酸化クロム(さんかクロム、英: chromium oxide)はクロムの酸化物。クロムの酸化数に応じて酸化クロム(II)、酸化クロム(III)、酸化クロム(IV)
、酸化クロム(VI)が存在する。また、混合酸化物(mixed oxide、MOX)、過酸化物も知られている。クロムの酸化還元電位は Cr(III) が最も安定であり、酸化物も酸化クロム(III)が最も安定である。酸化クロム(IV)、酸化クロム(VI)は酸化剤として用いられる。 組成式 CrO。黒色の粉末で、水に不溶。 組成式 Cr2O3。緑色の固体で、水に不溶。 組成式 CrO2。黒色の粉末で、水に不溶。 三酸化クロム(さんさんかクロム)、無水クロム酸(むすいクロムさん)とも呼ばれる。組成式 CrO3。赤色の結晶。
酸化クロム(II)
性質
化学的には不安定で、加熱により Cr と Cr2O3 に不均化する。
空気中で酸化されて Cr2O3 となる。
希硫酸、希硝酸には溶けない。
塩酸に溶け、水素を発生させて青色溶液を生ずる。
製法
クロムアマルガムを空気あるいは硝酸と作用させて酸化させる。
赤熱した酸化クロム(III) に水素あるいはエタノールを通じる。
塩化クロム(II) CrCl2 と炭酸ナトリウム Na2CO3 を混合し、加熱する。
クロムカルボニルを熱分解する。
酸化クロム(III)詳細は「酸化クロム(III)」を参照酸化クロム(III) の結晶
物理的性質
コランダム (α-Al2O3) 型構造、六方晶系
融点 2435 °C、沸点 4000 °C
比重 5.21 (20 °C)
化学的性質
きわめて安定。
酸、アルカリに不溶。
臭素酸アルカリ水溶液と熱することで溶解する。
利用
耐熱合金の表面に生成し、緻密な保護皮膜となる。
顔料として黒板や絵具(オキサイド・オブ・クロミウム)などに用いられる。
研磨剤
有機反応の触媒
単結晶は半導体になる。
酸化クロム(IV)
物理的性質
正方晶系、ルチル型構造。
強磁性を示す。
利用
磁気テープ用磁性体 (現在は使われていない。)
酸化クロム(VI)詳細は「酸化クロム(VI)」を参照酸化クロム(VI) の結晶
物理的性質
斜方晶系、針状結晶。
融点 196 °C(分解)
比重 2.629 (14 °C)
化学的性質
水に溶けてクロム酸と二クロム酸になる。
潮解性が強い。
250 °Cで分解して酸素 O2 を発生し、Cr2O3 となる。
利用
有機反応の酸化剤。詳細は クロム酸酸化 を参照。
ガラスの洗浄。
毒性
きわめて毒性が強い。半数致死用量 (LD50) は80 mg/kg(ラット、経口)、127 mg/kg(マウス、経口)。