遺体 明日への十日間
Reunion
監督君塚良一
脚本君塚良一
原作石井光太
『遺体 震災、津波の果てに
『遺体 明日への十日間』(いたい あすへのとおかかん)は、2013年2月23日に公開された日本映画である。
ジャーナリスト石井光太が、2011年3月11日に発生した東日本大震災から十日間、岩手県釜石市の遺体安置所で、石井本人が見てきた報道では伝えきれていない現状を、ありのままを綴ったルポルタージュ『遺体 震災、津波の果てに』を実写映像化した作品。作品の収益金は被災地に寄付される予定である[1]。 2011年3月11日。岩手県釜石市は雪まだ残る初春の穏やかな午後のひとときを何事もなく送っていた。 午後2時46分31秒、東日本を中心に巨大地震が発生。その後、東北太平洋岸に最大40メートルの巨大津波が襲い、釜石市も壊滅的な打撃を受ける。 釜石市役所職員の平賀は上司に命じられ、部下の照井、及川と共に仮設の遺体安置所となった元小学校体育館の管理を任される。また、医師の下泉は検死、歯科医の正木は身元特定のため遺体安置所で働くことになる。 それぞれが慣れない作業に戸惑う中、消防団や警察、自衛隊により次々と犠牲者が搬送されてくる。震災の想像を絶する惨状と膨大な犠牲者の数に誰もが言葉を失い、余震、停電、物資不足といった過酷な状況に感情や感覚を麻痺させていく。行方不明となった家族を探す人々は泥まみれのブルーシートに発見されたままの姿で乱雑に並べられた犠牲者の扱いに憤りの声をあげる。 市の民生委員で葬儀社での勤務経験のある相葉はそんな遺体安置所を訪れ、ナンバーで呼ばれ無残に扱われる犠牲者に言葉を失う。すぐさま市長の山口に頼み、ボランティアとして安置所の運営を切り盛りし始める。 遺族に優しい言葉をかけ、遺体に語りかけ、心をこめ丁重に扱おうとする相葉の姿に最初は戸惑いと違和感を感じていた人々は少しずつ彼の言葉に耳を傾けるようになっていく。 「遺体は話しかけられると人としての尊厳を取り戻す」、「やるべし」 深い悲しみを抱えながら、過酷な現実に立ち向かう人々の姿をありのままに描いたヒューマンドラマ。
あらすじ
登場人物
相葉 常夫(あいば つねお)
西田敏行釜石市の民生委員。元葬儀社の職員。老人たちと卓球を楽しんでいたときに被災。遺体安置所を訪れた際にその惨状を知り、自宅に妻を残してボランティアに志願する。心優しいヒューマニストで彼の言葉と行動が震災にうちひしがれた人々を勇気づけていく。四人の子供の父親。モデルとなった人物は釜石市の民生委員・千葉淳[2]。
平賀 大輔(ひらが だいすけ)
筒井道隆釜石市役所職員。役場での勤務中に被災。遺体安置所の管理を任されたものの、なにをどうして良いかわからず戸惑う。相葉が参加したことで方向性を見出し協力する。
下泉 道夫(しもいずみ みちお)
佐藤浩市病院勤務医。午後の診察中に被災。検死のため遺体安置所での勤務を行う。自分の患者が遺体として運び込まれる非情な現実にうちのめされる。だが、献身的な相葉の行動に心を打たれ、その理解者となっていく。
正木 明(まさき あきら)
柳葉敏郎歯科医師。午後の診察中に被災。助手の大下と共に遺体安置所での確認作業に追われる。親友が遺体として運び込まれ、その妻が遺族として訪れたことに打ちのめされる。
大下 孝江(おおした たかえ)
酒井若菜歯科助手。午後の診察中に被災。親友を失った正木を励ましてけなげに作業を補佐する。だが、恩人の遺体が運び込まれたことで鬱積していた感情が爆発する。
及川 裕太(おいかわ ゆうた)
勝地涼釜石市役所職員で平賀の部下。役場での勤務中に被災。平賀と共に遺体安置所の管理に携わる。住んでいたアパートも流され、行方不明の同僚のことを思い心を閉ざす。だが、土門が棺桶を運び込んだ際に自らボランティアを買って出た遺族の少年に心を打たれ、自分を取り戻す。中学生の娘を失った女性との心の交流を通じて人間的に成長する。
照井 優子(てるい ゆうこ)
志田未来釜石市役所職員で平賀の部下。役場での勤務中に被災。平賀と共に遺体安置所に赴くが何も出来ず壁の花となっていた。相葉の参加後、懸命に床の清掃を行い、祭壇を作ることを発案する。だが、年端もいかない子供が遺体として運び込まれたのを見てショックを受け、震災を生き残った自分を責める。
松田 信次(まつだ しんじ)
沢村一樹釜石市役所職員。役場での勤務中に被災。部下と共に遺体回収および搬送作業に携わる。想像を絶する惨状の中で奮闘するが、中学生の我が子を失った母親に責め立てられ、過酷な作業に部下から体調不良や不眠を訴えられるなど苦労する。
山口 武司(やまぐち たけし)
佐野史郎釜石市長。相葉とは旧知の間柄。役場での勤務中に被災し、避難所の運営や行政との連絡、確認作業に忙殺されている。
土門 健一(どもん けんいち)
緒形直人釜石葬儀社社員。1000個の棺桶を用意しろという釜石市の難題に取り組み、人々の協力を得ながら、納棺・出棺などの作業を執り行う。物資不足や故障と電力不足で火葬場が満足に稼働できない状況に懸命に立ち向かう。
芝田 慈人
國村隼日蓮宗の住職。自身も被災している。相葉とは旧知の間柄。