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概略説明図避雷針草葺き屋根の稜線に避雷用の仕掛けが施してある。木造の教会。避雷針とそこから地面まで延びるケーブルが見える。東京タワーの避雷針プロコプ・ディヴィシュ(en:Vaclav Prokop Divi?
避雷針(ひらいしん、英: Lightning rod)は建築物を雷・落雷から保護する仕組みのひとつ。
地面と空中との電位差を緩和し落雷の頻度を下げ、また落雷の際には避雷針に雷を呼び込み地面へと電流を逃がすことで建物などへの被害を防ぐ。そのため、「雷を避ける針」という表記ではあるが、実際には必ずしも雷をはねのけるものではなく、字義とは逆に避雷針へ雷を呼び寄せる、いわば「導雷針」ともなる。 避雷針は棒状の導体であり、保護対象とする建築物などの先端部分に設置される。落雷時にはこの部分に稲妻を呼び込み、接地に導くことによって、当該建築物などの被害を防ぐ。避雷針によって形成される保護範囲、すなわち落雷による被害が生じなくなる(極めて生じにくくなる)範囲を「防護範囲」(Lightning Protection Zones)という。 最近では、避雷針を改良し、あらかじめ雷を呼び寄せる雷ストリーマ
概要
避雷針には落雷時、雷の大電流が到達する。このためそれに耐えうる接地線を避雷針本体から地面まで引き下げ、地中に埋設した銅板などに接続しなければならない。内線規程では、銅板などの接地抵抗値は10Ω以下(専用の接地極の場合は30Ω以下)と規定されているが、これにかかわらず、できるだけ低い接地抵抗値にすることが望まれる。
防護範囲を広くするために、避雷針だけでなく棟上げ導体(長い棒状の導体を屋根などにつける)などを併用する場合もある。これは大きなビルディングや高さのある文化財など、避雷針のみでは十分な防護範囲を得難い建築物などに対して行われる。
日本においては建築基準法により20メートルを超える建築物には避雷針(避雷設備)の設置が義務付けられている。 避雷針の防護範囲を決める方法は、保護できる角度内に建物が収まっているかを見る「保護角法」があり、旧JIS A 4201では、避雷針の先端から頂角45度または60度の円錐形内に収まる部分が、落雷を免れる範囲としていた。しかし、2003年にIEC規格に合わせてJIS A 4201が改訂され、大きな建物などでは、円錐状でなく回転球体法
防護範囲
ただしこの範囲は、「この中では絶対に落雷がない」というものではない。また避雷針そのものには落雷するため、避雷針やこれに接続された導線などに触れたり、あるいはその直近に居ると雷撃を被り、死亡することがある。また、このような場所に電気機器などを配置すると、これらに流れる雷電流そのものの分流や電磁誘導作用により破壊されることがある。
避雷針への落雷時、落雷のタイプや規模、接地の種類、大地抵抗率などの条件に関わらず、避雷針の接地極より2.5メートル範囲内の大地の電位勾配は極めて急であり、少なくともこの範囲内は極めて危険である[6]。すなわち避雷針への落雷時、避雷針システム及びその周囲には高い電圧が発生することに十分な注意が必要となる。屋外地上部で埋設標などを頼りに、避雷針システムより十分な距離を確保したつもりでも、避雷針に接続されている導線、まして接地極の大きさ、広がりなどは見た目にはわからず危険なので、雷に遭った際には屋外に形成される避雷針の防護範囲に避難するのではなく、避雷針の防護範囲内に収められている建物内に直ちに避難すべきである。
歴史石像の頭上に設置された避雷針
より高い建物が建設されるようになるにつれて、落雷の脅威も大きくなっていった。落雷はほとんどの材質(石、木、コンクリート、鋼)の建築物に損傷を与える。大電流が流れて高温になることで火災の原因となる他、建材に水分が含まれる場合は水分が瞬間的に沸騰することによる水蒸気爆発で内部から破壊されたり建物の強度を失わせたりするなど、特に被害が大きくなる。 ヨーロッパの都市では教会の塔が最も背の高い建物で、よく落雷の被害に遭っていた。キリスト教の教会では早くから、祈りによって落雷の被害を防ごうとした。聖職者は次のように祈った。"