遺産相続
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この項目では、日本と世界における相続について説明しています。

相続の税金については「相続税」をご覧ください。

「遺産相続」はこの項目へ転送されています。同名の映画については「遺産相続 (映画)」をご覧ください。

相続(そうぞく、: inheritance)とは、自然人財産などの様々な権利義務を他の自然人が包括的に承継すること[注 1]
概説
近代法の相続制度の趣旨.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

この節の加筆が望まれています。

相続の制度は他のどの諸制度よりもその根拠を問われる[1]

近代法の相続制度については、被相続人と生計をともにした遺族の生活を保障する趣旨であるとみる説や被相続人の遺した財産が無主物となってしまうことを防ぐ趣旨であるとみる説などがある。

一方、相続財産という、いわば不労所得による所有財産の多寡が生ずることによって、平等であるべき個人の経済的な競争条件を損なうものとして、相続制度否定論者からは制度撤廃を求める主張がある。したがって相続課税の強化により富の再分配機能を強化すべきとなる[1]

一般的には、自然人の死亡を原因とするものを相続と称することが多いが、死亡を原因としない生前相続の制度もある(日本国憲法が施行される前、いわゆる明治憲法下の日本における家督相続は死亡を原因とする場合もしない場合も含む)。
相続における財産の承継形態

比較法上、相続原因が発生した場合(死亡など)に被相続人から相続人に財産が移転する形態としては、包括承継主義と清算主義の形態がある。
包括承継主義
相続原因の発生と同時に、被相続人と利害を有する者との間で何らの清算手続を経ずに、被相続人の財産が包括的に相続人に移転する形態である。この制度では、被相続人の財産は債務も含めて一切が承継されるため、債務の相続を回避するためには別の手続(
相続放棄限定承認)が必要になる。日本、ドイツなどで採用されている形態である。もっとも、この場合でも、限定承認の制度が採用されている場合は、所定の手続を経れば清算主義に近い形態になる。
清算主義
この形態では、相続原因が発生した場合、相続財産は直ちに被相続人に承継されず、一旦死者の人格代表者(personal representative)に帰属させ管理させる。そして、この者が被相続人の利害関係人との間で財産関係の清算をし、その結果プラスの財産が残る場合はそれを相続人が承継する。英米で採用されている形態である。包括承継主義と異なり、建前上は相続人が被相続人の債務を承継することはない。もっとも、相続財産が小額の場合は費用倒れになること、多額の場合でも清算手続を経ない方が経済的に望ましい場合もあるため、現実には清算手続を経ずに債務も含めてそのまま相続人が財産を承継する便法が採られることもある。
不平等

相続された富の分配は異なった文化や法的伝統において大いに多様である。大陸法による国では、例えば、子供が親から相続する権利の予め定められた割合は、遥か時代を遡るハムラビ法典(紀元前約1750年)でのように[2]、法律で明記されている[3]。アメリカ合衆国のルイジアナ州は、法体系がフランス民法典に由来する、合衆国で唯一のところの州である。両親が証明を義務付けられるところの、わずかな厳密に定義された理由を除いて、成人の子供の非相続の許可を与えるものとして、この体系は知られる[4]。別の法伝統は、当事者の一人が望むような、または何らかの理由で子供の誰かに相続させない分割を許す、コモン・ローによるものが合衆国の一部で行われる。

'不均等'(: unequal )な相続の場合、少ない数の相続だけが大きな総額であるのに多数の者は少なく受け取るかもしれない[要出典]。
社会階層

社会階層において顕著な効果を相続が与えることを指摘されてきた。相続は、家族、経済、法制度、ならびに階級分化 での基礎的な機構の、集積的な組み合わせである。それは社会的な水準においても富の分布 (英語: Distribution of wealth )に影響を及ぼす。その分野において検証をする学者により、分化の結果における相続の総累積的効果は三つの形態をとる。
相続上の不平等の社会的かつ経済的影響

経済的地位のどの階級であるか、そして世代にわたり継承される相続が、社会での当事者の人生の機会を決定することがさらに主張される。多くはその者の社会的出自と人生の機会と目的を達成する教育に関係するけれども、教育は経済的移動性 英語: economic mobility )の最も影響のある予測物として提供されない。実際、裕福な両親の子は総じてよい教育と物質的、文化的、生来的利益を与えられる[5]
王朝的な富

'王朝的な富'(: dynastic wealth )とは稼がれなかったものである、世代へ継承される金銭的な富である[6]。王朝的な富は金権政治という用語に関連する。フランスの経済学者のトマ・ピケティによる多売本の21世紀の資本を含めて、多くの者が王朝的な富の増大と影響について述べている[7]

