酢酸エチル
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酢酸エチル


IUPAC名

酢酸エチル
識別情報
CAS登録番号141-78-6
E番号E1504 (追加化合物)
KEGGD02319
RTECS番号AH5425000
SMILES

CCOC(C)=O

特性
化学式C4H8O2
モル質量88.105 g/mol
示性式CH3COOCH2CH3
外観無色の液体
匂い果実臭
密度0.897 g/cm3,液体
融点

?83.6 ℃ (189.55 K)
沸点

77.1 ℃ (350.25 K)
への溶解度8.3 g/100 mL (20℃)
エタノール
アセトン
ジエチルエーテル
ベンゼンへの溶解度混和性
屈折率 (nD)1.3720
粘度0.426 cP、 25℃
構造
双極子モーメント1.78 D
危険性
EU分類 F Xi
NFPA 704410
RフレーズR11, R36, R66, R67
SフレーズS16, S26, S33
引火点?4 °C
関連する物質
関連するエステル酢酸メチル,
酢酸プロピル,
酢酸ブチル
関連物質酢酸
エタノール
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

酢酸エチル(さくさんエチル、: ethyl acetate)とは、有機化合物で、酢酸エタノールが脱水縮合したエステル引火点 ?4 ℃の、パイナップルに似た果実臭のする無色で揮発性液体[1]、有機溶媒として用いられる。

極性が高く、最大で 3% 重量ほど酢酸エチルに水が溶解する。逆に水に対しては 10体積%(25℃)ほど溶解し温度が低いほど増大する。また、エタノールエーテルベンゼンヘキサンなどのほとんどの有機溶媒と任意の割合で混ざり合う。
反応性

湿気(水分)を含むものは徐々に加水分解し、酸が存在すると加速する。アルカリ水溶液中ではけん化により加水分解する。酸触媒の場合は平衡反応であるため可逆であるが、アルカリ触媒の場合は加水分解のみが進行する。 CH 3 COOCH 2 CH 3 + OH − ⟶ CH 3 COO − + CH 3 CH 2 OH {\displaystyle {\ce {CH3COOCH2CH3 + OH^- -> CH_3COO^- + CH3CH2OH}}}
合成法

工業的な合成法としては以下の3つの方法が挙げられる。
Fisherエステル化
酢酸エチルは低沸点であることから、硫酸を酸触媒として酢酸エタノール(=エチルアルコール)とを加熱して脱水縮合させ、生成する酢酸エチルを連続的に蒸留で取り出すことで効率よく合成することができる。 C H 3 C O O H + C H 3 C H 2 O H c a t . H +   ⟵ ⟶   C H 3 C O O C H 2 C H 3 + H 2 O {\displaystyle {\rm {CH_{3}COOH+CH_{3}CH_{2}OH{\begin{matrix}{\rm {cat.H^{+}}}\\\ _{\longleftarrow }^{\longrightarrow }\\\ \end{matrix}}CH_{3}COOCH_{2}CH_{3}+H_{2}O}}}
ティシチェンコ反応
アセトアルデヒドを塩基触媒により酢酸エチルに転換する。形式的には、アセトアルデヒドが不均化し、エタノールと酢酸として反応しているように見える。本法はエタノールに対して課税する国では原料コストの高いエタノールを利用せずにすむ為、日本では主流のプロセスである。しかしながら世界的な主流プロセスはエタノールを利用した方法であり、日本でもダイセルが実用化している。
エチレンと酢酸からの直接合成
最近、昭和電工により、シリカ担持ヘテロポリ酸触媒によるエチレンと酢酸からの合成法が開発された。本プロセスでは、原料価格に応じて、エチレンの代わりにエタノールを用いることもできる。56回日本化学会化学技術賞を受賞した。

酢酸エチルの2008年度日本国内生産量は 186,682 t、工業消費量は 2,377 t である[2]

無水酢酸塩化アセチルケテンなどとエタノールが反応しても酢酸エチルを与えるが、合成法としての価値はない(下図)。


利用

酢酸エチルはシンナーラッカーなど塗料溶剤として利用される。マニキュア除光液として、アセトンなどと並び多用されている。またパイナップルバナナ等天然の果実油の中にも広く含まれる果実臭成分の一つであり、エッセンスなど食品添加物の成分としても利用される。日本酒に香気成分として含まれるが、セメダイン臭として否定的なとらえ方をされる場合がある。またワインに含まれる酢酸エチルは味を落とす原因とも言われている。

有機化学実験では、アミンヒドリド還元試薬など広く求核試剤(試薬)と反応したりエステル交換反応することがあるので、反応溶媒としての利用は限定的である。したがって実験室での利用は抽出溶媒あるいはクロマトグラフィー法の展開溶媒としての利用が主である。クロマトグラフィーでは、低極性溶媒であるヘキサンとの混合溶媒が最も頻繁に用いられる。

また、昆虫の標本を作製する際には、殺虫するときや軟化するときに虫体が硬くなりにくく防腐効果のある殺虫剤として、必需品とされている。ただし、色彩が鮮やかな甲虫や甲虫以外の虫に使用すると変色などを招くことがあるため、現在では亜硫酸ガスや冷凍庫などを使う殺虫法も併用されることが多い。
主な製造者と輸入者.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}


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