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被写界深度が深い写真 焦点距離18mm(APS-C) 絞り F22被写界深度が浅い写真 焦点距離50ミリ(APS-C) 絞り F1.4 接写リング使用ピンボケの例。
被写界深度(ひしゃかいしんど、英語:Depth of field(DOF))とは、写真撮影において、ピント(焦点)を合わせた距離を中心とした遠近の距離範囲のうちでピントがほぼ合ったように鮮明に見える範囲の広さを指す[1]。
一般的に写真撮影ではピントを合わせた距離に位置する像は鮮明に見え、その距離から遠近へ離れるほど、像は次第に不鮮明となる。被写界深度が深いほどより遠近の広い範囲に亘って像は鮮明に見える。逆に浅いほど鮮明に見える範囲は狭く、遠近に離れた像はボケて(不鮮明に)見えることとなる。 写真撮影の際、レンズを通して被写体のある点に焦点(ピント)(フォーカス)を合わせると,厳密にはその一点にしか焦点はあっていないが、人間の目には、その前後も焦点が合っているように見える。被写界深度とはその範囲をいう。ボケがある程度以下だと、人間の視力ではボケを判別できないことから生ずる。近視の人が、目をすぼめると、文字がはっきり見えるのと同じ原理である[2]。レンズは、絞り値を上げることで、被写界深度を広げられる。被写界深度は絞り値(F値)、レンズの焦点距離、撮影距離(被写体とカメラの間の距離)で決まる。絞り値を自由にコントロールできるカメラでは、この原理を利用し、意図的に絞りを上げることで、広い範囲に焦点の合った写真が撮影したり、逆に絞りを開けて、被写体の前方・後方をぼかしたりして、表現が可能となる。結像位置の手前よりは後方の方が、より被写界深度の範囲は広く、絞りによってその範囲は変化する[3][1]。 右の二つの写真を比較すると、上の写真では近くのバラにも遠くの洋館にも焦点が合っているように見え、焦点が合っている範囲が手前から奥へと広い。このような状態を「被写界深度が深い」または「パンフォーカス」という。 一方、下の写真では花の「シベ」の部分にしか焦点が合っておらず、花びらでさえ奥側と手前側はぼけている。焦点が合っている範囲が狭いのである。このような状態を「被写界深度が浅い」という。 同じ内容を指して被写体深度と言う表記が用いられることがあるが、これは誤用である。また、焦点深度は別の概念で、結像面(例えばフィルム面)側における範囲のことである。 理想的な写真レンズにおいてピントが合っていると言うことは、被写体の位置に点光源があると想定したとき、その点光源から放たれた光が、フィルム面ないしは撮像素子表面においてもただ一点にのみ収束するということである。そのような状態は実現できないのであるが、実用上は仮想的な点光源からの光が結像面上でもっとも強く収束するような条件をもって、ピントが合っていると考える。理想的にピントが合っている状態でも、実際のレンズでは諸収差等のため結像面上での像はぼやけ、絞りの形状が円形であるならば点光源からの光が結像面上ではある円形の範囲に広がる。このように、実際にはピントが合っていてもいなくても点光源からの光が結像面上で結ぶ像は円形となり、この円のことを錯乱円と呼ぶ。錯乱円の大きさはレンズの焦点距離と絞り値に依存し、被写体の位置がピントが合っている場所から離れれば離れるほど大きくなる。 錯乱円の大きさが、フィルムに塗布された乳剤中の感光性物質の粒子の大きさや、撮像素子の画素ピッチよりも小さかったならば、ピントが厳密に合っているのかどうかを撮影された画像から区別することは不可能である。また、撮影された画像を鑑賞する際に、錯乱円の大きさが人間の目で見て点と区別がつかないほどに小さければ、その位置でもピントが合っているとみなしてかまわない。そのような最大の大きさを持つ錯乱円のことを特に許容錯乱円と呼び、フィルムや撮像素子のサイズなどによって異なってくる。ピントが合っている場合、蝶はシャープに見え、あっていない場合はぼやけて見える 以下にさまざまなフィルムフォーマットにおける許容錯乱円の大きさについて典型的に使用される大きさを例示する。ただし、これらはあくまでも典型的な数値であり、大きく引き伸ばすときはこれより小さな数値が要求されるし、用途によってはもっと大きな数値で十分な場合もある。 写真フィルム用フォーマットサイズフィルム 一般に被写界深度はレンズの焦点距離、絞り、許容錯乱円の大きさに依存する。具体的には次のように計算される。 はじめに、その距離の被写体にピントを合わせたとき無限遠が被写界深度の後端ぎりぎりに入るような距離(これを過焦点距離と呼ぶ)を計算する。過焦点距離をH、レンズの焦点距離をf、レンズの絞り値をN、許容錯乱円の直径をcとするとその関係は以下のとおりとなる。 H ≈ f 2 N c {\displaystyle H\approx {\frac {f^{2}}{Nc}}} (以降の計算を単純にするための近似値。正確には H = f + f 2 N c {\displaystyle H=f+{\frac {f^{2}}{Nc}}} )
概要
ピントが合っているとはどういうことか1980年代に流行した被写界深度曲線が刻まれたズームレンズの例。この曲線内に距離目盛りがあれば、ピントが合っていることの目安となる。
フィルムフォーマットごとの許容錯乱円の一覧
フォーマット撮像面サイズ許容錯乱円の直径
小サイズAPS-C22.5mm x 15.0 mm0.019 mm
35mm36 mm x 24 mm0.026 mm
中判64556 mm x 42 mm0.043 mm
6x656 mm x 56 mm0.049 mm
6x756 mm x 69 mm0.055 mm
6x956 mm x 84 mm0.062 mm
6x1256 mm x 112 mm0.077 mm
6x1756 mm x 168 mm0.109 mm
大判4x5102 mm x 127 mm0.100 mm
5x7127 mm x 178 mm0.135 mm
8x10203 mm x 254mm0.200 mm
焦点距離・絞りと被写界深度
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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