転炉
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転炉(てんろ、converter)は、製鉄所等の設備の1つでなどの金属精錬専用のである。

回転できる炉(rotator)だから「転炉」というのは本来の意味ではなく、銑鉄に転換する炉、つまり「転換炉」(converter)に由来している。転炉による精錬法の発明者の1人のヘンリー・ベッセマー(Henry Bessemer, 1813-1898)が使い始めた言葉である。英国シェフィールドの博物館にあるベッセマー転炉
製鋼用転炉
概要

製鋼用転炉は製鉄所、特に鉄鉱石を溶解して銑鉄を作る高炉工程、銑鉄を処理して鋼鉄にする転炉工程、できた鋼鉄を最終製品の鋼板や鋼材にする圧延工程からなる、銑鋼一貫製鉄所の設備の一つである。

鉄の性質は、含まれる炭素の量で大きく変わる。鉄鉱石を溶解して直接取り出した炭素が多い銑鉄は、もろくて可塑性がなく、叩いたり、曲げたりすると割れてしまう。もろい銑鉄から炭素を除去すると強靭な鋼鉄となって可塑性を持ち(靱性が高まり)、曲げたり、延ばしたりの加工が可能になる。転炉は、銑鉄から炭素を除去して鋼鉄にするための設備である。

高炉で鉄鉱石を還元することによって産出された銑鉄は、溶銑(溶融銑鉄)のまま「トーピードカー(混銑車)」または「溶銑鍋台車」という特別な貨車で溶銑予備処理(不純物を分離しやすくする前処理)した後、転炉に運ばれる。転炉で溶銑は炭素を除去され「溶鋼」(溶融鋼鉄)へと転換される。転炉が一回の工程で精錬する鋼はおおよそ200トンから300トンである。製鉄所の製造ロットの基本は転炉の処理能力で決まる。

転炉工程が終了した溶鋼は、さらに硫黄などを取り除いたり合金元素の添加などで成分を微調整する二次精錬を行った後、鋼片として固めるための連続鋳造工程へと運ばれる。
転炉の役割

製鋼過程の例
鉄鉱石

高炉 - 鉄鉱石から銑鉄を取り出す

溶銑予備処理 - 不純物を酸化させる

転炉 - 不純物を取り除き鉄鋼にする

二次精錬 - 成分を微調整する

連続鋳造 - 一定の形の半製品をつくる

圧延 - 半製品を加工して製品にする

出荷

転炉の役割の1つは、溶銑中にある炭素を取り除く脱炭である。高炉で使われる還元剤は、コークス中の炭素および一酸化炭素ガスなので、還元と同時に浸炭が起こってしまい、高炉で得られる銑鉄は約4 %の炭素を含む。転炉内の銑鉄に空気や酸素を主体とするガスを吹き付けると、銑鉄に含まれる炭素が燃えて失われ、溶鋼へと転換される。

また、もう1つの重要な役割は銑鉄に含まれる不純物の除去である。転炉内に吹き付けた酸素は、溶銑中にあるケイ素リンマンガンなどと反応して、それぞれ二酸化ケイ素 SiO2 やリン酸イオン PO43? を生成する。比重の違いのため、不純物を含んだスラグは溶鋼の上に浮かぶ。このようにして、スラグと溶鋼を分離できる。その後、スラグを除去することによって、銑鉄に含まれていた不純物をまとめて除去できる。

転炉内で起こる主な酸化反応式は以下のとおりである。

炭素の除去 C + 1 2 O 2 ⟶ CO {\displaystyle {\ce {C + {\frac {1}{2}}O2 -> CO}}} C + FeO ⟶ CO + Fe {\displaystyle {\ce {C + FeO -> CO + Fe}}} C + O 2 ⟶ CO 2 {\displaystyle {\ce {C + O2 -> CO2}}}

ケイ素の除去 Si + O 2 ⟶ SiO 2 {\displaystyle {\ce {Si + O2 -> SiO2}}} Si + 2 FeO ⟶ SiO 2 + 2 Fe {\displaystyle {\ce {Si + 2FeO -> SiO2 + 2Fe}}}

リンの除去 P + 3 2 O 2 − + 5 4 O 2 ⟶ PO 4 3 − {\displaystyle {\ce {{P}+{{\frac {3}{2}}O^{2-}}+{\frac {5}{4}}O2->PO4^{3-}}}} P + 3 2 O 2 − + 5 2 FeO ⟶ PO 4 3 − + 5 2 Fe {\displaystyle {\ce {{P}+{{\frac {3}{2}}O^{2-}}+{\frac {5}{2}}FeO->{PO4^{3-}}+{\frac {5}{2}}Fe}}}

マンガンの除去 Mn + 1 2 O 2 ⟶ MnO {\displaystyle {\ce {Mn + {\frac {1}{2}}O2 -> MnO}}}

スラグ内の反応 CaO ⟶ Ca 2 + + O 2 − {\displaystyle {\ce {CaO->{Ca^{2+}}+{O^{2-}}}}} SiO 2 + 2 O 2 − ⟶ SiO 4 4 − {\displaystyle {\ce {SiO2 + 2O^{2-}-> SiO^{4-}4}}} Fe t O ⟶ ( 2 − 2 t ) Fe 3 + + ( 3 t − 2 ) Fe 2 + + O 2 − {\displaystyle {\ce {Fe_{t}O->{(2-2t)Fe^{3+}}+{(3t-2)Fe^{2+}}+O^{2-}}}}

なお、高温になると鉄は酸素と化合しにくくなるので、以下の反応はあまり起こらない。 Fe + 1 2 O 2 ⟶ FeO {\displaystyle {\ce {Fe + {\frac {1}{2}}O_2 -> FeO}}}
転炉の構造

転炉の形は型やセイヨウナシ型である。が取り付けられていて、前後に自由に回転できる。溶銑の注入時や溶鋼の排出時は炉を傾けて、精錬時(反応時)は炉を立てた状態で使用する。このような形はベッセマーが発明した。現在でもほとんど同じ構造で使われている。以下の図では、転炉の底部から空気を吹き込んでいる。このような構造の転炉を底吹転炉という。

転炉の外部は鋼鉄で作られていて、内部は高熱や衝撃に耐える耐火レンガで内張りされている。転炉内の温度は約1600 ? 1800°Cにもなる。転炉内で空気や酸素を主体とするガスを吹き込んだ時、酸化熱が発生するのでの補給は必要ない。転炉で発生する排ガス(転炉ガス)は、排ガスボイラによって発電したり、熱を圧延工程に送るなど再利用している。転炉には溶銑だけでなく、鉄スクラップも少量(総投入重量の5%?10%程度)入れている。また、転炉内の反応が進みすぎて想定温度よりも高くなった場合は、温度を下げる目的で鉄スクラップを少量入れることがある。

溶銑の注入

精錬
赤色の部分は溶鋼。矢印で示す黄色の層はスラグ。以下の画像も同様。

溶鋼の取り出し

製鋼用転炉の種類と歴史


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