輸血
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輸血
治療法
濃厚赤血球(英語版) 製剤はクエン酸リン酸ブドウ糖アデニン(CPDA)溶液の入ったビニール袋に充填されている。
ICD-9-CM99.0
MeSHD001803
OPS-301 code ⇒8-80
MedlinePlus000431
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輸血(ゆけつ、: blood transfusion)とは、静脈内カテーテルを介してドナーの血液をレシピエントに投与する医療処置である[1]
概要

輸血は、失われた血液成分を補うために、さまざまな病状に用いられる。かつては、全血が使用されていたが、現代の医療では、赤血球血漿血小板、その他の凝固因子など、血液の成分のみを使用するのが一般的である。血液製剤は一般的にその量を「単位(Unit)」と呼称される。日本と海外ではその規格が異なっている。日本では全血200mLから1単位の血液製剤、海外では全血450mLから1単位の血液製剤が作られる[2]。すなわち、日本の2単位がおよそ、海外での1単位に相当する[3]。本項では、断りが無い限り国際規格に統一して記載するものとする。輸血は一種の臓器移植であり、血液を提供する側はドナー(供血者)、提供される側はレシピエント(受血者)と呼ばれる。赤血球(RBC)はヘモグロビンを含み、体内の細胞に酸素を供給する。白血球は輸血にはあまり用いられないが、免疫システムの一部であり、感染症と戦う役割を持つ。血漿は血液の「黄色っぽい」液体部分で、緩衝液の役割を果たし、タンパク質や体全体の健康に必要なその他の重要物質を含んでいる。血小板は血液凝固に関与し、体内の出血を防ぐ。

血液型は一般的には赤血球の表面抗原の分類を意味し、A型、B型、AB型、O型の4種に分類される[4][注釈 1]。さらにRH分類法により、これら4種それぞれがRH(+)、RH(-)に分類される[4]。これらの分類以外のまれな血液型(英語版)もある[4]。血液型が適合しない輸血は赤血球の破壊、すなわち溶血を引き起こす。不適合輸血を回避するため、緊急時以外は受血者にはあらかじめ、血液型判定抗体スクリーニング、そして交差適合試験を行う。緊急時はO型のRH(-)型の血液が投与される。

血液は体外で速やかに凝固するため、歴史上、初期の輸血は供血者から受血者に対して、血管同士を吻合するか、何らかの器具を介して送り込む直接輸血が行われていた[5]。後年、血液を体外で凝固させずに保存する技術が開発されいったん体外に血液を取り出してから、輸血する間接輸血が行われるようになった。このための血液の貯蔵・供給施設が血液バンク(英語版)である。

血液型不適合輸血の副作用は致死的でありながら、血液型が存在することは長年知られず、輸血は賭博的な医療行為であった。カール・ラントシュタイナーによって、20世紀初頭にO、A、B、AB型の4種の血液型が発見された後、輸血の安全性は飛躍的に向上した。.mw-parser-output .toclimit-2 .toclevel-1 ul,.mw-parser-output .toclimit-3 .toclevel-2 ul,.mw-parser-output .toclimit-4 .toclevel-3 ul,.mw-parser-output .toclimit-5 .toclevel-4 ul,.mw-parser-output .toclimit-6 .toclevel-5 ul,.mw-parser-output .toclimit-7 .toclevel-6 ul{display:none}
輸血の種類詳細は「血液製剤」を参照新鮮凍結血漿の輸血バッグ

全成分をそのまま輸血する「全血輸血」、赤血球、血小板、血漿成分および凝固因子などの成分毎に分けた「成分輸血」がある[6]。血液由来感染症の防止及び献血された血液の有効利用の観点から今日では「全血輸血」は行われない[7]。成分輸血には以下の製剤がある[8]

濃厚赤血球(英語版): 略称はRBC(: Packed red blood cells)。旧略称はRCC(Red Cells Concentrates)又は MAP(Mannitol Adenine Phosphate)[9][10]等。

新鮮凍結血漿(英語版): 略称はFFP(: Fresh Frozen Plasma)。

濃厚血小板(英語版): 略称はPC(: Platelet Concentrates)。

他に、アルブミン(英語版)、クリオプレピシテート(英語版)、免疫グロブリン(抗体)など。
適応輸血は点滴から投与される。献血された血液は直後に保存処理される。点滴セットに接続された輸血バッグ

歴史的には、ヘモグロビン濃度が10g/dLを下回るか、ヘマトクリット値が30%を下回ると、赤血球輸血(英語版) が考慮されてきた[11][12]。 輸血1単位ごとにリスクが伴うため、現在では、それよりも低い7?8g/dLのヘモグロビン値下限が通常使用されており、転帰も良いとされている[13][14]。出血していない入院患者に対しては、1単位の赤血球輸血がよく行われ、この治療後に、症状やヘモグロビン値を再評価する[13]酸素飽和度の低い患者は、より多くの輸血を必要とする可能性がある[13]。 より重度の貧血に対してのみ輸血を使用するという勧告的注意は、多量の輸血を行うと転帰が悪化するというエビデンスによるところもある[15]胸痛息切れなどの心血管疾患の症状がある患者に対しては、輸血を考慮してもよい[12] 。 他の血液製剤の適応は凝固障害への新鮮凍結血漿(英語版)や血小板減少への濃厚血小板(英語版)などである[16]
手技輸血を行っている状況のイラスト
献血の供給源詳細は「献血」および「売血」を参照

輸血される血液の供給源には、レシピエント自身(自己血輸血)と、それ以外の人(同種間輸血)がある。後者が前者よりもはるかに多い。他人の血液を使用するには、まず献血からはじまる。献血は、静脈から全血として提供され、抗凝固剤を混和される。先進国では、供血者は通常、レシピエントに対して秘匿されているが、血液バンク(英語版)に保管されている血液製剤は、献血、検査、成分分離、保管、レシピエントへの投与という全サイクルを通じて、常に個別に追跡可能である。これにより、輸血に関連した疾病感染や輸血反応が疑われる場合の管理や調査が可能になる。

研究によると、献血の主な動機付けは社会貢献(利他主義、無私、慈善など)である傾向がある一方、主な阻害因子には恐怖、不信感[17][18] 、あるいは歴史的文脈における人種差別意識などがある[18]

世界で集められた1億1,850万件の献血のうち、40%は世界人口の16%が住む高所得国で集められている[19]。低所得国では、輸血の最大54%が5歳未満の子供に投与されている[19]。一方、高所得国では、最も頻繁に輸血される患者グループは60歳以上であり、すべての輸血の最大76%を占めている[19]。2008年から2018年にかけて、合計で79カ国が、血液供給の90%以上を自発的な無給献血者から集めている[19]。しかし、54カ国では、血液供給の50%以上を家族/代替ドナーまたは有償ドナーから集めている[19]
献血の処理と検査

献血された血液は通常、特定の患者集団での使用に適するように、採取後に処理される。採取された血液は、遠心分離によって赤血球血漿血小板、アルブミン(英語版)タンパク質、凝固因子濃縮物、クリオプレピシテート(英語版)、フィブリノゲン濃縮物、免疫グロブリン(抗体)などの血液成分に分離される。血漿や血小板はアフェレーシスと呼ばれるより複雑なプロセスを経て、個別に献血することもできる[20]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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