temper the destruction of hail and cyclones and the force of tempests and lightning; check hostile thunders and great winds; and cast down the spirits of storms and the powers of the air."(日本語訳)「雹と竜巻の破壊、暴風雨と稲妻の力を和らげたまえ。冷酷な雷鳴と大いなる風を妨げたまえ。嵐の精霊と大気の力を鎮めたまえ」 Peter Ahlwardts (Reasonable and Theological Considerations about Thunder and Lightning, 1745) は、稲妻を避けるなら教会の中や近く以外の場所を探すよう助言している[7]。なお、ヨーロッパでも Vaclav Prokop Divi? ロシアのネヴィヤンスクの斜塔 アメリカ合衆国では、ベンジャミン・フランクリンが電気について画期的な実験をし、その過程で1752年に避雷針を発明した。フランクリンは有名な凧の実験を行う数年前から避雷針について考えていた。その実験を行うことになったのは、実のところフランクリンがフィラデルフィアの Christ Church
ヨーロッパ
アジア
アメリカ合衆国
フランクリンは、屋根には雨を防ぐ以外に宗教的問題はなく、雷も巨大な電気スパークという自然現象であって、雨を防ぐのとなんら違いはないと反論した。フィランソロピーの考え方から、フランクリンはこの発明の特許を取得しなかった。
19世紀になると、避雷針には装飾的意味も加わるようになった。避雷針には装飾としてガラスの球が飾られるようになった[9](このガラス製の球はコレクションの対象になっている)。このような装飾用のガラス球は風見鶏にも使われていたものである。ただし、このガラス球にはそれが壊れているかどうかで落雷があったかどうかがわかるという役割があった。嵐の後、避雷針のガラス球が壊れていれば、その建物の所有者は内部や避雷針や導線に損傷がないかチェックする必要がある。
ガラス球は船などで落雷を防ぐのに使われていた。これは科学的には間違っているが、注目に値する。ガラスは不導体であり、滅多に雷の直撃を受けない。そこで先人達はガラスに雷を避ける力があると考え、木製船の一番高いマストの先端にガラス球を設置した。実のところ落雷の直撃を受けることは滅多にないため、確証バイアスによってガラス球で落雷を防ぐことが可能だと思い込み、フランクリンの発明後すぐに船用避雷針ができても、ガラス球は使われ続けた。
初期の船用避雷針は落雷が予想される天候になったときに伸ばして使う方式だったが、あまりうまく機能しなかった。1820年、William Snow Harris が木製帆船向きの避雷針を発明した。1830年から試験が行われ成功したものの、イギリス海軍は1842年までそのシステムを採用しなかった。そのころには既にロシア帝国海軍でもそのシステムを採用済みだった。
ニコラ・テスラの アメリカ合衆国特許第 1,266,175号 は避雷針の改良である。この特許はフランクリンのオリジナルの理論の欠点を補うものだった。その欠点とは、先端の尖った避雷針は実際その周囲の空気をイオン化し、空気を電導性にするため、落雷の危険性が増すというものである。この特許を取得してしばらく経った1919年、テスラは The Electrical Experimenter 誌に Famous Scientific Illusions と題した記事を書いた。その中でフランクリンの避雷針の論理を説明し、テスラ自身の手法と装置の改良点を解説している。(このテスラの避雷針には上述の防護範囲を拡大するはたらきがあることから、今日なおも新たな改良が加えられ、実用に供されている[3]。)
デュポンの爆薬工場は周囲に松の木を植えていた。松葉は尖っていて、松の上方の葉の先端は地面よりも電位が高く、そのため雲との電位差が若干小さくなる。これによって松林に囲まれた工場の敷地内は単位面積あたりの落雷数が少なくなっていた。1950年代、デュポン社ではニトログリセリンを作る建物からそれを包装する建物へ運ぶ際に Angel Buggies(天使の乳母車)と呼ぶ乗り物を使っていた。爆薬工場の従業員は落雷の可能性に非常に敏感だった[10]。
1990年代、ワシントンD.C.のアメリカ合衆国議会議事堂のドーム頂上にある自由の女神像を再建したとき、避雷針も設置し直された[11]。この像は複数の素材でできていて、頂上部にプラチナが使われている。