運河
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この項目では、船舶の航行のための水路について説明しています。

中国の行政区については「運河区」をご覧ください。

人工的に造られた水を流すための構造物全般については「水路」をご覧ください。

カナール(canal)については「水路」をご覧ください。

火星の地表に見られる溝については「火星の運河」をご覧ください。

アムステルダムの運河イギリスのサマセット石炭運河

運河(うんが、英語: Canal)とは、船舶の移動のために人工的に造られた水路であり、河川・湖沼を利用しているものもある。鉄道同様経路中に、橋梁や隧道なども見られる。産業革命以前は船舶を.mw-parser-output ruby.large{font-size:250%}.mw-parser-output ruby.large>rt,.mw-parser-output ruby.large>rtc{font-size:.3em}.mw-parser-output ruby>rt,.mw-parser-output ruby>rtc{font-feature-settings:"ruby"1}.mw-parser-output ruby.yomigana>rt{font-feature-settings:"ruby"0}騾馬(らば)などが牽引したため、経路に沿って曳舟道(トウパス、towpath、船曳道、牽引路)が設けられている。
概要
長距離運河

運河には河川湖沼を連絡する内陸運河と海洋間あるいは海洋と内陸水路とを連絡する海路運河がある[1]半島を横断する運河としてキール運河地峡(陸の狭窄部)を横断する運河としてスエズ運河パナマ運河がある。海路運河のうち国際条約で原則として自由航行が認められている運河は国際運河と呼ばれる[1][2]。また、内陸運河には河川間を結び水路網を広げるものと、河川に並行して、または河川の通航困難な場所をバイパスを作り、既存の河川水運を改善するものの2つの種類が存在する[3]

また、海をつなぐものや内陸を走るもののほかに、海岸線に沿って走る沿岸運河も存在する。このような運河が建設されたのは、沿岸近くは風向きが変わりやすく海流や地形が複雑なうえ河口から流れ込む水流の影響もあり、船舶の航行が困難な海域であるため、そこを通らず内水面のみで沿岸域をつなぐためである[4]。こうした沿岸運河は、海岸砂州と陸地の間に広がっている細長い水域を利用して建設されることも多い。アメリカのメキシコ湾岸と大西洋岸には、海峡などを運河でつなぎ、外洋に出ることなく沿岸部を航行することができる沿岸内水路がそれぞれ整備されている。マダガスカル東部のインド洋沿岸には、パンガラン運河と呼ばれる全長700qに及ぶ潟湖を利用した運河が続いており、輸送や観光に利用されている[5][6]

ヨーロッパでは各地に運河が張り巡らされており、大切な交通手段として利用されるとともに、人気のあるレジャーのひとつともなっている。運河をめぐるヨーロッパ各国の概況だが、フランスでは運河を回るだけでほぼ一周することができるとされる。一方、イギリスにも多数の運河が存在するが、これらは産業革命時代に馬車に代わる大量輸送手段として盛んに建設された(運河時代)もので、陶器メーカーのウェッジウッドが馬車輸送による陶器の破損を避けるために製品輸送用の運河を造った例などが有名である。イギリスの運河は幅の狭いものが多かったため、ナロウボートと呼ばれる独特の小さな船を多用した。現代史においては、ドイツでは東西に分裂していた時代、西ドイツの航空機が東ドイツ領に囲まれた飛び地である西ベルリンに到達することが容易ではなかった状況などから、西側からの生活物資の大半がハノーファーから運河で運ばれ、貴重な物流網を成していた。
都市運河その他

上記のような遠隔地間を結ぶ運河のほか、海岸や河川沿いに位置する都市の多くは市内に運河を建設しており、交通や物資輸送に大きな役割を果たしていた。網の目のように市内に運河を張り巡らせている都市も多く、なかでもヴェネツィアアムステルダムなどは運河網がとくに発達していた。こうした都市運河は工業化の進展とともに鉄道や道路輸送にとってかわられることが多く、埋め立てられたり運河としての役目を終えたところが少なくないが、先述のヴェネツィアやアムステルダムなどいくつかの都市においては現在でもその運河網が現存し活用されている。日本においても江戸や大坂をはじめとして多くの都市に掘割などの運河網が張り巡らされていたが、明治以後陸上交通に重心が移行するに従い多くが埋め立てられた。

このほか、運河は干拓にも利用されることがある。オランダにおいては11世紀ごろから泥炭地の干拓が進むが、これは泥炭地に排水路を張り巡らして水抜きを行い、残った水路はそのまま運河として輸送路や排水に利用するものだった。泥炭地のほか、海の干拓においても運河は重要な役割を果たし、排水用の風車と運河の組み合わされた光景はオランダの風物詩ともなっている。また、交通用のほかに灌漑などの用水としての機能など、別の機能も併せ持つものも近代以降多く作られ、これらを疎水と称することもある。
運河と船型