ビル・ゲイツはその用語を彼の記事Why Inequality Mattersで用いる[8]
相続についてのソビエト連邦の対応

マルクス主義労働価値説による共産主義が始まるにつれ、もしそれが人の自身の労働の果実に基づき他人を雇ったものでなければ、生涯の道筋でのいかなる金銭も正当化された。

ロシア革命以降成立した最初の共産主義政府は、幾つかの例外を除き、相続の権利を廃止することで解決した[9]
日本法における相続

この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。

日本法における相続法は、主に相続について定めた民法第五編に規定されている。民法における相続に関する規定には遺言により民法の規定と異なる定めをすることができる任意規定が多く含まれる一方、遺留分規定のように遺言での排除を許さない強行規定も存在する。

日本の民法について以下では、条名のみ記載する。

相続の開始

相続は死亡によって開始する(882条)。死亡には失踪宣告認定死亡も含まれる。相続は被相続人の住所において開始する(883条)。

相続人は、相続開始の時(被相続人の死亡の時)から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する(896条)。
相続人

「相続人」はこの項目へ転送されています。1973年の映画については「相続人 (1973年の映画)」を、1998年の映画については「相続人 (1998年の映画)」をご覧ください。

被相続人の財産上の地位を承継する者のことを相続人(そうぞくにん)という。これに対して相続される財産、権利、法律関係の旧主体を被相続人(ひそうぞくにん)という。相続開始前には、推定相続人といい、被相続人の死亡による相続開始によって確定する。なお、相続人となり得る一般的資格を相続能力といい、法人は相続能力を持たないが、胎児は相続能力を持つ(886条)。
相続順位

被相続人の血族は次の順位で相続人となる(887条・889条)。
被相続人の子

被相続人の直系尊属

被相続人の兄弟姉妹

また、被相続人の配偶者は常に相続人となり、上記の順位で相続人となった者と同順位で相続人となる(890条)。同順位同士との相続となるのであって、遺言による指定がない限り他順位間とで相続することはない。他人同然の関係の人間は遺言で指名されるか養子縁組の手続きをしない限り、相続権は一切ない。例:血縁上の異母姉妹に父親の相続権は全員にあっても異母の財産を相続する権利はない。詳細は「#相続分」を参照
代襲相続

相続の開始以前に被相続人の子あるいは被相続人の兄弟姉妹が死亡、相続欠格・相続廃除によって相続権を失った場合、その者の子が代わって相続する(887条2項本文・889条2項)。これを代襲相続といい、代襲相続する者を代襲者、代襲相続される者を被代襲者という。

代襲者は被相続人の直系卑属でなければならない(887条2項但書)。養子縁組前に出生していた養子の子は被相続人の直系卑属ではない(民法727条は養子と養親およびその血族との間に血族関係が生じることを認めているが、養親と養子の血族との間に血族関係が生じることは認めてない。)から代襲相続することはできない(大判昭和7年5月11日民集11巻1062頁)。

なお、相続放棄は代襲原因とはならず、相続放棄をした者の直系卑属(子・孫・曾孫…)には代襲相続は発生しない。

代襲者である相続人の子が死亡・相続欠格・相続廃除によって相続権を失った場合、孫が代わって相続する(887条3項)。これを再代襲相続といい、代襲者は直系卑属(子・孫・曾孫…)では延々と続くことになる。ただし、相続人が兄弟姉妹の場合には代襲者は甥姪までとなり、大甥大姪の再代襲相続は認められていない(889条参照)。
相続欠格

故意に被相続人や他の相続人を死亡に至らせたり、遺言書を破棄・捏造するなど第891条に規定される重大な不正行為(相続欠格事由)を行った者は、その被相続人の相続において当然に相続人としての資格を失う。これを相続欠格という。詳細は「相続欠格」を参照
相続人の廃除

被相続人に対して虐待・侮辱あるいは著しい非行があった場合、被相続人は家庭裁判所に申し立てる事によって、その相続権を喪失させることができる(892条)。これを相続人の廃除という。相続人の廃除は遺言による申し立てによっても可能である(893条)。廃除された推定相続人は相続権を失う。詳細は「相続廃除」を参照
相続の効果
相続の一般的効果

相続により相続人は原則として被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する(896条本文)。しかし、以下の例外がある。

一身専属的権利
相続人の一身専属的権利は相続が発生しても承継されない(896条但書)。以下のようなものがある。
代理権(111条1項1号)

定期の給付を目的とする贈与(定期贈与、552条)

使用貸借における借主としての地位(599条)

委任における委任者あるいは受任者としての地位(653条)

民法上の組合の組合員としての地位(679条)

定期預金の契約(銀行が特別に認めた場合を除く)


祭祀に関する権利
系譜・祭具・墳墓の所有権は原則として慣習により祖先の祭祀を主宰すべき者が承継するものとされるが、被相続人の指定があるときはその者が承継することになる(897条1項)。
相続財産の共有

