遺伝子組み換え作物
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遺伝子組み換え作物(いでんしくみかえさくもつ、英語: genetically modified crops)とは、遺伝子組換え技術を用いて遺伝的性質の改変が行われた作物である。略称はGM作物(英語: GM crops)である。

日本語では、いくつかの表記が混在している。遺伝子組換作物反対派は遺伝子組み換え作物、厚生労働省が遺伝子組換え作物、食品衛生法では組換えDNA技術応用作物、農林水産省では遺伝子組換え農産物 を使う。

英語の genetically modified organism からGMOとも呼ばれることがある。なお、GMOは通常はトランスジェニック動物なども含む遺伝子組換え生物を指し、作物に限らない。GMO生産マップ(国際アグリバイオ事業団(英語版)、2019年)。耕作面積によって色分けされている。.mw-parser-output .legend{page-break-inside:avoid;break-inside:avoid-column}.mw-parser-output .legend-color{display:inline-block;min-width:1.5em;height:1.5em;margin:1px 0;text-align:center;border:1px solid black;background-color:transparent;color:black}.mw-parser-output .legend-text{}  1000万ヘクタール以上   5万から1000万ヘクタール   5万ヘクタール以下   栽培されていない
概要

遺伝子組換え作物は、商業的に栽培されている植物(作物)に遺伝子操作を行い、新たな遺伝子を導入し発現させたり、内在性の遺伝子の発現を促進・抑制したりすることにより、新たな形質が付与された作物である。食用の遺伝子組換え作物では、除草剤耐性、病害虫耐性、貯蔵性増大などの生産者や流通業者にとっての利点を重視した遺伝子組換え作物の開発が先行し、こうして生み出された食品を第一世代遺伝子組換え食品と呼ぶ。これに対し、食物の成分を改変することによって栄養価を高めたり、有害物質を減少させたり、医薬品として利用できたりするなど、消費者にとっての直接的な利益を重視した遺伝子組み換え作物の開発も近年活発となり、こうして生み出された食品を第二世代組み換え食品という。

遺伝子組換え作物の作製には、開発過程の高効率化や安全性に関する懸念の払拭のためにさまざまな手法が取り入れられている。たとえば、遺伝子の組み換わった細胞(形質転換細胞)だけを選択するプロセスにおいて、かつては医療用、畜産用としても用いられる抗生物質と選択マーカー遺伝子としてその抗生物質耐性遺伝子が用いられていた。現在ではそのような抗生物質耐性遺伝子が遺伝子組換え作物に残っていることが規制される場合もあり、それ以外の選択マーカー遺伝子を利用したり、選択マーカー遺伝子を除去したりといった技術が開発された。

遺伝子組換え作物の栽培国と作付面積は年々増加している。2015年時点、全世界の大豆(ダイズ)作付け面積の83%、トウモロコシの29%、ワタの75%、カノーラの24%がGM作物である( ⇒ISAAA調査)。遺伝子組換え作物が商業的に本格的に栽培された1996年から2014年までは年々栽培面積が増えてきたが2015年になって初めて前年に比べ栽培面積が1%減少した。

2020年10月、アルゼンチンは世界で初めて遺伝子組換え小麦を承認した。ヒマワリ由来で、すでに大豆への組み込み実績がある遺伝子HB4により、旱魃でも従来品種より平均20%多収である。アルゼンチンとフランスの企業が開発した[1]

日本については、限定的ではあるが、青いバラ (サントリーフラワーズ)の商業栽培により2009年には遺伝子組換え作物の商業栽培国となった。

日本の輸入穀類の半量以上は既に遺伝子組換え作物であるという推定もある[要出典]。

遺伝子組換え作物の開発・利用について、賛成派と反対派の間に激しい論争がある。主な論点は、生態系などへの影響、経済問題、倫理面、食品としての安全性などである。生態系などへの影響、経済問題に関しては、単一の作物や品種を大規模に栽培すること(モノカルチャー)に伴う諸問題を遺伝子組み換え作物特有の問題と混同して議論されることが多い。食品としての安全性に関して、特定の遺伝子組換え作物ではなく遺伝子組み換え操作自体が食品としての安全性を損なっているという主張がある。そのような主張の論拠となっている研究に対し、実験設計の不備やデータ解釈上の誤りを多数指摘したうえで科学的根拠が充分に伴っていないとする反論もある[2]

日本では、厚生労働省および内閣府食品安全委員会によって、ジャガイモダイズテンサイトウモロコシナタネワタアルファルファおよびパパイアの8作物318種類について、2018年(平成30年)2月23日時点、食品の安全性が確認されている[3]
起源

従来の育種学の延長で導入された、1973年以降の遺伝子組換えの手法としては、放射線照射重イオン粒子線照射、変異原性薬品などの処理で、染色体に変異を導入した母本を多数作成し、そこから有用な形質を持つ個体を選抜する作業を重ねるという手順で行われた。

最初のGMOが作成されたあとに、科学者は自発的なモラトリアムを、組換えDNA実験に求めて観測した。モラトリアムの一つの目標は、新技術の状態、および危険性を評価するアシロマ会議のための時間を提供することだった。生化学者の参入と新たなバイオテクノロジーの開発、遺伝子地図の作成などにより、作物となる植物に対して、「目的とする」形質をコードする遺伝子を導入したり、「問題がある」形質の遺伝子をノックアウトしたりすることができるようになった。

アメリカ合衆国では、研究の進展とともに厳しいガイドラインが設けられた。そのようなガイドラインは、のちにアメリカ国立衛生研究所や他国でも相当する機関により公表された。これらのガイドラインは、GMOが今日まで規制される基礎を成している。

初めて市場に登場した遺伝子組換え作物と言われるのは、アンチセンスRNA法(mRNAと相補的なRNAを作らせることで、標的となるタンパク質の生合成を抑える手法でRNAi法の一種)を用いて、ペクチンを分解する酵素ポリガラクツロナーゼの産生を抑制したトマト "Flavr Savr" である。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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