酸化還元酵素(さんかかんげんこうそ、oxidoreductase)とはEC第1群に分類される酵素で、酸化還元反応を触媒する酵素である。オキシドレダクターゼとも呼ばれる[1]。生体内では多数の酸化還元酵素が知られており、約560種類ともいわれる[2]。 酸化還元酵素は酸化還元反応により物質代謝を触媒するだけでなく、酸化反応により発生するエネルギー産生(ATP産生)にも関与する。酸化還元酵素はデヒドロゲナーゼ、レダクターゼ、オキシダーゼ、オキシゲナーゼ、ペルオキシダーゼ、トランスヒドロゲナーゼ
概要
生体内での酸化還元反応は
水素原子(ヒドリド)の移動
電子の移動
酸素原子の付加
のいずれかの形式をとる。
水素原子の移動を伴う反応(脱水素反応)を触媒する酵素の多くは脱水素酵素(デヒドロゲナーゼ)と呼ばれる。これらの酵素の水素元はNADなど水素供与体に由来するが、一部細菌などがもつヒドロゲナーゼ(hydrogenase)には直接水素分子を授受する物もある。
電子移動を触媒する酵素の代表は電子伝達系を構成するシトクロムである。
そして分子状酸素を基質とする酸化還元酵素は酸化酵素(オキシダーゼ)と呼ばれる。オキシダーゼは取り込まれる酸素分子の配分形式の違いにより
ジオキシゲナーゼ - 二つの酸素原子が別の位置に挿入される
モノオキシゲナーゼ(ヒドロキシラーゼ hydroxylaseとも呼ぶ) - 一方の酸素原子が挿入され、他方は水H2Oとなる
ペルオキシダーゼ - ペルオキシ基 -O-O- が挿入される
等に分類される。
多くの酸化還元酵素は活性中心に金属元素が存在し、鉄(鉄ポルフィリン)、銅が代表的な活性中心金属である。
酸化還元酵素に関与する酸化・還元受容体は限られており、NAD,NADPなどの補酵素、シトクロム類、酸素、ジスルフィド、キノン化合物などが知られており、EC番号のEC1群は酸化・還元受容体の種類でも区分されている。
EC.1.-(酸化還元酵素)
EC.1.1.-(CH-OH結合を電子供与体とする)
EC.1.1.1.-(NADまたはNADPが電子受容体)
⇒EC.1.1.1.1 アルコールデヒドロゲナーゼ
⇒EC.1.1.1.2 アルコールデヒドロゲナーゼ (NADP+)
⇒EC.1.1.1.3 ホモセリンデヒドロゲナーゼ
⇒EC.1.1.1.4 (R,R)-ブタンジオールデヒドロゲナーゼ
EC.1.1.1.5 欠番 → EC 1.1.1.303, EC 1.1.1.304
⇒EC.1.1.1.6 グリセロールデヒドロゲナーゼ
⇒EC.1.1.1.7 プロパンジオールリン酸デヒドロゲナーゼ
⇒EC.1.1.1.8 グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ (NAD+)
⇒EC.1.1.1.9 D-キシルロースレダクターゼ
⇒EC.1.1.1.10 L-キシルロースレダクターゼ
⇒EC.1.1.1.11 D-アラビニトール-4-デヒドロゲナーゼ
⇒EC.1.1.1.12 L-アラビニトール-4-デヒドロゲナーゼ
⇒EC.1.1.1.13 L-アラビニトール-2-デヒドロゲナーゼ
⇒EC.1.1.1.14 L-イジトール-2-デヒドロゲナーゼ
⇒EC.1.1.1.15 D-イジトール-2-デヒドロゲナーゼ
⇒EC.1.1.1.16 ガラクチトール-2-デヒドロゲナーゼ
⇒EC.1.1.1.17 マンニトール-1-リン酸-5-デヒドロゲナーゼ
⇒EC.1.1.1.18 イノシトール-2-デヒドロゲナーゼ
⇒EC.1.1.1.19 グルクロン酸レダクターゼ