重合体
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「ポリマー」はこの項目へ転送されています。アニメ作品『破裏拳ポリマー』については「破裏拳ポリマー」をご覧ください。
原子間力顕微鏡を使用して、液体媒体下の表面で記録された実際の直鎖状ポリマー鎖の外観。このポリマー鎖の輪郭長(英語版)は約204 nmで、太さは約0.4 nmである[1]IUPACの定義ポリマー(polymer)は、高分子から構成される物質である[2]。高分子(macromolecule)とは、相対分子量が大きい分子のことで、その本質的な構造は、相対分子量の小さい分子に由来する単位の多重反復からなる[3]

重合体(じゅうごうたい、: polymer、ポリマー[4][5])は、多数の反復単位(英語版)からなる高分子(巨大分子)という非常に大きな分子から構成される物質または材料 (en:英語版) である[6]。合成ポリマーも天然ポリマーも、その広範な特性により[7]、日常生活において不可欠かつ遍在的な役割を果たしている[8]。ポリマーは、ポリスチレンのような身近な合成樹脂から、DNAタンパク質のような生物学的な構造や機能の基礎をなす天然の生体ポリマーまで多岐にわたる。ポリマーは、天然や合成を問わず、モノマーと呼ばれる小分子が多数重合して形成される。その結果、小分子化合物に比べて分子量が大きくなり、強靱性弾性粘弾性、(結晶ではなく)非晶質や半結晶構造(英語版)を形成しやすいなど、特徴のある物理的特性がもたらされる。

「ポリマー(polymer)」という言葉は、ギリシャ語の πολ??(polus, 「多くの、たくさんの」という意味)と μ?ρο?(meros, 「部分」という意味)に由来する。この用語は1833年にイェンス・ヤコブ・ベルセリウスによって作られたが[9]その定義 (en:英語版) は現代のIUPACの定義とは異なっていた[10]。ポリマーが共有結合した高分子構造であるというという現代的な概念は、1920年にヘルマン・シュタウディンガーによって提唱され[11]、彼はその後10年間をこの仮説の実験的証拠を見つけることに費やした[12]

ポリマーは、高分子科学(英語版)(高分子化学高分子物理学を含む)、生物物理学材料科学および工学の分野で研究されている。歴史的には、共有化学結合による反復単位の結合から生じる生成物が高分子科学の主な焦点であった。現在では、非共有結合によって形成される超分子ポリマー(英語版)が、新たに重要な分野として注目されている。ラテックスゴムの主成分であるポリイソプレン (en:英語版) は天然ポリマーの例であり、発泡スチロールポリスチレンは合成ポリマーの例である。生物学的には、本質的にすべての生体高分子、すなわちタンパク質(ポリアミド)、核酸ポリヌクレオチド)、および多糖は、純粋な高分子であるか、または大部分が高分子成分から構成されている。ポリマー分子の模式図
一般的な例「ポリマーの種類(英語版)」も参照分子シミュレーションによるスチレン-ブタジエン鎖の構造

ポリマーには、天然に存在するものと、合成または人工的に作られたものの2種類がある。
天然ポリマー

シェラック琥珀羊毛天然ゴムなどの天然高分子素材は、何世紀にもわたって使用されてきた。他にも、木材や紙の主成分であるセルロースなど、さまざまな天然ポリマーが存在する。
宇宙ポリマー

ヘモグリシン(英語版)(以前はヘモリチンと呼ばれていた)は宇宙ポリマー(space polymer)で、隕石から発見された最初のアミノ酸ポリマーである[13][14][15]
合成ポリマー

合成ポリマーの一覧(英語版)を世界の需要が高い順におおまかに並べると、ポリエチレンポリプロピレンポリスチレンポリ塩化ビニル合成ゴムフェノール-ホルムアルデヒド樹脂(またはベークライト)、ネオプレンナイロンポリアクリロニトリルPVBシリコーン、その他多数となる。これらのポリマーは毎年3億3,000万トン以上製造されている(2015年)[16]

もっとも一般的には、プラスチックの原料となるポリマーの主鎖は、主に炭素原子が連続的に連結して構成している。単純な例としては、ポリエチレンがあり、その反復単位(モノマー)はエチレンである。他にも多くの構造が存在し、たとえばケイ素のような元素はシリコーンのような身近な材料を形成し、シリーパティーや防水性の配管シーリング材などで使用されている。また、酸素は、ポリエチレングリコール多糖類グリコシド結合)、DNAホスホジエステル結合)などのポリマー骨格にも存在する。
合成詳細は「重合反応」を参照重合反応の分類

重合とは、モノマーと呼ばれる小分子を多数結合させ、共有結合でつながった鎖やネットワークを形成するプロセスである。重合のプロセスの際、各々のモノマーから一部の化学基が失われることがある。たとえば、PETポリエステルの重合時にこれが見られる。そのモノマーはテレフタル酸(HOOC - C6H4 - COOH)とエチレングリコール(HO - CH2 - CH2 - OH)であるが、反復単位は - OC - C6H4 - COO - CH2 - CH2 - O - であり、2つの水分子を失った2つのモノマーの組み合わせに相当する。ポリマーに組み込まれる各モノマーの個別の断片は反復単位(英語版)またはモノマー残基と呼ばれている。