相続人が数人あるときは相続財産は共同相続人の共有に属することになる(898条)。この「共有」の意味については共有説と合有説の対立があるが、判例は249条以下の共有と異ならないものと解して共有説をとっている(最判昭和30年5月31日民集9巻6号793頁)。
相続回復請求権

相続欠格者や本来相続人でないのに相続人を装っている者(表見相続人・僭称相続人・不真正相続人などという)が、遺産の管理・処分を行っている場合、相続人は遺産を取り戻すことができる。これを相続回復請求権という(884条)。相続回復請求権はこれを包括的に行使でき個々の財産を具体的に列挙して行使する必要はない(大連判大正8年3月28日民録25輯507頁)。相続回復請求権は相続人またはその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する(884条前段)。また、相続開始の時から20年を経過したときも消滅する(884条後段)。なお、清算主義でプラスの財産しか相続しない英米法では相続回復請求権は大いに尊重されており、日本の民法との相違は大きい。

そして、その相続回復請求権は共同相続人相互間の相続権の帰属の問題についても適用があるとされている。ただし、判例上は相続回復請求権における消滅時効の援用権者について、共同相続人が他の真正共同相続人の持分まで主張する場合は、他の真正共同相続人の持分を侵害している事実を知らずかつ自らが相続権があると信ずるに足りる合理的理由があることを要するとして(最大判昭和53年12月20日・民集32巻9号1674頁)その範囲を制限している。
相続分

相続人の相続財産に対する分け前の割合や数額のことで、普通はその割合をいう(900条)。
指定相続分

被相続人は遺言で共同相続人の相続分を定め、または、相続分を定めることを第三者に委託することができる(902条1項本文)。このような方法によって定まった相続分を指定相続分という。ただし、被相続人や第三者は相続分の指定について遺留分に関する規定に違反することができない(902条1項但書)。被相続人が共同相続人のうちの一人もしくは数人の相続分のみを定め、または第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は法定相続分の規定によって定まることになる(902条2項)。

上記のように遺言により相続分の指定・指定委託をした場合でも、消極財産は指定相続分によらず法定相続分に応じて分割されるという説が有力である。これについて大審院決定昭和5年12月4日は、「…金銭債務のその他可分債務については各自負担し平等の割合において債務を負担するものにして…」と述べている。(したがって消極財産は遺産分割の対象とならないとされる下級審判例:福岡高決平成4・12・25判タ826・259)。平成21年03月24日最高裁判所第三小法廷判決(平成19(受)1548)は、傍論ではあるが「もっとも,上記遺言による相続債務についての相続分の指定は,相続債務の債権者(以下「相続債権者」という。)の関与なくされたものであるから,相続債権者に対してはその効力が及ばないものと解するのが相当であり,各相続人は,相続債権者から法定相続分に従った相続債務の履行を求められたときには,これに応じなければならず,指定相続分に応じて相続債務を承継したことを主張することはできないが,相続債権者の方から相続債務についての相続分の指定の効力を承認し,各相続人に対し,指定相続分に応じた相続債務の履行を請求することは妨げられないというべきである。」と判示しており、大審院判例の見解を維持しているものと考えられる。この判例では、指定相続によって明示または黙示的に債務の帰属を定めた場合、債権者に対しては効力が及ばないが、相続人相互間ではその指定通りの効力を生じることを判示している。

ただし、国税通則法または地方税法の適用・準用がある公租公課については、遺言による指定・指定委託があれば、指定相続分による承継が原則となる(国税通則法5条2項、地方税法9条2項が民法902条を用いることを明記している)。なお、公租公課については、承継する財産の価額が承継税額を超えるときは、その超過部分を限度に他の相続人と連帯して納付する義務を負う(国税通則法5条3項、地方税法9条3項)。
法定相続 分

遺言による相続分の指定がない場合は法定相続分(900条)による。

前述のように、被相続人の血族は、1.被相続人の子、2.被相続人の直系尊属(親等の異なる者の間では最近親の者)、3.被相続人の兄弟姉妹の順で相続人となり(889条1項)、被相続人の配偶者は常に相続人(被相続人の血族に相続人となるべき者があればその者と同順位)となる(890条)。

以上の相続人の範囲において相続人が数人あるときは、その法定相続分は、次の各号の定めるところによる(900条)。
子及び配偶者が相続人であるとき子の相続分及び配偶者の相続分はそれぞれ2分の1である(900条1号)。子が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいもの(均等分)とする(900条4号)。

配偶者及び直系尊属が相続人であるとき配偶者の相続分が3分の2、直系尊属の相続分が3分の1である(900条2号)。直系尊属が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいもの(均等分)とする(900条4号)。


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