造園
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ヴェルサイユ宮殿庭園(フランス)キューガーデン(イギリス)

造園(ぞうえん、造苑, landscape architecture)とは、庭園などの空間を造ることである。「造苑」とも表記され、韓国では「造景」としている。私的な空間である庭園や公共的な空間である公園などの緑地/緑空間を土木的な基盤整備し、意匠を植物や水などの自然素材、石等の鉱物資源などによって造ることである。

テーマパークなどの施設から、集落都市の環境改善、自然風景地などにいたるさまざまな空間を対象に、計画デザイン施工管理にまたがる技術体系であり、造園そのものは古代から多くの文明で行われてきたが、職能分化が明確になる近代では、建築土木都市計画などとともに環境づくり、環境デザインの主要分野のひとつを成す。また農学分野の中でも美的側面を重要視する専門領域である。最近では専門領域の区別はあいまいになり、分野間のコラボレーションや役割の入れ替わりなどが起こっている。特に景観の保全や整備に関する研究、計画、デザインなどはどの分野でも行われている。
概要

植物の栽培管理、水辺海辺、山林や里山、広場などの空間、水辺や森林などの空間整備、緑にからんだ都市計画、諸施設の外部空間整備や各種緑化施策、自然環境の保全保護や農空間・田園環境の創出、景観の形成や修正などがある。また諸施設の外部空間等の空間整備や各種緑化施策、自然環境の保全保護や観光農園や棚田などの農空間・田園環境の創出および、それら一連の調査計画?維持管理、景観の形成および修正(修景)に関する分野、植木樹木生産管理、緑を創る植栽基盤整備、農園や園芸のうち家庭園芸やガーデニング、花壇などの展示植栽、園芸療法に関する分野も含まれる。

都市公園整備や観光農園や棚田などの農空間整備と田園環境の創出を始めとする造園資源や公的オープンスペースの確保等、また景観の形成に関する分野についても修景改善、また私的オープンスペースについても各種の助成・規制などの措置が講じられ、環境改善の努力は進められている。目指すべき魅力的な生活空間は、都市では広場自然とオープンスペースを骨格とし、一人一人が異なったライフスタイルを楽しめ、豊かな生活風景を生む構造を持っていることが計画や設計の鍵となっているのである。

日本近代造園史上最初のハンドブックで、東京帝国大学農学部林学科造園学教室一水会における「造園研究会」活動(1931年以後)の成果をもとに約30人の執筆者による『造園ボケットブック』(造園研究会編輯,西ヶ原刊行会発行,目黒書店発売,1939 (昭和14年) では、 第1編 造園材料, 第2編 造園概説(意義,範囲,方法,様式,意匠), 第3編 造園計画(庭園,都市公園,動植物園,学校園,社寺境内,自然公園,国立公園), 第4編 都市計画 地方計画農村計画, 第5編 森林の美的施業, 第6編 造園工学(構造力学,構造設計), 第7編 造園施工, 第8編 造園細部, 第9編 造園管理, 第10 編 造園関係法規, 第11編 雑記(造園教育,現場用語など) と分類がなされている。
造園という言葉

造園という用語については、明治以降、欧米から入ってきたLandscape Architectureの和訳として適用された言葉とされているが、これは1919年に原煕東京帝国大学で行なった講義においてである。今日では従来の庭園や作庭という意味も含めつつ、より広範囲の観念をもたせたものとなった。「造園」の文字は出版書物としては明治26年に小沢圭次郎の著作『公園論』に登場するのが最初であるが、「建築」などの言葉も含め、これらは中国明時代の庭園書『園冶』:yuan yeh にすでにみられる。元来明初、いまより600年前の陶宗儀(字は九成)の<曹氏園地行> の詩の中にあることを陳植が『造園・園林正名論』(北九州工業高等専門学校研究報告、日高一宇訳註,1995年1月30日、第28号別刷)で発表している。

その意味は現代の広義のランドスケープの理解に似て、広い対象空間に用いられている。1901(明治34)年には福羽逸人の講義録に「造苑」の文字が登場し、1911(明治44)年には森?外が、画家出身の作庭家本多錦吉郎の著述物の序文に造園の文字を使用している。なお、上原敬二は著書の中で、「造園」の語は主に庭の関係ある者が「庭園」の代用語として日常用いていたと記している。明治初期東京に農業試験場は2箇所に存在し、その1つは新宿御苑の試験場で、もうひとつ開拓使の試験場が現在の青山学院大学のところに存在したが『東京市史稿』ではこれらを遊園篇に掲載し、伊藤ていじ開拓使が「農園」を造る意味で用いていたとしている。

言葉自体は明治時代にはすでに一般化していた言葉であり、いままで多くの人々によって様々な定義がなされている。「造園」という言葉の定義として、1917年田村剛は、“造園術とは、土地を美しく取り扱う術であり、または自然を享楽せしめる施設とはいえ、同時に他の実用・経済・衛生・保安・教化等の目的を伴ってもあえてさしつかえない"としている。また、1924年上原敬二は、造園学の定義として、“造園学とは、人間生活の上に使用、享楽のため種々の程度において美観と同時に利用の目的を達するよう土地を意匠設計する理論を考究する学術である"としている。さらに、1949年永見健一は、造園を定義して、「造園とは一定の上地の上において、その地形とその上にあるものおよび他から持ち込んだ植物その他色々の材料を組み合せて、これから創造された、または修飾加工して造成せられた一つのまとまった構成であって、それらを一次的目的として人の慰楽・休養・保健・鑑賞等の場たることを期し、第二次的目的として、保安・知育等の助長を図ることを原則とするが、政策的にはこれから経済収益を挙げることを目的とすることを妨げない」としている。

また、「造園」という言葉の英訳"Landscape Architecture"の定義もまた様々であり、1873年アメリカ合衆国のクリーブランド(H.W. Creveland、1814?1900〉は、"Landscape Archltecture"(造園)を「文明進歩の各種の要求に対して、最も便利に、最も経済的に.そして最も優美にするように.ヒ地を編成する技術である」としている。また、アメリカ造園家協会 (ASLA: American Society of Landscape Architects) の定義によると「美学的並びに科学的な理論を活用して、人間の物的環境を改善することである」となっている。


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