邦楽器
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打楽器】大型の祭太鼓(祭事で用いる大型の鋲打太鼓)[1]の演奏/画像は志多らの公演。弦楽器平安貴族の男性が琵琶を奏で、女性が聴き惚れている。/男性は『源氏物語』の主人公の一人である匂宮、女性は宇治の中君。絵は『源氏物語絵巻宿木の一場面。平安時代後期頃の作。管楽器】名笛を奏でる朱雀門の鬼に挑む雅楽の名手・源博雅(手前)/月岡芳年『月百姿 朱雀門の月 博雅三位』/浮世絵揃物『月百姿』の第19図。1886年(明治19年)刊行。縦大判錦絵

和楽器(わがっき)とは、日本伝統的に使われてきた楽器[2]和太鼓和琴尺八三味線など、先史時代に原形があるものから近世生まれのものまで、種類は多種多様である。

」は「日本」を意味するが、「邦(くに、)」と「楽器」を合わせた邦楽器[3](ほうがっき)も結果的同義。日本の伝統楽器[4]などという表現もある。英語では traditional Japanese musical instruments [5] あるいは Japanese traditional instruments [6]" と表現する。
概要

大陸文化の影響を受ける以前から伝承される日本固有の楽器としては、和琴が挙げられ、神楽笛(かぐらぶえ)や笏拍子(しゃくびょうし)も日本固有の物と見なされる。その他の和楽器は殆どが、大陸から渡来した楽器を基としているが、日本の文化の中でその形を変え、独自に進化を遂げていった。「雅楽琵琶」 (楽琵琶) の様に、大陸では既に失われてしまった楽器もある。

アイヌ音楽の楽器であるムックリトンコリ沖縄音楽の楽器三線、南九州地方のゴッタンもこの項の解説に含む。
特徴
音色の追求竹紙を貼り付けるために作られた笛の響穴。竹紙の振動、乾湿具合で音色が変わる。

和楽器では、極めて微細な音色の変化を尊重、追求する。そのため、特に室内系和楽器の音色の洗練度は非常に高い。例えば三味線ではひとつで大きく音色が変化し、中でも地歌三味線では、一人の奏者が何個もの駒を持ち、その日の天候、楽器のコンディション、曲の雰囲気などに合わせて使い分ける。駒の重さといった細かい差異も追求されている。

また西洋楽器が操作機能や音域拡大、分担化の追求により分化、発展したのに比べ、和楽器は音色の追求により分化・発展していった。三味線音楽の種目ごとに楽器各部や () に僅かな差異があるのがその好例である。胡弓も、ヴァイオリンの弓が機能的に改良されたのとは違って、音色の追求により改良され現在の形になった。弦楽器は現在でも絹糸の弦にこだわるが(箏は経済的な事情でテトロンが多くなった)、これも絹糸でしか出せない音色を尊重するためである。
雑音の美

和楽器では雑音(噪音) の美が認められ、その要素が取り入れられていることが大きな特徴である。近代以降の西洋音楽の楽器(洋楽器)は、倍音以外を出そうとすることはなく、また近隣の中国や朝鮮の音楽と比べても、和楽器には噪音(倍音以外の音)を多く含む音を出す楽器の比率が高い。三味線や楽琵琶を除く各種琵琶の雑音付加機構「さわり」はその代表例である。また通常は噪音を出さない楽器にも噪音を出すための奏法がある。これには、楽器が大陸から日本に伝来し定着する過程で、そのような変化や工夫が加わっていったためと推測される。
小さい音量

和楽器は、西洋音楽のモダンな同属楽器と比較すると音量が小さいものが多い。古典派以降の西洋音楽では、建築学の進化とともに建設された大規模なコンサートホールのような広い空間で演奏するためにより大音量を要求され、奏法や楽器自体に大きな音が出るように改良され(ヴァイオリンフルートなど)、それに向かなかった楽器(ヴィオール属リュートリコーダーなど)が淘汰されたのに対し、日本では比較的小規模な空間で演奏することが多く、楽器の多くが音量による淘汰を免れたためである。そのため和楽器では、耳をこらして微細な音色の変化を賞玩するために音色が洗練・追求された。ただし音量の増大を目的とした改良も行なわれている(山田検校の箏改良など)。

一方、祭礼祭囃子神楽など)のために屋外で演奏される分野の楽器は、西洋と比較しても音量が大きい。和太鼓篳篥横笛法螺がこれに相当する。また、浄瑠璃長唄三味線歌舞伎文楽日本舞踊といった伝統芸能と共に用いられてきたため、広い劇場でもよく聞こえるよう、音量を増す方向に進化した。


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