遠山の金さん
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「金さん」は日本の時代劇について説明しているこの項目へ転送されています。名字については「金 (曖昧さ回避)#人名」を、長寿姉妹については「きんさんぎんさん」をご覧ください。

この項目では、日本の時代劇について説明しています。主人公である奉行「遠山金四郎景元」については「遠山景元」をご覧ください。
東映京都撮影所にある、お白州のセット

遠山の金さん(とおやまのきんさん)は、江戸町奉行遠山金四郎景元を主人公にした時代劇
物語

講談歌舞伎で基本的な物語のパターンが完成し、陣出達朗の時代小説「遠山の金さん」シリーズなどで普及した。
基本的な構成

水戸黄門」「暴れん坊将軍」と同様、「気のいい町人(素浪人)」が最後に「実は権力者」の正体を明かして悪を征し、視聴者はカタルシスを得る。
事件が起き、“北町奉行(再任時の後期を描いた妻帯時には南町奉行)の遠山景元”が“遊び人の金さん(正体を知らない岡っ引き等には“金の字”や“金公”と呼ばれていたりする)”として自ら潜入捜査を行い、事件の真相と黒幕を突き止める(松平健が演じる金さんは被害者の職業に扮し、その人物の代わりに来た、として潜入した回もある)。その後、被害者や共犯者など関係者が全員揃った場所(多くの場合、夜の黒幕の屋敷)に乗り込み、突き止めた悪事の数々を言い立てる。しかし悪人たちは金さんをただの遊び人と見下し、悪事を全て認めたうえで、被害者と共に抹殺しようとする。ここで金さんは「この金さんの桜吹雪、見事散らせるもんなら散らしてみろぃ!」などと啖呵を切って片肌を脱ぎ、桜の彫り物を見せつける(中村梅之助市川段四郎主演版では片肌ではなく両肌脱いでおり、テーマ曲でもそのように歌っていた)。この後、金さんと悪人たちが入り乱れてチャンバラとなり、悪人たち全員が金さん一人に気絶させられる(金さんは多くの場合素手だが、杉良太郎松方弘樹が演じる金さんは、刀などの得物を奪って峰打ちで返り討ちにする場合もある。高橋英樹は水で濡らした手ぬぐいが得物)。橋幸夫は、花札を投げることもある。(ほぼ)全ての悪人を気絶させた後、同心たちが悪人を捕縛するためその場に駆けつけるが同心が「御用だ!!御用だ!!北(後期は南)町奉行所の者だ!!」あるいは「北(同左)町奉行所だ!!神妙にせぃ!!」と言う(同時に言う回や、両方言う回もある)。金さんは桜の彫り物を隠し、彼らに姿を見られないよう到着前に立ち去る。

後日、捕縛された悪人たちがお白洲に曳き出され、吟味に掛けられる。お白洲には「至誠一貫」と書かれた額が掲げられており、遠山奉行が「北(同左)町奉行・遠山左衛門尉様、ご出座?ぁ!!」の声と太鼓と共に登場する。幕府高官や藩の重役などが悪人の仲間である場合、参考人などの形で陪席することがほとんどであり、陪席しない場合は次の間に控えて裁きの推移を窺っていることもある。

