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この項目では、2002年から2003年頃に初確認された呼吸器系感染症について説明しています。
2012年から2013年頃に初確認された感染症については「中東呼吸器症候群 (MERS)」をご覧ください。
2019年から2020年にかけて初確認された感染症については「新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)」をご覧ください。
重症急性呼吸器症候群
SARSコロナウイルス (SARS coronavirus 1; SARS-CoV-1) はこの感染症の原因病原体である
概要
診療科感染症科 (Infectious disease (medical specialty)
重症急性呼吸器症候群(じゅうしょう きゅうせい こきゅうき しょうこうぐん、英: Severe acute respiratory syndrome; SARS〈サーズ〉[1])は、SARSコロナウイルス (SARS-CoV-1) によって引き起こされるウイルス性の呼吸器疾患である。動物起源の人獣共通感染症と考えられている。ウイルス特定までは、その症状などから、新型肺炎(しんがたはいえん)、非定型肺炎(ひていけいはいえん、英: Atypical Pneumonia)などの呼称が用いられた[2][3]。
2002年11月から2003年7月にかけて、中華人民共和国南部を中心に起きたアウトブレイクでは、広東省や香港を中心に8,096人が感染し、37ヶ国で774人が死亡した(致命率9.6%/WHO発表)[4][5](なお、世界30ヶ国8,422人が感染、916人が死亡〈致命率11%〉とする報告もある[6])。このアウトブレイク終息後は、封じ込め宣言後いくつかの散発例があったが、現在に至るまで、新規感染報告例は無い[7][8]。
現在の症例定義は、「38度以上の高熱及び咳、呼吸困難、息切れのいずれかの症状」「レントゲン検査において肺炎の症状」を呈し、この原因が不明で、ウイルス検査で陽性となった者とされている[9]。また水様性下痢を呈する例も存在する[10]。感染経路としては飛沫感染や接触感染が考えられている[6][8]。
兆候と症状) 、咳嗽、咽頭痛、その他非特異的症状が見られる。全患者に見られるのは38 °C (100 °F)以上の発熱だが、始まるまでには2?7日の潜伏期間が存在する[6]。この病気では粘膜病変を伴わず、咳嗽は乾性咳である[6]。SARSでは呼吸困難や肺炎、またはその両方が見られることがあるが、これは一次的なウイルス性肺炎、また細菌性肺炎双方の可能性が考えられる。発熱に伴う肺病変は間質性肺炎であるが、これにはウイルスが誘導する免疫・サイトカインの関与が考えられている[6][11][12]。喀痰には10億コピー/mLのウイルスが排出されるとされ、この状態では感染性が非常に高い[10]。またウイルス血症も起こしうる[10]。
最重症例では、免疫反応によって、サイトカイン・ストームを引き起こすことがある[13]。
消化管感染も示唆されており、糞便中にウイルスが数多く排出されるほか、10%の症例では水様性下痢が確認される[10]。
診断SARS患者の胸部X線写真(CDC提供)。両肺野に不透明な領域が増え、肺炎を示唆する
2003年のアウトブレイク時、SARS感染は次のような患者で疑われた[9]。
38 °C (100 °F)以上の発熱、その他の症状(咳や呼吸困難)を呈している。そして、
以下の2条件のどちらかを満たす。
10日以内に、SARS診断を受けた人物と濃厚接触している[注釈 1]。
世界保健機関 (WHO) の発表で現在流行が起きているとされている地域に、渡航歴がある(2003年5月10日現在では、中国の一部、香港、シンガポール、カナダ・オンタリオ州ジェラルドトン(英語版))。
現在の症例定義では、渡航歴は問わず、「38度以上の高熱及び咳、呼吸困難、息切れのいずれかの症状」「レントゲン検査において肺炎の症状」を呈し、この原因が不明で、ウイルス検査で陽性となった者とされている[9]。
感染の疑いが濃厚な患者では、胸部X線写真で非定型肺炎や急性呼吸窮迫症候群などの症状、またはコロナウイルス検査での陽性所見が見られる[9][14]。WHOでは、感染の疑いが「濃厚」(英: probable)だが胸部X線写真で特徴的な症状が見られず、またELISAや免疫蛍光抗体法、PCR法などのテストで陽性となった患者について、laboratory confirmed SARS とのカテゴリを設けた[15]。胸部X線写真については、SARS患者でも像がまちまちであるが、一般的にまだらに浸潤するような不自然な像が見られることが多い[16]。