軍団_(古代日本)
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軍団(ぐんだん)は、7世紀末(もしくは8世紀初め)から11世紀までの日本に設けられた律令制による国家規模の軍事組織を指す(軍団兵士制)。律令制発足の目的の一つは、この軍団の設立・整備にあった。全国に駐屯地が置かれた。

8世紀末には、政治方針の転換により、必要性の乏しい経済的負担(浪費)とみなされるようになり、一部の国を残してほぼ廃止され、律令制の当初の軍事・経済制度は実質上終焉した。
概説

中央政府(国家)が、律令制の仕組みに基づき、人民から兵士を指名・徴兵し、大規模な集団歩兵戦を想定した軍を整備した。大規模な軍を整備した目的は、に倣った国家体制整備、国外(など)に対抗する軍事力整備、新羅を服属させる政治目的、蝦夷征討などが考えられている。唐や新羅にも対抗および出兵可能とすることは、古墳時代から続く政治方針に基づいたものだった。

民政機構であるとは別立てで組織した。駐屯地は全国に置かれ、個々の軍団は、所在地の名前に「軍団」または「団」をつけて呼ばれた。

8世紀末には、政治方針の転換により、軍団維持の目的が失われた。延暦11年(792年)、この軍団兵士制は一部の国(陸奥国・出羽国・佐渡国・西海道諸国)を残して廃止された。各国で治安維持は、地方軍事力である健児制が支えた。826年には佐渡国・西海道諸国の軍団も廃止された。またその後、軍事力の主体は、さらに地方行政(国衙・受領)へ移行し(国衙軍制)、各国で治安維持を行なった。
歴史
国造軍

古墳時代飛鳥時代の日本の軍隊は歴史学で国造軍と呼ばれ、中央・地方の豪族が従者や隷下の人民を武装させて編成した。7世紀半ばまで続いた。倭・高句麗戦争白村江の戦い663年)へも出征した。
軍団の成立

軍団は大宝元年(701年)制定の大宝律令に規定されているが[1]、いつ成立したかを直接記す史料はない。遅くみる説では大宝令となるが、もう少し早くみて持統天皇3年(689年)の飛鳥浄御原令によるとする説が有力なものとしてある。平時の軍団は国司により管理維持された。

国造軍と比べたときの軍団の特徴は、国家が兵士を徴兵し[2]、軍事組織を維持し、地方民政機構からは分離したことの二点である[3]

兵士を国家が徴兵するためには、個々の住民を記載する戸籍を作成し、戸籍を利用して誰を兵士にするかを決定する必要がある。そのためには戸籍によって人民一人一人を把握できる体制が作られなければならない。戸籍の始まりは天智天皇9年(670年)の庚午年籍なので、これが有力な候補となる。庚午年籍は不十分なものだったとみて、持統天皇4年(690年)の庚寅年籍にあてる説もある[2]

国家が徴兵した兵士は、軍団に編成されることも可能だが、(後の)を単位に部隊をなし、評の役人に率いられていたかもしれない。そういうものを大宝令以降の軍団と同じものと見るのは無理で、評制軍あるいは評造軍と呼ぶべきものとなろう。

軍団成立のもう一つの基準として軍毅の成立や評の関与の有無が着目される理由である。軍隊指揮用具と大型武器を私家におかず郡家(実際には評の役所[注釈 1])に収めることを命じた天武天皇14年(685年)11月4日の詔は、この時期に軍事指揮が評に握られていたことを推定させる有力な証拠である[4]。それ以降となると、飛鳥浄御原令と大宝令が有力候補となる[5]

机上の計算上の数字ではあるが、当時の日本の人口が約400万前後とされている中で最大20万人程度動員が可能であったとされている。その背景には前述のように国造軍(もしくは評造軍)が白村江の戦いで大敗したことによる衝撃が軍防令制定及び軍団の成立まで至る軍事改革の直接のきっかけであり、軍団自体の編成も唐あるいは新羅が日本に侵攻してきた場合に備えることが念頭に置かれていたからだと考えられる。しかし、現実問題として唐や新羅の日本への侵攻は発生せず、反対に日本からの新羅への侵攻も計画は立案されても現実化されることはなかった。更に国内でも隼人征討蝦夷征討藤原広嗣の乱恵美押勝の乱のような内乱はあったものの、国家の存立に関わる規模の事態には至らなかった。つまり、当時の必要よりも過大な軍事力を保持することになったと言える。また、この体制を維持するためには相応の財政負担を要し、人民は実際の兵役と納税の両面で大きな負担を強いられた。このため、平時から大規模兵力を備え、戦時に即応できるという律令制における軍事体制の理想は長期的に維持するのは難しかったと言える[6]
廃止

延暦11年6月(792年)、桓武天皇は現状との乖離が進んだ律令制を再建するため大規模な行政改革の一環として、陸奥国出羽国佐渡国西海道諸国を除いて軍団を廃止、代わって武芸に秀でた者を選抜する健児制を導入した。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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