追徴
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刑罰ではない行政処分「没取」(ぼっしゅ、ぼっとり、→「#類似概念」)とは異なります。

この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。

この項目はその主題が法的内容に置かれた記述になっており、そうでない観点からの説明がされていない可能性があります。ノートでの議論と記事の発展への協力をお願いします。(2016年7月)

日本の刑法

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没収(ぼっしゅう)とは、犯罪に関係のある物の所有権を国に移し、国庫に帰属させる刑罰である。日本では、刑法9条・19条に規定されるほか、各種の特別法に規定がある。付加刑であるため、主刑から独立してこの刑罰を単独で科すことはできない。
目次

1 没収に関する刑法総則の規定

1.1 没収の対象物

1.2 没収の要件


2 追徴

3 没収に関する特別規定

4 第三者所有物没収事件判決

5 その他の裁判例

6 類似概念

没収に関する刑法総則の規定
没収の対象物

刑法上、次の物は没収する(刑法19条1項)。没収するか否かは裁判所の裁量に委ねられている、任意的没収である。
犯罪組成物件犯罪行為を組成した物(同項1号)。次号の犯罪供用物件とは、犯罪の実行に不可欠な要素か否かで区別される。偽造文書行使罪における「偽造文書」、凶器準備集合罪などで使用した「凶器」など。

犯罪供用物件犯罪行為に使用し、又は使用しようとした物や道具(同項2号)。殺人罪傷害罪で使用した「凶器」、文書偽造罪で作成に用いられた「印章」や「パソコン」など。

犯罪産出物件(犯罪生成物件)・犯罪取得物件・犯罪報酬物件犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物または犯罪行為の報酬として得た物(同項3号)。犯罪産出物件(犯罪生成物件)とは文書偽造罪における「偽造文書」など、犯罪取得物件は賭博罪における賭博行為で得られた金品など、犯罪報酬物件とは殺し屋が仕事の報酬に得た金銭など。

対価物件犯罪産出物件・犯罪取得物件・犯罪報酬物件の対価として得た物(同項4号)。窃盗罪などにおける盗品の売却利益など。犯罪組成物件・犯罪供用物件の対価(犯行に用いられた凶器を売却して得られた代金など)は、没収対象とはならない。

なお、拘留または科料のみに当たる罪(侮辱罪軽犯罪法違反など)については、特別の規定がない限り、犯罪組成物件以外は没収できない(刑法20条)。

組織的犯罪処罰法、麻薬特例法などにおける没収の対象は「財産」であり、有体物以外の債権等の財産も没収することができるが、刑法19条による没収の対象は有体物に限られる(ただし不動産の没収に関する裁判例は見受けられない)。没収の対象物は社会的危険性・経済的価値のあるものに限られない(東京高判昭和32年5月8日 東京高等裁判所(刑事)判決時報8巻5号116頁は、マッチの軸棒5本を没収した原判決を維持した)。
没収の要件

没収は、犯人以外の者に属しない物に限り、これをすることができる。ただし、犯人以外の者に属する物であっても、犯罪の後にその者が事情を知って取得したものであるときは、これを没収する(刑法19条2項)。
追徴

没収の対象物のうち、産出物件・取得物件・報酬物件・対価物件については、その全部または一部が、費消などによって失われて没収できないときには、その価額を追徴(ついちょう)する(刑法19条の2)。犯罪によって得られた利益を、犯人のもとに残すことは不当だからである。

金銭のような代替物は、没収の対象物となる場合でも、押収または封金等で特定されていない限り、没収の対象物(紙幣等)と犯罪とは無関係の同種物(紙幣等)の区別ができないから、事実上没収できない。そのため、没収できない場合にあたり、追徴を行うことになる(最大判昭和23年6月30日)。

なお、犯罪組成物件や犯罪供用物件の対価については、対価物件の対価と同様に、追徴の対象にならない。
没収に関する特別規定

没収の対象物等については各種の特別規定があり、その中では第三者所有物の没収も広く認められている。

刑法197条の5

賄賂罪に関して、犯人又は情を知った第三者が収受した賄賂の必要的没収を定める(裁判所の裁量によらず、必ず没収する)。

刑事訴訟法491条
没収を言い渡された者が刑の確定後に死亡した場合には、相続財産に対して没収を執行できることを定める。

関税法118条
禁制品輸入罪、密輸貨物運搬罪などに関して、禁制品や密輸品の必要的没収を定める。

酒税法54条4項
無免許での酒類製造罪・同未遂罪に関して、その「犯罪に係る酒類、酒母、もろみ、原料、副産物、機械、器具又は容器は、何人の所有であるかを問わず没収する」旨規定。

麻薬及び向精神薬取締法69条の3
麻薬類所持罪等に関して、犯人が所有又は所持する麻薬又は向精神薬について、必要的没収を定める。ただし、犯人以外の者の所有に係るときは、没収しないことができる(1項)。また、その罪の実行に関し、麻薬又は向精神薬の運搬の用に供した艦船、航空機又は車両は、没収する旨を規定する(2項)。大麻取締法24条の5、覚せい剤取締法41条の8にも同様の規定がある。

銃刀法36条
登録済み銃砲刀剣類の無届け所持罪や虚偽申告罪に関して、「銃砲又は刀剣類で当該犯人が所有し、又は占有するものは、没収する」旨を規定。

組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(組織的犯罪処罰法)
組織的犯罪に関して、その取得財産・報酬財産、資金等提供罪の資金を「不法収益」とし、不法収益の果実・対価等、不法収益の保有または処分に基づいて得た財産を「不法収益に由来する財産」として、没収することを定める。

国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(麻薬特例法)16条ないし18条
薬物犯罪に関して、組織的犯罪処罰法の没収規定の準用を定める。
第三者所有物没収事件判決

第三者所有物没収事件では関税法118条1項の規定(関税法違反罪に関係する物件が第三者の所有である場合にも、その第三者に告知・聴聞の機会を与えることなく、当該物件を没収することができる旨定める)に基づいて没収刑を言い渡した判決が、日本国憲法第29条及び日本国憲法第31条に違反するとした最高裁判所の判決が出された。


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