転覆_(鉄道車両)
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1934年9月21日、室戸台風による東海道線瀬田川橋梁での転覆の様子

鉄道車両における転覆(てんぷく、: Overturning)とは、何らかの原因により車両が大きな力を受けて、車両が横転することである[1]脱線を経て転覆に至る二次的な転覆と、強風などにより脱線を経ずに直接転覆に至る一次的な転覆がある[2]
概要

何らかの原因により鉄道車両に著しい横方向力が加わることで、片側の車輪が浮き上がり、ついには、車両は横転までに至る。原因としては、強風による風圧力、曲線通過時の速度超過による遠心力などがある。このように車両が横転することを転覆と呼ぶ。

社会一般において脱線と転覆を同義として使用される場合があるが、脱線と転覆は発生メカニズムや原因が異なる場合もあるので工学的には区別して扱われる[1][3]。例えば、脱線のメカニズムは車輪のフランジレールを乗り越えて車輪がレールからずれ落ちる現象として説明されるが、転覆のメカニズムとしては、強風による風圧力や曲線通過時の速度超過による遠心力などのような著しい荷重が負荷すれば、必ずしも車輪がレールからずれ落ちる順序を踏まなくても車両の横転まで至り得る。ただし、このような転覆が発生した場合も、結果的に横転した車両は線路を逸脱した状態になるため、日本鉄道事故等報告規則などでは列車脱線事故に分類される。また、脱線によって車両が軌道から逸脱した結果、二次的に横転・転覆する場合もある[3]
要因

転覆の要因として以下の原因が挙げられる。実際の現象では、単一原因でなく、複合的原因により引き起こされる場合も想定される。
強風による風圧力

@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}台風などによる強風は転覆事故の要因の一つである。特に問題とされるのが横風と呼ばれる鉄道車両の横方向からの風である。風を受ける表面積が大きいため転覆にいたるような大きな力を発生し得る。日本国内において、強風が原因と推測されている転覆事故としては、JR羽越本線脱線事故などが挙げられる[要出典]。
曲線通過時の速度超過

曲線や分岐器などを通過する際などに、予め設計・設定されている制限速度以上の速度で通過すると、車両に多大な遠心力が負荷して、安定限界を超えて転覆する原因となり得る。軌道の曲線部では多大な遠心力が発生しないように内外のレールに高さの差(カント)を設けており、遠心力とカントによる向心力の差を超過遠心力、発生する加速度を超過加速度と呼ぶ[1]。通常の曲線通過速度は、超過加速度が乗り心地に悪影響しないように設定されている。日本国内において、曲線通過時の速度超過が原因と推測されている転覆事故としてはJR福知山線脱線事故などが、分岐器通過時の速度超過が原因と推測されている転覆事故としては関西線平野駅列車脱線転覆事故などが挙げられる[要出典]。
その他

その他の要因としては、地震による軌道の振動や[4]蛇行動、通り狂いなどによる車両の著大な左右振動なども転覆に寄与すると考えられる[要出典]。
転覆限界の解析
静的解析

転覆を起こす限界の走行速度や風速を定量的に予測するために車両運動解析が行われてきた。簡便な解析の1つとして車両に働く外力の静的つり合いに基づく静的解析がある。すなわち、下図のように転覆に関わる車両のローリング回りの外力のつり合いを考えて、片側の車輪の輪重が0となる限界を予測する方法である。静的解析の場合は比較的に容易に計算式を導出できるため、特別な解析ソフトを用意しなくても定量的な予測ができる利点がある[5]。日本国内で利用されている静的解析方法の例を以下に示す。
国枝式国枝の式における転覆の車両モデル

1972年、鉄道技術研究所の国枝正春より、車両のローリング回りの静的つり合いに基づき、横風による車両に負荷される風圧力、車両の左右振動を見込んだ振動慣性力、曲線通過時の超過遠心力による輪重減少率の予測式が提案された[6]。この式は国枝の式または国枝式と呼ばれる。右辺の第一項が超過遠心力に関する項、第二項が振動慣性力に関する項、第三項が横風風圧力に関する項である。風向きが逆の時は、第二項と第三項をマイナスにとる。この計算モデルで輪重減少率Dが1に達したときが、車両片側の車輪が浮き始めるとき、すなわち転覆が開始するときと考えられる。 D = 2 h G B ∗ G ( v 2 R g − c G ) ± 2 h G B ∗ G ( 1 − μ 1 + μ h G T h G B ∗ ) α y ± h B C ∗ G ρ u 2 S C Y W {\displaystyle D={\frac {2h_{GB}^{*}}{G}}\left({\frac {v^{2}}{Rg}}-{\frac {c}{G}}\right)\pm {\frac {2h_{GB}^{*}}{G}}\left(1-{\frac {\mu }{1+\mu }}{\frac {h_{GT}}{h_{GB}^{*}}}\right)\alpha _{y}\pm {\frac {h_{BC}^{*}}{G}}{\frac {\rho u^{2}SC_{Y}}{W}}} … (1)


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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