都市構造(としこうぞう、英語: urban structure)とは、都市の空間的な構造のことである[1]。都市地理学では、都市内部の土地利用や都市機能に着目する[1]。 都市構造を論じるうえで、同心円モデル、扇形モデル、多核心モデルが重要な古典的モデルとして扱われる[2]。これらは第二次世界大戦前のアメリカ合衆国の都市をモデルにして考案された[2]。これらのモデルはシカゴ学派により考案され、社会学の方法論を援用して、都市内部の居住分化の解明を行った[3]。 同心円モデルは、1925年にアーネスト・バージェスが発表したモデルである[1]。このモデルでは、都心から郊外に向けて土地利用が変化し、内側から中心業務地区、遷移地区、低級住宅地区、中級住宅地区、高級住宅地区の順に構成される[1]。 扇形モデルは、1939年にホーマー・ホイトが発表したモデルである[4]。このモデルでは、高級住宅地区などが特定のセクターに集中して分布することが反映されている[4]。 多核心モデルは、1945年にチョーンシー・ハリスおよびエドワード・アルマンが発表したモデルである[5]。このモデルでは、中心業務地区の他にも都市の核が設定されており[5]、副都心や郊外核などが挙げられる[6]。多核心モデルは、アメリカ合衆国におけるモータリゼーションに伴う都市圏の拡大を反映した、同心円モデルや扇形モデルよりも現実の都市に近いモデルとなった[7]。 一方、現代の大都市圏は、交通環境の整備のほか[8]、情報通信技術の普及、政治・経済的な変化などを受けて、古典的なモデルとは異なる都市構造をなしている[9]。 モーリス・イェーツ(Maurice Yeates)は、郊外化が進行した1970年代の北アメリカの都市の現状を反映した[10]、同心円、扇形、多核心の3要素を複合させた土地利用モデルを提唱した[11]。このモデルでは、都心から中心業務地区、インナーシティ、インナーサバーブ
都市構造モデル
同心円モデル詳細は「同心円モデル」を参照
扇形モデル詳細は「扇形モデル」を参照
多核心モデル詳細は「多核心モデル」を参照
現代の都市構造モデル
ジェームス・E・バンス・ジュニア
(英語版)は、多圏モデル(Urban Realms Model)を提唱した[15]。多圏モデルにおいて大都市圏は、複数の自立的な生活圏の結合により構成される[15]。各圏域は自立的であり日常生活の多くは圏域内で完結するが、通勤・通学・買物等での圏域間移動もみられ、圏域同士は弱い結合をなしている[15]。このモデルは、大都市圏郊外における雇用や商業の機能拡大に伴い都心に必ずしも依存しない自立的な郊外が形成されたことを反映している[16]。ミッシェル・ホワイト(Michelle White)は、21世紀の大都市圏を想定した都市構造モデルを提唱した[14]。このモデルは経済機能の郊外化、脱工業化、家族規模の縮小、政策の影響などが反映されている[14]。
パース・F・ルイス(英語版)は、銀河系メトロポリス(Galactic Metropolis)を提唱した[17]。分散的都市化が進行した郊外は、地域内で完結した閉鎖的な空間となり、都市機能が幹線道路沿いに非連続的に立地する様子が銀河系に例えられた[18]。