野望の王国
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野生の王国」とは異なります。

『野望の王国』(やぼうのおうこく)は、原作:雁屋哲、作画:由起賢二による日本漫画。『週刊漫画ゴラク』(日本文芸社)にて1977年から1982年まで連載された。
概要

暴力による日本制覇の野望を抱く二人の青年の姿を描いたバイオレンス・ピカレスクロマン[1]。独特な劇画調の絵柄やエキセントリックな表現は、相原コージの『サルでも描けるまんが教室』の画風の元ネタにもなった[2]。単行本はゴラクコミックスより全28巻愛蔵版全14巻刊行。単行本は長く絶版状態が続いていたが、2002年より同社から「完全版」全9巻として復刊。コンビニコミック「Gコミックス」が2巻まで刊行。電子書籍では「完全版」全27巻が刊行されている。

漫画評論家の呉智英は中世の美術・文化様式「バロック」に準えて過剰な装飾を施す傾向のある漫画、異様な迫力を放つ漫画を「馬鹿<バロック>漫画」と称しているが[3][4]、本作はその5指に入るものと位置付けている[3]。呉は、主人公格の二人が日本制覇の野望を抱きながらなぜか川崎市の征服に固執する点、その野望のために肉親を殺害し、戦時並みに街を焦土と化し数千人近い死傷者を出す点、東大法学部を優秀な成績で卒業するほどの知力を有しながら政治家や官僚にはならず暴力に固執する点など、あまりの効率の悪さが本作の魅力とし[3]、「何人殺しても進まない日本制覇。このペースでは日本制覇するのに300年はかかるだろう」と推測している[4]

原作者の雁屋が手がけた前作『男組』に見られたような、「対決の結果どのような理想社会を実現するか」というようなテーマは本作にはまったく見られない。そのため登場人物のほとんどは権力を手に入れようとする悪人ばかりである。またヤクザや学生組織、軍隊、警察、宗教組織などの入り乱れる大規模な戦闘、凄惨な拷問シーンなど、過激なバイオレンス描写が頻出する[1]

雁屋・由起の原作・作画コンビは今作の後も漫画ゴラク誌上において同様の題材である『獅子たちの荒野』を発表している。
あらすじ

東大法学部政治学を修める橘征五郎と片岡仁。二人は学業で優秀な成績を収め、大学フットボールでも東大チームを優勝に導くなど教授や同窓生たちから注目を浴びていた。だが卒業後の進路を問われ、二人は研究室に残るのでもなく官公庁や一流企業に就職するのでもなく、「自分たちの野望を達成するため」に社会に出ることを宣言し、周囲を?然とさせる。そんな折、二人のもとに征五郎の父、橘征蔵の死の報せが届く。征五郎は神奈川県随一の勢力を誇る暴力団・橘組の組長の息子であった。

征蔵亡き後、苛烈な跡目争いを経て新たな組長となった兄・征二郎の補佐として征五郎と片岡はさまざまな権謀術数を駆使し、暴力で日本を制覇するという野望実現のため暗躍する。だが強力な野心を持つ若手警察官僚・柿崎憲、謎の新興宗教団体を率いる白川天星など、独自の野望と執念を持つ人物たちも登場して互いにぶつかり合い、混迷を極める展開となる。そして征五郎はいつしか巨大な存在の兄・征二郎を倒さなければならない宿命と兄への愛情との矛盾に葛藤し、片岡もまた征二郎・征五郎の妹・文子との愛に苦悩する。

征五郎と片岡が掌握しようとする裏の暴力機構であるヤクザと、柿崎が代表する表の暴力機構である警察との対決、および双方の内部での抗争を通じ、最終的に誰が日本の暴力機構を握り日本を支配するのかが物語の焦点となる。
登場人物
橘家・橘組関係者
橘 征五郎
東京大学法学部政治学科4年で中本研究室在籍、本編の主人公。頭脳だけでなく、体力も抜群であり
関東学生リーグで万年最下位だった東大アメフト部を日本一に導き、さらにはオールアメリカン大学選抜チームとの試合にも勝ち、東大アメフト部を文字通り世界最高にまで押し上げた。母親は神奈川県下最大の暴力団・橘組組長である橘征蔵の2番目の愛人[注釈 1]・芳子。大侠客であった征蔵の方針で、妾腹ながら橘姓に入ったが、少年時代より本妻の子供たちからいじめられた過去がある。幼少期の辛い体験が、征五郎の暴力至上主義の原点となった。同じ妾腹同士であり、少年時代に可愛がってくれた異母兄征二郎を慕っているのだが、これが橘組の実権を握るためには兄征二郎を抹殺しなければならないという内面的な苦悩となる。橘組内若獅子会会長。登場時の髪型は当時の大学生に普通にみられる男性レイヤードカットであったが、後半では完璧なマレットになっている。
片岡 仁
東京大学法学部政治学科4年で中本研究室在籍。法学部首席の座を征五郎と争う、知力体力とも互角の存在。 征五郎とはお互いの野望を知り協力し合うことを誓った盟友。父親は同じく東大法学部を卒業後、国家公務員上級試験をパスして大蔵省に入ったエリートだったが、疑獄事件の罪を着せられた上、拘置所内で自殺に見せかけて殺された。この悲惨な体験が、裏世界の暴力で表の権力を支配するという野望をいだくきっかけとなった。橘征五郎の異母妹である文子とは相思相愛の仲。橘組内若獅子会副会長。
橘 征二郎
29歳、既婚。母親は故橘征蔵の愛人[注釈 2]花森高子。自身が幼い頃から本家の兄弟にいじめられた経験から、同じ境遇の征五郎を可愛がっている。橘征蔵の死後、長兄・征一郎が死亡したことによって橘組組長に就任。県下の国会議員、公安委員長県警本部長をも影響下におく実力者。昔気質の侠客の親分といった風格であり人望もあるが、いったん事を起こすと容赦はしない武闘派でもある。征五郎の野望を内心では見抜いており、兄弟愛と征五郎の野望の達成との間で彼も終始苦しみ続ける。
徳田 栄治(徳田 徳一)
通称トク。橘組内若獅子会頭取。征五郎、片岡が計画した作戦を実行面で指揮する行動隊長。 父親は橘組の鉄砲玉として死亡。その後は親戚中をたらい回しにされたあげく、橘征蔵の下に引き取られた。


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