迷路荘の惨劇
著者横溝正史
発行日1976年6月7日
発行元角川書店
ジャンル小説
国 日本
言語日本語
ページ数496
コードISBN 4041304342
ISBN 978-4041304341(文庫本)
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『迷路荘の惨劇』(めいろそうのさんげき)は、横溝正史の長編推理小説。「金田一耕助シリーズ」の一つ。
2014年3月までに2本のテレビドラマ作品がある。目次 本作の原型は『オール讀物』1956年8月号に発表された短編作品『迷路荘の怪人』で[1]、3年後の1959年に東京文芸社の叢書『金田一耕助推理全集』5巻に収録された際に同題の中編作品に改稿され[2]、これに新たに長編作品として加筆・修正を施して、1975年5月に東京文芸社から刊行されたのが本作である[1]。 本作では『八つ墓村』『不死蝶』と同じように洞窟の中で事件が発生する。本作においては人工に掘らせた地下通路と洞窟が組み合わさっており、犯人がその地下通路を跳梁して殺人を行うところに特色がある。 また、本作で扱われる20年前という過去の事件とそれに関連して起こる現在の新たな殺人事件という設定は、本作以前にも、19年前の殺人事件と現在の殺人事件を扱った『女王蜂』、23年前の殺人事件と現在の殺人事件を扱った『不死蝶』『悪魔の手毬唄』など、多数ある。 明治時代の権臣・古館種人(ふるだてたねんど)伯爵が富士山の裾野に建てた別荘・名琅荘(めいろうそう)は、屋敷内のあちこちにある「どんでん返し」「抜け穴」などの仕掛けや、廊下から廊下へつながる長局の構造などから、いつしか陰口で「迷路荘」と呼ばれるようになっていた。種人伯亡き後、古館家を継いだ子息の一人(かずんど)は、放蕩を尽して破産寸前となり、最後に残った財産が名琅荘であった[3]。 1930年(昭和5年)の秋、一人伯は、後妻の加奈子と彼女の遠縁にあたる尾形静馬の仲を疑い、2人に日本刀で斬りかかり加奈子を斬殺する。さらに、彼は静馬の左腕を一刀のもとに斬り落とすが、静馬に日本刀を奪われ返り討ちにされてしまう。逃亡した静馬の血の跡をたどると、名琅荘の背後の崖にある「鬼の岩屋」と呼ばれる天然の洞窟に続いていた。この洞窟は相当に深く、また手負いの静馬は日本刀を持って逃げ込んだことから、誰もが恐れて静馬を追うものはなく、静馬はそのまま行方不明となった。 一人伯と先妻の子・辰人(たつんど)が跡を継いだが、古館伯爵家は戦後さらに財政が苦しくなり、名琅荘も銀行の抵当流れとなった。新興財閥の篠崎慎吾は名琅荘を手に入れ、さらに莫大な代償と引き換えに辰人の妻・倭文子を妻に迎え入れた。篠崎は、名琅荘の複雑な構造を利用してホテルに改造し、開業準備を進めていた。 1950年(昭和25年)10月16日、真野信也という左腕のない男がホテルを訪れる。真野は篠崎の名刺を持参していたが、篠崎は覚えがない。そして、真野は案内された「ダリアの間」で姿を消す。「ダリアの間」には地下通路に通ずる隠し扉があったが、その隠し扉を知っていたことや左腕がないことから、昭和5年の事件で行方不明になっている静馬が何らかの意図を持って乗り込んできたのではないかとも思われた。2日後の10月18日、篠崎から呼び出された金田一耕助は、ホテル名琅荘を訪れ、ホテルのお披露目会に招待されていた、館の元の持主である古館辰人、辰人の母の弟・天坊邦武、加奈子の弟・柳町善衛、さらには種人伯の代から古館伯爵家に仕える老女・糸、そして篠崎の先妻の娘の陽子と顔を合わせる。 金田一が一昨日の出来事について説明を受けている最中、倉庫の中にある送迎用の馬車の座席の上で辰人の絞殺死体が発見された。