軍人恩給
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この項目では、近代社会の制度について説明しています。武家社会の制度については「恩給 (武家社会)」をご覧ください。

この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。Wikipedia:法律に関する免責事項もお読みください。

恩給(おんきゅう)とは、恩給法大正12年法律第48号)に規定される、官吏であったものが退職または死亡した後本人またはその遺族に安定した生活を確保するために支給される金銭をいう。なお、地方公務員については各地方公共団体が定める条例(恩給条例など)により支給され、退隠料と称されることもある。目次

1 恩給の歴史

2 恩給の区分と種類

3 恩給の支給

4 共済年金などとの関係

5 旧制度の恩給

5.1 恩給の種類

5.2 恩給受領権者および恩給額


6 参考文献

7 関連項目

8 外部リンク

恩給の歴史

近代恩給制度は1875年の海軍退隠令及び1876年10月23日の陸軍恩給令、1883年9月11日の海軍恩給令(海軍隠退令を廃止)に始まり、1884年1月4日には官吏恩給令が制定され、同時に太政官に恩給局が設置された(太政官達。15年以上在勤者に恩給)。この他にも1882年には警察官、1890年には教員に関する恩給制度が制定されているが、当初は部署によってバラバラに恩給制度が制定されたために複雑になってしまった。そのため、陸軍恩給法・海軍恩給令を統合し1890年6月21日軍人恩給法が公布され、1923年恩給法が制定され、制度の一本化が図られた。同法では複雑な恩給の体系を普通恩給・増加恩給・一時恩給・傷病賜金・扶助料・一時扶助料に整理してその総称として恩給と規定した。また、「公務員及之ニ準スヘキ者並其ノ遺族ハ本法ノ定ムル所ニ依リ恩給ヲ受クルノ権利ヲ有ス」(第1条)とする恩給権の概念が形成された。ただし、一部(官業部門など)に恩給の対象外の政府職員がおり、その該当者に対しては官業共済組合が組織され、後に社会保険制度理念を基軸とする各種共済組合制度の元となった。だが、昭和初期の不況の中で恩給が保証された公務員に対する批判(「恩給亡国論」)に対して1933年の恩給法の改正が行われて恩給支給の抑制が図られた。

1946年、連合国最高司令官指令(勅令第68号)により、重症者に係る傷病恩給を除き、旧軍人軍属の恩給は廃止されたが、国会前座り込みを含む彼らの粘り強い運動の結果、1953年、1月17日閣議で軍人恩給の復活500億円を決定し、8月1日恩給法改正公布され、即日施行され、法律第155号として復活した。その後、公務員共済制度に移行(国家公務員1958年地方公務員1962年)したため、恩給法は移行時点で既に退職していた公務員(旧軍人・軍属を含む)を対象とする法令となった。

なお、国民年金制度が誕生するのは1959年のことである。
恩給の区分と種類

区分

文官恩給

軍人恩給

都道府県知事裁定恩給

恩給法第2条では、恩給の種類として次のようなものがある。

年金方式による恩給

普通恩給

増加恩給

扶助料


一時金方式による恩給

傷病賜金

一時恩給

一時扶助料


恩給の支給

恩給の支給については、恩給法をはじめ恩給条例などに規定されている。
共済年金などとの関係

1958年と1959年国家公務員共済組合法1962年地方公務員等共済組合法の改正に伴い、公務員(国家公務員・地方公務員)については共済組合の共済年金などが支給されることとなり、恩給については原則としてすでに恩給の受給権が発生している者に対し支給されるだけである。
旧制度の恩給

恩給の支給に関する規定には、恩給法、恩給給与規則(大正12勅令367号)、恩給給与細則(大正12勅令369号)、年金恩給支給規則(大正12逓信省令92号)などがあった。
恩給の種類

恩給法によれば、恩給には普通恩給、増加恩給、一時恩給、傷病賜金、扶助料および一時扶助料である。うち普通恩給、増加恩給および扶助料は年金であり、一時恩給、傷病賜金および一時扶助料は一時賜金である(2条)。

また恩給は、次の2つに分けられることもある。すなわち、

(1) 退職公務員への恩給、すなわち退隠料 - 普通恩給、増加恩給、一時恩給、傷病賜金など。

(2) 退職公務員の遺族への手当、すなわち遺族扶助料 - 扶助料および一時扶助料。
恩給受領権者および恩給額

(1) 普通恩給を受ける権利を有する者は、文官、武官、教育職員(公立の学校および図書館の職員など)、警察職員、監獄職員および待遇職員(官国幣社の神職、判任官以上の待遇を受ける監獄の教誨師、教師など)である。

普通恩給は、原則として、文官在職15年以上、武官在職11年以上、教育職員在職15年以上で、失格原因なくして退職した者に支給される。

そのほか、それらの公務員が公務のため傷疾を受けまたは疾病にかかり、不具廃疾となり、失格原因なくして退職したときは、法定の在職年限に達しなくても普通恩給を支給する(46条1項)。

在職年限が上記法定の年限に達しても懲戒または懲罰処分によって退職した者または在職中禁錮以上の刑に処せられて失官した者は、失格原因による退職者とみなされる。

それはその失格事由の起った時期と相連続した在職期間について恩給を受ける資格を喪失する(51条)。

文官、教育職員、監獄職員および待遇職員の受ける普通恩給の年額は、退職当時の俸給年額の3分の1ないし2分の1である。

文官、教育職員および待遇職員の普通恩給の年額は、在職15年以上16年未満に対しては退職当時の俸給の150分の50に相当する金額とし、15年を増すごとにその1年に対し退職当時の俸給年額の150分の1に相当する金額を加えた額とする。在職40年を超える者に支給する恩給年額を定めるには、その在職を40年として計算する。公務のため傷疾を受けまたは疾病にかかり、不具廃疾となり、失格原因なくして退職した者に支給する普通恩給の年額は、在職15年の者に支給する普通恩給の額と同じである。


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