近代能楽集
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近代能楽集
訳題Modern Noh Plays
作者
三島由紀夫
日本
言語日本語
ジャンル戯曲
刊本情報
出版元新潮社
出版年月日1956年4月30日
総ページ数212
ポータル 文学 ポータル 舞台芸術
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『近代能楽集』(きんだいのうがくしゅう)は、三島由紀夫戯曲集。謡曲を近代劇に翻案したもので、国内のみならず海外でも舞台芸術として好評な作品群である[1]。自由に時間空間を超える能楽の特質を生かし、独自の前衛的世界を醸し出しているこれらの作品群は、写実的な近代演劇では描ききれない形而上学的な主題や、純化した人間の情念を象徴的に表現している[2][3][1]

1956年(昭和31年)4月30日に新潮社より刊行されたものには、「邯鄲(かんたん)」「綾の鼓(あやのつづみ)」「卒塔婆小町(そとばこまち)」「葵上(あおいのうえ)」「班女(はんじょ)」の5曲が収録され、1968年(昭和43年)3月25日刊行の新潮文庫版には、「道成寺(どうじょうじ)」「熊野(ゆや)」「弱法師(よろぼし)」の3曲を加えた全8曲が収録された。「源氏供養(げんじくよう)」という9作目も発表されたが、三島が自分の意思で廃曲とした[4][5]

翻訳版はドナルド・キーン訳(英題:Five Modern Noh Plays)をはじめ、イタリア(伊題:Cinque n? moderni)、フランス(仏題:Cinq nos modernes)など世界各国で行われている[6]。.mw-parser-output .toclimit-2 .toclevel-1 ul,.mw-parser-output .toclimit-3 .toclevel-2 ul,.mw-parser-output .toclimit-4 .toclevel-3 ul,.mw-parser-output .toclimit-5 .toclevel-4 ul,.mw-parser-output .toclimit-6 .toclevel-5 ul,.mw-parser-output .toclimit-7 .toclevel-6 ul{display:none}
作品成立・概要

三島由紀夫は少年時代から歌舞伎能楽に親しんでいたが、近代能の創作動機については、明治・大正期の劇作家・郡虎彦の『鉄輪(かなわ)』『道成寺』『清姫』を原作そのままの時代の筋と、ホフマンスタール風なアレンジで近代的一幕物にしていたことからヒントを得たとし[2]、自身の翻案意図との違いについては以下のように説明している。私の近代能楽集は、むしろその意図が逆であつて、能楽の自由な空間時間の処理や、露はな形而上学的主題などを、そのまま現代に生かすために、シテュエーションのはうを現代化したのである。そのためには、謡曲のうちから、「綾の鼓」「邯鄲」などの主題の明確なもの、観阿弥作のポレミックな面白味を持つた「卒塔婆小町」のやうなもの、情念の純粋度の高い「葵上」「班女」のやうなものが、選ばれねばならなかつた。 ? 三島由紀夫「あとがき」(『近代能楽集』)[2]

能は舞台装置がほとんどなく、いわば「の空間」で、何の制限も無しにドラマが展開されるが、三島はその感覚を取り入れ、一般的な近代劇とは異質な独自の新しい演劇世界を設定した[3]

なお、番外編として、1957年(昭和32年)に企画されたニューヨーク上演用に、『卒塔婆小町』『葵上』『班女』の3曲を繋ぐ場面を新たに創作し、構成・加筆して統一的な芝居にした『Long After Love』(邦題:恋を求めて幾年月)という3幕物の戯曲もある。タイトルは、〈恋のずっと後〉と〈恋を慕う〉という二つの意味を兼ねてつけられ、前者の意味は『卒塔婆小町』にあり、後者の意味は『葵上』と『班女』にある[7]。また、『葵上』と『卒塔婆小町』の間にはさむものとして、狂言附子』をアレンジした『附子(ぶす)』もある。この2曲は1957年(昭和32年)10月に創作された[7]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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