逆境ナイン
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『逆境ナイン』(ぎゃっきょうナイン)は島本和彦による漫画、およびそれを原作とした映画。「GK9」とも略される。

月刊少年キャプテン』(徳間書店)において、1989年から1991年まで連載された。全28話。

スポ根とギャグの要素を含む野球漫画。主人公「不屈闘志」と全力学園野球部が次々と襲いかかる逆境に立ち向かい、甲子園優勝をめざす姿を描く。男の生きかた・男らしさを追求した内容と、徹底して常識外れな展開が特徴。

続編に『ゲキトウ』がある。また、作者自身が同人誌でパロディ版や番外編を数作発表している。

2005年に実写映画化。またノベライズ小説『平成の偉人伝シリーズ 試験に出る不屈闘志物語 112対0からの大逆境克服』が発行された。
概要

主人公不屈闘志ら全力学園野球部に次々と襲い掛かる、あまりにも非現実的な「逆境」に対し、不屈らがその名通りの不屈の闘志で乗り越えていくという、「熱血」漫画。

いわゆるスポ根漫画のパロディとして、野球漫画の枠を超えるナンセンスで破天荒な展開が多く、作者自身は本作品を「ギャグ漫画」と定義している。一方で作中人物たちはこうした状況展開にきわめて真剣に向き合っており、(それ自体がギャグ表現でもあることとは別に)読者が登場人物に感情移入して読めば純粋な熱血物語として機能するという側面も持っている。

物語の展開軸としては、スポ根路線を見せつつも、同時に少年漫画のバトル系作品でよく見られ、読者から批判の対象となる「パワーインフレ」と呼ばれる現象を、ある意味では逆手にとった展開を見せる。逆境が訪れる度に主人公が「これが逆境だ!!」と叫び、その度にパワーアップや新魔球を会得する展開になり主人公が強化される、あるいは主人公が驚異的な能力を発揮して逆境を跳ね返すのは、バトル漫画の「パワーインフレ」と何も変わらないが、本作品ではこれを見事にギャグとして昇華させている。

登場人物がしばしば放つポジティブでインパクトのある名ゼリフは、人生訓的で多くの場面に引用しうるもので、こうした教訓的表現は後の多くの作品にも引き継がれ『炎の言霊』シリーズのような漫画表現を離れた名言集として纏められるほどの展開を見せ、また『大熱言』のように人生訓そのものを描いた作品を生む土壌ともなった。連載期間中には本作品に関連した活字企画「逆境人生相談」も併載されており、ここでも作者自身が登場人物同様に力強く男らしい精神論で読者の人生相談に答えている。この時の漫画的な作者像が同時期の『燃えよペン』にも反映され、また後年のラジオ・パーソナリティとしてのキャラクター性に大きな影響を与えた。

単行本は少年キャプテンコミックス全6巻(徳間書店刊、絶版)、ワイド版の少年キャプテンコミックススペシャル全4巻(徳間書店刊、絶版)、復刻版の小学館サンデーGXコミックス全6巻(小学館刊)がある。小学館サンデーGXコミックス版の第6集には初回限定の「特別版」があり、作者原案によるオリジナルエピソードを含むドラマCDが同梱されている。

続編として同作の十数年後を舞台に、妻子持ちとなった主人公不屈闘志が怪我で引退したプロ野球にカムバックする姿を描く『ゲキトウ』がイブニング講談社)に連載されたが、中途打ち切りとなっている。作者は、大量の声があれば復活すると発言している。