辰人の左腕は体に縛られて、服の袖は左腕がない如くブラブラしていた。 翌日、「ダリアの間」の隣の「ヒヤシンスの間」のバスルームで邦武の死体が見つかる。部屋の鍵はマントルピースのお盆の上に乗せられており、密室殺人であった。さらに、女中のタマ子が前夜から行方不明になっていた。 タマ子捜索のため、警察と金田一らが地下通路と「鬼の岩屋」の二手に分かれて探索を行っていると、女の悲鳴が聞こえた。金田一たちが駆けつけると地下通路で鼠に食い荒されていたタマ子の死体が発見され、さらに地下通路の出口である仁天堂で、後頭部を何か堅いもので強打されて瀕死状態の陽子が発見された。陽子は「パパが…」と言い残して意識を失っていた。 ここに至ってようやく金田一は一連の事件の真相に到達する。
1 解説
2 あらすじ
3 登場人物
3.1 名琅荘関係者
3.1.1 古館家および親族
3.1.2 篠崎家
3.1.3 使用人および客人
3.2 地元関係者
3.2.1 警察
3.2.2 医療関係
4 原型作品からの加筆内容概要
5 収録書籍
5.1 中間段階の中編
5.2 当初の短編
6 テレビドラマ
6.1 1978年版
6.2 2002年版
7 脚注
8 関連項目
9 外部リンク
解説
あらすじ
登場人物
金田一耕助(きんだいち こうすけ) - 私立探偵。
風間俊六(かざま しゅんろく) - 土建業者。金田一のパトロンで、篠崎慎吾とも親しい。本作では金田一との電話などでのみ登場し、姿は現さない。
等々力大志(とどろき だいし) - 警視庁警部。本作では東京での調査の協力者として名前のみ登場する。
名琅荘関係者
古館家および親族
古館種人(ふるだて たねんど) - 明治の権臣・元老・伯爵、名琅荘の創始者。1912年(明治45年)に死亡、享年68。
古館一人(ふるだて かずんど) - 種人の息子、伯爵。1930年(昭和5年)に後妻の加奈子と尾形静馬を殺そうとするが、静馬の返り討ちに遭い死亡する。
古館加奈子(ふるだて かなこ) - 一人の後妻。1930年(昭和5年)に一人に殺される。
古館辰人(ふるだて たつんど) - 一人の息子、元伯爵。母は加奈子ではなく父の先妻。旧華族のなかでも有名な美貌のもちぬし。
尾形静馬(おがた しずま) - 加奈子の親戚。1930年(昭和5年)に一人に左腕を切り落とされ、その後一人を殺して行方不明となった。
天坊邦武(てんぼう くにたけ) - 元子爵、辰人の実母の弟。侏儒やビリケンを連想させる、卵型の頭をした短躯肥満型の人物。
柳町善衛(やなぎまち よしえ) - 元子爵、加奈子の弟。フルートの名手。ヘビースモーカー。ルパシカふうの上着を着こなしている。
篠崎家
篠崎慎吾(しのざき しんご) - ホテル名琅荘オーナー。剣道五段。
篠崎倭文子(しのざき しずこ) - 慎吾の妻。先夫は古館辰人。
篠崎陽子(しのざき ようこ) - 慎吾の娘。母は倭文子ではなく父の先妻。
使用人および客人
お糸(おいと) - 種人の妾。名琅荘が篠崎の手に渡った後も、引き続き取り仕切っている。
奥村弘(おくむら ひろし) - 慎吾の秘書。
速水譲治(はやみ じょうじ) - ホテル名琅荘従業員。風間俊六に引き取られた日米混血の戦災孤児。風間から篠崎に預けられた。
戸田タマ子(とだ タマこ) - ホテル名琅荘女中。強い近視だが、眼鏡をかけるのをいやがっている。譲治と恋仲。
お杉(おすぎ) - ホテル名琅荘女中。
真野信也(まの しんや) - ホテル名琅荘の客人。左腕がない。
地元関係者
警察
田原(たはら) - 静岡県警の警部補、富士署管轄区内の捜査主任。