連動型地震
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2016年の熊本地震は典型的な連動型地震であった[1]

連動型地震(れんどうがたじしん)とは、複数のプレート間地震海溝型地震)、あるいは大陸プレート内地震活断層地震)が連動して発生するとする仮説である。連動関係にある地震はほぼ同時に発生する場合だけでなく時間差を置いて発生する場合があり[注 1]、時間差を伴う場合も「連動」(広義の連動型)と称することがある[2][3]。また、このような連動関係にある複数の地震は、通常の地震における再来周期より短い時間差で発生する[4]。一方、連動型地震自体の再来間隔は通常の海溝型地震と比較して長期となる特徴がある[5]
概要

プレート境界型地震では特に長大な震源域をもつ超巨大地震が発生することがあり、これは通常は海溝沿いの個別のセグメントで起こっている固有地震が、時として複数のセグメントに渡って連動することで断層破壊が進展していく連動型地震で説明できるとされる[6]。また、海溝型地震・活断層型地震にかかわらず地震の発生には断層のずれ(破壊)が大きく関わっているとする仮説では、連動型地震はこの破壊が固有震源領域に留まらず複数の震源領域(広範囲)に及ぶケースである[7][8]。T.レイおよび金森博雄 (1982) は、世界の沈み込み帯を4つのカテゴリに分類し、そのアスペリティの空間分布の違いから連動型の巨大地震が起りやすい場所と起こりにくい場所があるとする、アスペリティモデルを提唱した[9]。ただし、連動型地震では沈み込みが一定の速さで進むことで固着領域で破壊が生じるとされるアスペリティモデルに当てはめられないケースがあり、例えば後述の東北地方太平洋沖地震では本震あるいは前震の前に断層の沈み込みが起きておらず、本震発生後には再び沈み込みが再開されるといった断続性が確認されている[10]

複数の地震が連続してほぼ同時に発生する場合は、単独地震に比べて震源域が広大であるため巨大地震となる場合が多い[注 2]。また、ほぼ同時に発生した連動型地震では隣接する震源域を破壊していくが[11]、連動関係にある地震に時間差がある場合でもそれらの地震の震源域は隣接するか、重複する傾向にある[4]。なお、連動型地震とは複数の海域が同時に動いたり同じあるいは近接する断層上でずれの範囲が拡大していくことに起因する地震の連動性を指し、本震の震源域(余震域)から離れた場所で地震が誘発される誘発地震(地震の誘発性)とは区別される[12]

マグニチュード (Mw) 9以上を記録した2004年のスマトラ島沖地震や2011年の東北地方太平洋沖地震は複数震源領域における連動型地震であるとする見解がある[4]。また、南海トラフの地震である東海地震東南海地震南海地震は過去の記録や地質調査などから連動して発生する可能性が高いとみられており、さらに千島海溝琉球海溝等における地震でも地質調査や津波のコンピューター・シミュレーションなどにより過去に連動して発生した可能性が指摘されている。
海溝における連動型地震
日本近海
千島海溝「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震」も参照千島海溝の位置(赤線)
千島海溝連動(十勝沖 + 根室半島沖)
北海道太平洋側南東沖の千島海溝では津波堆積物の分析により、過去に十勝沖地震根室半島沖地震が連動することでM9規模の巨大地震が発生した可能性がある[13]産業技術総合研究所(産総研)とアメリカ地質調査所(USGS)は、プレートテクトニクスに基づくコンピューター・シミュレーションにより、連動によるものとみられる巨大津波痕は2500年の間に5回、約500年間隔で残されており、最新のものは17世紀に発生したと発表している[14]。また、北海道大学らの調査により道南の森町で同時期のものとみられる津波堆積物(津波高は推定5m以上)が発見された。このことから従来の十勝沖と根室沖の連動だけでは説明できないとし、震源域は三陸沖北部の青森沖まで達していた可能性があると平川は主張している[15]
1952年十勝沖地震 + 1968年十勝沖地震(三陸沖北部地震)
1952年十勝沖地震 (Mw 8.1) の直後に、1968年十勝沖地震 (Mw 8.2/※正確には三陸沖北部地震に該当) の破壊領域の南端部・三陸沖で地震(余震)活動が活発化した。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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