遠山が「これより**について吟味を致す、一同の者面を上げい」「さて○○(悪人)、××(罪状)とあること既に吟味の結果明白であるが左様相違無いか」と悪人に罪状を問いただす。悪人は「さて何のことやら」「滅相もございません…」「何かの御間違いでございましょう」「悪巧みは全く身に覚えがございませぬ」「名奉行と呼ばれる遠山様とも思えませぬな」「お奉行様、全くの濡れ衣でございまする」と言って犯行を否認するが、被害者は証人として“遊び人の金さん”を呼ぶよう訴える(「遊び人の金さんを呼んで下さい。金さんが全てを知っています」)。しかし、悪人は金さんの存在を否定し、遠山に罵声を浴びせる。幕府高官や藩の重役などが陪席している場合、その高官が「遠山殿、これは全く意味のない白洲ですぞ。」「**奉行(幕府の閣僚や藩の重役の名称もあり)である身共をここに座らせるとは、御身のお立場も危ういですぞ」等と、とぼけた様に悪人の無罪を主張したり、圧力をかけたりする。特にテレビ版初期はこの「金さんを呼んで下さい」が無い場合も多く、遠山の方から「もう一人、証人がいる」などと金さんの存在をほのめかす場合もある。この場合も悪人らは「では、その男をお呼びください」と強い調子で言ってみたり、その人物(つまり金さん)を(逆恨みした)被害者の一味扱いした上で、悪口雑言(「背中一面にものすごい入れ墨をしている、とんでもない極悪人」「そいつはお前さんのイロかい?」「詐欺師・ペテン師」など)を並べ立てたりする。

悪人や取り巻きたちの罵声が最高潮に達した時、遠山が「やかましぃやい!(悪党ども!!) おうおうおう、黙って聞いてりゃ寝ぼけた事を(または「言いたい放題」)抜かしやがって!」などと、今までの謹厳な口調とはガラリと変わった江戸言葉で一同を一喝する。

遠山が「そんなに会いたいなら会わせてやらぁ。あの晩、(現場の名)で見事に咲いた金さんの、お目付け桜、夜桜を、まさかうぬら! 見忘れたとは、言わせねぇぞ!!」(ここでチャンバラシーンの回想が入る@松方弘樹版)または「この桜吹雪に見覚えがねぇとは言わせねぇぜ!」と言いながら片肌脱ぐと、そこには“金さん”と同じ桜の彫り物(このとき金さんが桜吹雪を見せている時の映像を回想の様に流す事もある)。一同、“金さん”こと遠山に一部始終を見られていた事を知って驚愕する。さらに、遠山は「うぬら! これでもまだ白を切ろうってぇのか!!」と畳み掛ける。このとき多くの悪人は「お、畏れ入り奉りました…」「申し訳ございません(申し訳ございませぬ)」「く、くそぉ…(ち、ちくしょう…)」など今まで犯した罪を認めた。被害者は「ああ、金さん!!」「金さんが、お奉行様!?」「えーっ!?」などと驚きを交えつつ言う。幕府の高官や藩の重役などが陪席している場合、その高官が「おのれ遠山!」などの言葉とともに遠山に斬りかかろうとし、撥ね返される(大体、長袴で蹴り倒される)。この役目は高官のみならず、白洲にいる博徒等の罪人が担うこともあるが、いずれにしろ跳ね返される。高官や藩重役など陪席しない場合、次の間で切腹などしてしまう場合もある。

悪人が観念したところで遠山が姿を戻し、「裁きを申し渡す」と判決を言い渡す。主犯には大抵「(市中引き回しの上)打ち首獄門」または「獄門」[1]、共犯(「余の者」と呼ばれる)は「終生遠島」「終生江戸所払い(重追放)」[2]、高官には「御公儀(評定所・**藩)より、追って極刑(切腹)の沙汰があろう」と言う[3]。その後「引っ立てい!!」となる。悪人の手下(場合によっては悪人本人も)はこの時もジタバタしていることが多い。また、捨て台詞を吐くこともある。

悪人が連れ出された後は、「さて、△△(被害者)…」となり、被害者が「お奉行様とも知らずご無礼を…」「まさか、金さんがお奉行様だったなんて…」「お奉行様が私達を助けてくれるなんて、滅相もありません」などと言い、平身低頭する。場合によって、被害者(特に親〈または両親を亡くし、義親や育ての人物〉に売られ苦海に身を落されていたり、強欲な人物にコキ使われていたり、盗賊一味の引きこみとなっていたなどの薄幸な女性)が軽微な犯罪を犯している場合、大概「江戸十四方所払い(江戸市中からの追放。重追放より軽い)」「寄場送り」「遠島」などの温情判決を下す。