合成法は一般に、段階成長重合(step-growth polymerization、逐次重合とも)と連鎖重合(chain polymerization)の2つに分けられる[17]。両者の本質的な違いは、連鎖重合では、ポリスチレンのようにモノマーが一度に1つずつしか鎖に付加されないのに対し[18]、段階成長重合では、ポリエステルのようにモノマーの連鎖どうしが直接結合できることである[19]。段階成長重合は、それぞれの反応段階ごとに低モル質量の副生成物が生成する縮合重合重付加に分けられる。連鎖重合の例: スチレンのラジカル重合。R.は開始ラジカル、P.はラジカル再結合によって形成された鎖を終結させる別のポリマー鎖ラジカルである。

プラズマ重合法(英語版)のような新しい方法は、どちらのカテゴリーにも属しない。合成重合反応は、触媒の有無にかかわらず行うことができる。生体ポリマー、特にタンパク質の実験室合成は、熱心に研究されている分野である。
生物学的合成詳細は「生体高分子」を参照生体ポリマーであるDNA二重らせんの一部の微細構造

生体ポリマーには、多糖類ポリペプチドポリヌクレオチドという3つの主要な種類がある。生細胞内でこれらは、DNAポリメラーゼが触媒するDNAの形成など、酵素媒介プロセスにより合成されることがある。タンパク質の合成には、DNAからRNAに遺伝情報を転写し、その情報を翻訳してアミノ酸から特定のタンパク質を合成するという、複数の酵素媒介プロセスが含まれる。このタンパク質は適切な構造と機能を提供するため、翻訳後さらに修飾されることがある。他にも、ゴム、スベリンメラニンリグニンなどの生体ポリマーがある。
天然ポリマー改修

木綿デンプン、ゴムなどの天然ポリマーは、ポリエチレンやアクリル樹脂などの合成ポリマーが市場に出回るまで、長年に渡って親しまれてきた素材であった。商業的には、重要なポリマーの多くが天然ポリマーの化学的修飾によって合成されている。代表的な例としては、硝酸セルロースの反応によるニトロセルロースの生成、天然ゴムを硫黄の存在下で加熱することによる加硫ゴムの形成がある。ポリマーを改質する方法には、酸化架橋、末端キャッピング(英語版)などがある。
構造

高分子材料の構造は、サブナノメートル長(1 nm未満)から巨視的なものまで、さまざまな長さスケールで表すことができる。その構造は実際には階層をなし、それぞれの階層が次の構造の土台となる[20]。ポリマーの構造を表す基点は、構成モノマーの同一性である。次に、微細構造はポリマー内のこれらのモノマーの配列を、基本的な単鎖のスケールで表現する。微細構造はまた、たとえば結晶化(英語版)、ガラス転移、ミクロ相分離(英語版)などによって、ポリマーがさまざまな配置で相構造を形成する可能性も決定する[21]。これらの特徴は、ポリマーの物理的および化学的な特性を決定する上で大きな役割を果たす。
モノマーと反復単位

ポリマーを構成する反復単位(モノマー残基、別名「マー(mer)」)の同一性は、そのポリマーの最初で、最も重要な特性である。ポリマーの命名法は、一般に、ポリマーを構成するモノマー残基の種類に基づいている。1種類の反復単位のみを含むポリマーは同種重合体(ホモポリマー、homopolymer)と呼ばれ、2種類以上の反復単位を含むポリマーは共重合体(コポリマー、copolymer)と呼ばれる[22]。三元(共)重合体(ターポリマー、terpolymer)は、3種類の反復単位を含む共重合体である[23]

ポリスチレンはスチレン系の反復単位のみから構成され、ホモポリマーに分類される。ポリエチレンテレフタレートは、2つの異なるモノマー(エチレングリコールとテレフタル酸)から合成されるが、反復単位は1種類しか形成しないため、通常はホモポリマーとみなされる。エチレン酢酸ビニルは、2種類以上の反復単位を含んでおり、コポリマーである。生物学的ポリマーの中には、構造的に関連するさまざまな異なるモノマー残基から構成されているものがある。たとえば、DNAのようなポリヌクレオチドは、4種類のヌクレオチドサブユニットから構成されている。

ホモポリマーとコポリマーの例

ホモポリマーのポリスチレンホモポリマーのポリジメチルシロキサン(シリコーン)。主鎖はケイ素原子と酸素原子から構成される。ホモポリマーのポリエチレンテレフタレートは、反復単位は1種類である。共重合体のスチレン-ブタジエンゴム:スチレンと1,3-ブタジエンに基づく反復単位が2つ形成され、高分子内では任意の順序で交互に繰り返されるため、ポリマーはランダム共重合体となる。

イオン化可能なサブユニット(たとえば、ペンダントカルボキシル基)を含むポリマーは、イオン化可能なユニットの割合が大きい場合は高分子電解質(英語版)と呼ばれ、小さい場合はアイオノマーと呼ばれる。
微細構造詳細は「微細構造 (物質)(英語版)」を参照

ポリマーの微細構造(立体配置、またはコンフィギュレーションと呼ばれることもある)は、鎖の骨格に沿ったモノマー残基の物理的配置に関係している[24]。これらはポリマー構造を構成する要素であり、構造が変化するためには共有結合を切断する必要がある。モノマーや反応条件に応じて、さまざまなポリマー構造が作り出される。分岐していない鎖を1本だけ含む直鎖状高分子から構成されるポリマーもある。非分岐ポリエチレンの場合、この鎖は長鎖 n-アルカンである。主鎖と側鎖とを持つ分岐高分子もあり、ポリエチレンの場合、側鎖はアルキル基である。特に非分岐高分子では、固体状態では半結晶となる場合があり、下の図では結晶鎖の部分が赤色で強調表示されている。

分岐ポリマーおよび非分岐ポリマーは通常熱可塑性プラスチックであるが、多くのエラストマーは「主鎖」の間に広い網目状の架橋を持つ。


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