各運河は閘門の大きさや運河の幅、深さなどによってそれぞれ通行可能な船の最大サイズが違ってくる。特に重要な運河の場合、その運河を通航できるサイズがそのまま標準の船型となることがある。特に重要な運河通航による船型は3つあり、最も小さいものはカナダセントローレンス海路を通航できるシーウェイマックス(全長226 m、幅24 m、喫水7.92 m)である。次に小さいものはパナマ運河を通航できるパナマックス(全長366m、全幅49m、喫水15.2m、最大高57.91m)である[7]。最大のものはスエズ運河を通航できるスエズマックスであり、喫水20m、幅50mまでとなる。また、スエズ運河にはスエズ運河橋が存在するため高さも条件に入る。一方で、閘門がないため長さは条件とはならない。こうした制限は大型船舶が航行するうえでの障害となり、とくに運河のサイズの小さいセントローレンス海路やパナマ運河において深刻である。最も小さいセントローレンス海路においては世界中の洋上用船舶のわずか10%のみしか航行できないとされる。またパナマ運河においても超大型タンカーや、最大級のコンテナ船は航行できないが、この両船種は効率上の要請から近年大型化が著しく、パナマ運河を航行できない船舶は増加する一方となっている。これを受け、パナマ運河では拡張工事が行われることとなり、これが2016年4月に完成予定であったが、ストライキやコスト超過に関するトラブルの影響で何度か延期され、2016年6月26日に開通した。この拡張後には、パナマ運河を通航できる船舶の最大値は 約 5,000 TEU から 12,000 TEU となり、新パナマックスは以下の通りになった。

全長:366m(+72m)

全幅:49m(+17m)

喫水:15.2m(+3m)

最大高:57.91m(旧パナマックスと変わらず)

特徴
水位差の調整パナマ運河の閘門

運河には、標高差のない2点を結ぶ水平式運河と、標高差のある地点を結ぶ、あるいは途中で標高の高い地点を超える運河の2つの種類が存在する。標高に差のある地形に運河を建設する場合、水位の高低差を調整する仕組みが必要になる。この仕組みとして、閘門インクラインボートリフトなどがある。標高差を吸収する仕組みとして最も一般的なものは閘門であり、そのためこのタイプの運河のことを閘門式運河と呼ぶこともある。

水平式運河においては当然閘門は存在せず、閘門式運河に対してより簡易に船舶を航行させることができる。しかし水位に差をもたせずに高低差を吸収するため、運河橋により低地(低地にある他の運河を含む)の上を渡ったり、運河トンネルを掘って山地をくぐることもある。

運河が閘門式になるか水平式になるかは、建設の際にかかるコストによって異なってくる。全く高低差のない地形であれば当然水平式運河が採用されるが、高低差が存在する場合、山を切り開いて運河を開削したり、運河橋や運河トンネルなどを建設するには莫大な費用が掛かるため、それよりも閘門を連続させたり、水平に進めるところまで水平に建設しておいて船舶昇降機などで一気に高低差を吸収する方が総合的なコストが安く上がる場合があるからである。一方で、閘門を操作するコストは船舶が通行するごとにかかり、また当然ながら閘門の操作は船舶の航行の障害となるため、通行量の多い運河ほど水平式にしたほうが利点が大きくなる。この典型的な例がパナマ運河である。パナマ運河はフェルディナン・ド・レセップスによる計画時には水平式運河であったが、当時の技術力では水平式運河を建設することができず、閘門式の運河となった。しかし通行量の増大によってパナマ運河の容量に限界が訪れたため、第二パナマ運河計画やニカラグア運河計画といった水平式の運河建設計画が次々と持ち上がった。しかし中米地峡の地形は水平式運河を建設するにはいまだ厳しく、結局パナマ政府は既存の閘門式運河を改良することとなった。
閘門詳細は「閘門」を参照

閘門(こうもん)とは、高低差のある水路を閘室と呼ばれる領域に仕切り、船を昇降させる装置のことである。閘室は、水路の前後に開閉可能な扉を有している。まず、その一方のみの扉を開けて船を閘室に導く。つぎにその扉を閉じ、他方の扉側の導水路の開閉によって水位を上昇または下降させる。そして、最後に他方の扉を開けることにより、高低差のある水路における船の行き来を可能にする。閘門はひとつの運河に1個だけとは限らず、むしろ高低差の激しい運河の場合、段階的に船の高度を上げていかねばならないためにいくつもの閘門が連続することが珍しくない。

閘門としてよく知られているものはパナマ運河のものである。また中国には、13世紀にクビライによって築かれた通恵河がある。アメリカ合衆国カナダ五大湖セントローレンス川水系には、スーセントマリー運河ウェランド運河といった閘門式運河がある。


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