琉球列島高等弁務官が制定した布令『通貨』については「通貨 (高等弁務官布令)」をご覧ください。
通貨(つうか、英: currency)とは、流通貨幣の略称で、決済のための価値交換媒体。通貨は、現金通貨と預金通貨に大別され、前者は紙幣・硬貨(補助紙幣)であり、後者は普通預金・当座預金などの決済口座である[1]。
モノやサービスとの交換に用いられる「お金(おかね
)」を、経済用語では貨幣、または通貨と呼ぶ[2]。通貨が無い時代の決済手段とされていた物々交換から、さらにモノやサービスの流動性を高めるために作られた経済形態である[3]。政府は租税の算定に法定通貨を利用する。モノやサービスの価値は、流動的である。出来立てのパンは数時間経ったパンよりも高価であるだろうし、家政婦や理美容等のサービス料金は十分な経験を積んだものとそうでないものとで差があるだろう。また、昔はほとんど価値がなかったものが、逆に骨董品として高い価で取引きされる場合もある。いわゆる「等価交換」に際して、それらの流動的なものを何らかの形で具現化したものが経済の仲介物であり、通貨(お金)となる。
貨幣が定着し流通しだすと、貨幣は通貨と位置づけられ、通貨制度として決まりごとをもつようになる[4]。通貨制度は、各国のマクロ経済政策の運営・貿易・投資に対する規制に大きく関わっている[5]。通貨の信用の裏付けは、国民が働いてモノやサービスを生産する能力に由来する[6]。政府は国民の労働力(の可能性)を国債にして中央銀行で貨幣と交換している[7]。
経済の仲介物としては、「貨幣史」や「通約的な正義としての流通貨幣」に示されるように、それを欲しがる他者が多数存在すれば通貨となりえる。日本のおとぎ話「わらしべ長者」では、様々なモノが交換の仲介物とされる様子が描かれている。政府は通貨を歳費の算定基礎に価値の尺度として用い、また中央銀行に発行や流通の権利を委ね保護し、国民も「唯一無二」の存在として信用することで、その価値が生じる。例えば、全ての国民が一万円札を紙くずだと思えば、その瞬間から一万円札は本当に紙切れとなる[8]。「グレシャムの法則」、「貨幣数量説」、および「通貨発行益」も参照
通貨として、どのような金融商品を含めるかについては、国・時代によって異なるため一義的な決まりはない[9]。狭義には中央銀行などが発行する現金通貨のみを意味する。広義では、現金通貨に加えて、銀行などに預けられている普通預金・当座預金(手形・小切手)などの流動性の高い預金通貨、流動性がやや落ちる定期預金や外貨預金などの準通貨をも含む概念である。「マネーサプライ#統計の種類」も参照
本位制度と管理通貨制度詳細は「本位貨幣」および「管理通貨制度」を参照
古代より一部の場合を除いて、各国において発行される通貨は金や銀などの貴金属を用いて発行されることが多かった(本位貨幣、正貨)。しかし経済の拡大に伴い通貨を発行するだけの貴金属が不足するようになると、貨幣制度の根幹をなす貴金属の通貨を定め、その貴金属にいつでも兌換できることを保障した紙幣を発行することで通貨の流通量を確保するようになった。これが本位制度である。金によってこの本位制度が裏付けられている場合は金本位制、銀による場合は銀本位制とよばれる。この本位制度は1817年にイギリスにおいてソブリン金貨による金本位制が開始されたのが始まりであり、19世紀末には世界の主要国のほとんどが金または銀本位制に移行した。しかし第一次世界大戦がはじまるとほとんどの国でこの兌換は停止され、大戦終結後は各国とも復帰したものの、1929年に起きた世界恐慌によって再び金本位制は機能しなくなり、下記の管理通貨制度へと移行した。その後第二次世界大戦が終了するとブレトン・ウッズ協定によって金1オンスを35アメリカドルとし、世界各国がそのドルにペッグするという変則的な金本位制(金・ドル本位制)が成立したが、これも1971年8月15日にアメリカのリチャード・ニクソン大統領がアメリカ・ドルと金との兌換停止を発表した(ニクソン・ショック)ことで崩壊し、以後各国は完全に管理通貨制度へと移行した。