実写映画としてアスミック・エースエンタテインメントによる『逆境ナイン』が2005年7月2日、全国の劇場にて上映開始された。

ノベライズ版に『平成の偉人伝シリーズ 試験に出る不屈闘志物語 112対0からの大逆境克服』(藤谷治著・2005年小学館刊)がある。

2008年には三洋物産から本作品とタイアップしたパチスロが登場している。
登場人物

※声優名はドラマCD版
全力学園高等学校
不屈闘志(ふくつ とうし)
櫻井孝宏 / 演:玉山鉄二5番ピッチャー、背番号1、3年生主人公。左投右打。全力学園高校野球部キャプテン。その名の通り不屈の闘志を持ち、逆境に追い込まれるたびその力を増大させる。部員を強引なまでに引っぱる熱血漢だが、その性格上、窮地で励まされると弱気になり、逆に諦めの言葉に反応し、打ち消そうと奮起する(月田曰く「あまのじゃく」な)一面もある。地区大会3回戦前後、誤解からキャプテンの座を降ろされ補欠となる(背番号10)が、地区大会準決勝戦でピッチャーに返り咲く。襲いかかる逆境の中で「男球」「全力スペクトル」などの魔球を生み出した。本選決勝直前に記憶喪失になるが、さらに男として大きく成長する。初期ではノックのシーンや、夢の中では左打だったが、駄麻下商業戦から右打に変わっていた。鉛筆は右手、食事の際は左手を使う描写があるため、両利きだと思われる。作中に不屈が4番を打った描写は無いが、なぜか終盤「ピッチャーで4番」と発言した。(新装版では「ピッチャーで5番」と修正されている)
サカキバラ・ゴウ
声:池田秀一 / 演:田中直樹顧問「特に実践の歴史を得意とする」社会科教師。野球については門外漢だが、不屈に実践的かつ豊富な人生訓知識をかわれ部長として指名される。校長も一目置く男だが、酒を飲むと手が付けられない酒乱。大会中に強力学園に転勤となり、全力ナインのライバルとして立ちふさがる。後に、本作品の担当編集者はこの名前をもじって自分のペンネームとし、ササキバラ・ゴウとして評論家デビューした。映画では榊原剛の名で登場。設定も「元日本代表。ただしセパタクローの」という触れ込みだった。
校長
声:内海賢二 / 演:藤岡弘、全力学園の校長で、生徒に対して常に妥協と怠惰を許さない。たるんだ野球部に廃部を突きつけるが、逆境をものともしない不屈の闘志にほれ込み、その成長を厳しくかつ暖かく見守る。
ハギワラ・リョウ
声:諏訪部順一控えピッチャー、背番号11、2年生親の都合で黒風高校から転校(当時はキャプテン、ピッチャーで背番号1)。右投右打。黒風高校時代に全力ナインと練習試合で熱戦を繰り広げ、以来不屈と意気投合する。侠気あふれる男だが、けんかっ早く、時には不屈以上に無茶な行動を取って周囲をひやひやさせる。カント曰く「不屈に匹敵する速球の持ち主」であり、不屈の不在時にはピッチャーを務め好投。本選決勝では男球を身に付けた。不屈補欠時代は背番号1番。月田明子とは中学時代の同級生で友達以上恋人未満の関係。家が貧しいせいか、荒っぽい性格の割りに金銭感覚は堅実。
新屋敷章(しんやしき あきら)
声:伊藤健太郎 / 演:青木崇高1番→2番ショート、背番号6→2番セカンド、背番号4、3年生右投右打。自宅の窓に大々と「恋人募集中!!」と自身の連絡先を貼るなど、野球部きっての好色漢で、野球よりも女性をとるタイプ。しかし不屈とともに熱戦を超える中で、野球魂に開眼していく。
山下鉄男(やました てつお)
声:羽多野渉 / 演:栩原楽人9番→7番、ライト、背番号9、1年生右投右打。小柄で犬顔、関西弁の部のマスコット的存在だが走力は抜群。練習をサボってまでテスト勉強をすることもあったが、それが功を奏して野球部6人が脱落した中間テストを悠々突破したことも。前述の中間テスト後、校内レース対決を挑んできた平と山根に持ち前の走力で勝利し、二人を入部まで漕ぎ着ける。モデルは作者のアシスタント(当時)で、後に「少年マガジン」でデビューした山下てつお。日の出商戦では、気絶した不屈に代わりピッチャーをつとめた。


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