まれに被害者が自ら「もっと厳しい罰を」や「どうか死罪獄門にして下さい」と申し出るが、遠山が「甘ったれるんじゃねぇ!」「おめぇは死んじゃいけねぇ。嫌な事は忘れて、これからは生きる道を選ぶんだぞ」などと静かに?りつけ諭す時がある。一方、よくある筋として本来は善人の若い町人が出来心で悪事に加担した、もしくは悪党の首領の表の顔が大工の棟梁や親方などで逆らえずやむを得ず加担したが、婚約者に懇願される、あるいは遠山に説得されるなどして改心し、北町奉行所による悪党一味の成敗に協力する。遠山は「お前のおかげで事件は解決した。ただし、加担したことは裁かれなきゃならねえ」などと言い「不届き千万につき死罪を申し渡す」。ここで意味深長に1?2秒間をおいてから「が……」と言葉を継いだところで若い町人が訝し気に頭をあげると慈愛に満ちた顔つきの遠山が情状酌量すべき理由を挙げ、はるかに軽い刑罰である「江戸所払い」を申し渡し、町人は深々と頭を下げる。最後に小声で“金さん”に戻り「○○○と達者で暮らすんだぜ」「○○○を大事にしなよ」「良い○○○になりな」「○○○と幸せにな」「早くいい人を探すんだぜ」などと温かい言葉をかたり、「俺が金さんって事は内緒にしておいてくれよ」などと付け足すこともあるが、必ず「これにて一件落着」でお開きになる。なお、遠山が正体を現しても、一部の子供は引き続き「金さん」や「おじちゃん」と呼ぶが、被害者側の大人(父親(母親)・祖父(祖母)・兄(姉)・親代わりの人物)が「こら、『お奉行様』だろ(でしょ)」や「○○○(被害者の息子(娘)・孫(孫娘)・弟妹・孤児の名前)、『金さん(おじちゃん)』じゃないだろ(ないでしょ)」などと注意した後、遠山自身が「いやいや、『金さん(おじちゃん)』で結構だぜ」などと返されることがある。ごくまれに悲劇的な終焉を迎えることもあるが、概ね以上のような顛末をたどる。

後日、(後期の南町奉行時の遠山が妻帯している場合)自宅で嫁と談笑したり、“金さん”として岡っ引きや行き付けの店の町人などと軽口を叩いたり、被害者のその後が語られたりして番組は終わる。金四郎が「江戸所払い」を命じていた場合には旅姿をした若い町人の男女が映り、「上方に行って出直しやす」と言って金四郎に頭を下げる。前途のある町人が江戸を所払いになって上方以外の土地に向かうことはない。

派生

テレビ東京(本放送当時は東京12チャンネル)では中村梅之助の主演のテレビドラマ『そば屋梅吉捕物帳』を製作している。これは町奉行の遠山景元に代わり、背中に彫り物を入れた瓜二つのそば屋が事件を探ると言うもので奉行と金さんを分離してそれを一人二役で演じるというバリエーション物。また日本テレビ系で放送された中村梅之助主演のテレビドラマ『伝七捕物帳』でも紫房の十手を持つ黒門町の伝七(梅之助)が、「雇い主」であるそっくりの顔の奉行・遠山左衛門尉(梅之助・二役)から指示を受ける場面が何度か登場している。これも放送局の違いはあるものの、梅之助が主役を演じた「遠山の金さん」がベースになっている[4]

また、「悪を裁く立場の者が二つの顔を持つ」というパターンの類型として、さらに極端なバリエーションとしては萬屋錦之介主演のテレビドラマ『長崎犯科帳』が存在する。本質的には必殺シリーズなどと同じいわゆる裏稼業ものに分類される作品であるが、主人公・平松忠四郎は表の顔は長崎奉行でありながらも、その裏で表の奉行の顔では裁けぬ悪を許さず一刀両断してゆく闇奉行という二つの顔を持っている。
作品一覧
映画

片岡千恵蔵主演の東映時代劇シリーズ

1950いれずみ判官 桜花乱舞の巻(東横映画


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