずに、複数の文の論理和論理積で表す単純な方法は存在しない。例えば、「Aの方針に目を通す必要がある」かつ「Bの方針に目を通す必要がある」……などと続くことになる。これらの例はまた、自然言語での量化表現の構築が統語的に非常に複雑となる可能性を示唆している。幸いにも、数学的表現における量化は、統語的により直接的である。

自然言語における量化の研究は形式言語の場合に比べて難しい。ひとつには、自然言語の文法構造が論理構造を隠蔽する場合があるためである。さらに、数学的規定は形式言語の量化子の妥当性の範囲を厳密に指定する。自然言語では、妥当性の範囲を指定するには、重要な意味論的問題に対処する必要が生じる。

モンタギュー文法は、自然言語の斬新な形式意味論を与える。その信奉者は、フレーゲラッセルクワインらの伝統的な手法よりも自然言語の自然な形式的再現が可能であると主張している。
数学的記述での量化子の必要性

ここでは、まず数学での量化を非形式的に説明する。次のような文があるとする。1・2 = 1 + 1、かつ 2・2 = 2 + 2、かつ 3・2 = 3 + 3、かつ ……、かつ n・2 = n + n、かつ ……

これはいわば、命題の「無限論理積」である。形式言語の観点からすれば、有限なオブジェクトを生成する統語的規則を期待しているので、これでは問題がある。それとは別に、この例の場合、全ての論理積の対象要素を生成するプロシージャがあることがわかる。しかし、全ての無理数について何かを主張したい場合、無理数は列挙できないので、論理積の全対象要素を並べ立てる方法はない。このような問題に対処する簡潔な定式化として、全称量化がある。全ての自然数 n について、n・2 = n + n である。

同様に、論理和の場合もある。1 は素数である、または 2 は素数である、または 3 は素数である、または …… 、または n は素数である、または ……

この場合は、存在量化によって簡潔に定式化される。ある自然数 n があり、n は素数である。
量化子の入れ子

次のような文を考えてみよう。任意の自然数 n について、s = n × n となる、ある自然数 s がある。

これは明らかに真である。これは単に全ての数に平方が存在することを主張しているに過ぎない。

量化子を意味する部分の順序を変えると、その内容は全く変わってしまう。ある自然数 s について、s = n × n となる、任意の自然数 n がある。

これは明らかに偽である。ある1つの自然数 s が、あらゆる自然数の平方であると主張することになってしまう。

以上の基本的事実は、量化子の入れ子に際して非常に重要となる。量化子の適用順序は極めて重要である。

やや複雑な例として、解析学の重要な概念である一様連続の例を示す。これは、2つの量化子の順序を入れ替えるだけで各点連続を表すようになる。これを示すため、f が R 上の実数値関数であるとする。

A: R 上の f の各点連続
∀ x ∈ R ,   ∀ ε > 0 ⏟ , ∃ δ > 0 , ∀ h ∈ R , 。


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