車軸藻類 (しゃじくもるい)、シャジクモ類は、水草のような姿をした大型の藻類である。輪生する小枝 (車軸藻の名の由来) や、節と節間の繰り返しからなる特徴的な体、極めて複雑な生殖器官をもつ。多くは淡水止水域に生育し、特に湖沼では比較的深い水深まで分布している。水質汚濁などによって絶滅危惧種となっているものが多い。シャジクモ、ホシツリモ、ヒメフラスコモなど6属400種ほどが知られる。
先端成長、原形質連絡、ピレノイドを欠く多数の葉緑体、卵生殖、らせん形の精子といった、陸上植物と共通する特徴を多くもち、DNAに基づく分子系統解析からも、接合藻などと共に陸上植物に最も近縁な生物群の1つであることが示唆されている。
シャジクモ植物門、シャジクモ綱に分類されるが、これらの分類群名は接合藻やコレオケーテ類、クレブソルミディウム類、クロロキブス類などを含む広い意味で用いられることもある (ただしこの意味では側系統群である;車軸藻植物門、車軸藻綱を参照)。この広義のシャジクモ類はストレプト藻 (streptophyte algae) とよばれることがある[5]。
しばしば体表に炭酸カルシウムを沈着させるため、英名では stonewort (石の植物) とよばれ、またこのような体は硬いがもろいため、brittlewort (もろい植物) ともよばれる[6]。一部の種は強い匂い (ニンニク臭ともいわれる) をもつため、muskgrass/muskweed (麝香草) や skunkweed (スカンク草) という英名もある[6][7][8]。 シャジクモ類の藻体は主軸、小枝、および仮根からなる[1][5][9][10][11][12][13][14]。主軸や小枝は節部 (せつぶ) (節 node) と節間部 (せつかんぶ) (節間 internode) の繰り返しからなり、繰り返しの1単位 (節部 + 節間部) はセグメント (segment) とよばれる[11]。小枝は主軸の節から輪生しており、輪生した小枝をまとめて輪生枝 (whorl) とよぶ[11] (図1a, 1b)。「車軸藻 (シャジクモ)」の名は、輪生する小枝の姿に由来する[12]。主軸とそこから生じた小枝を合わせてシュート (shoot) とよぶことがある[5]。シャジクモ類の外見はスギナや一部の水草 (マツモ、スギナモなど) に似ているが、下記のように体のつくりはかなり異なる[5][15]。.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{display:flex;flex-direction:column}.mw-parser-output .tmulti .trow{display:flex;flex-direction:row;clear:left;flex-wrap:wrap;width:100%;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{margin:1px;float:left}.mw-parser-output .tmulti .theader{clear:both;font-weight:bold;text-align:center;align-self:center;background-color:transparent;width:100%}.mw-parser-output .tmulti .thumbcaption{background-color:transparent}.mw-parser-output .tmulti .text-align-left{text-align:left}.mw-parser-output .tmulti .text-align-right{text-align:right}.mw-parser-output .tmulti .text-align-center{text-align:center}@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{width:100%!important;box-sizing:border-box;max-width:none!important;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow{justify-content:center}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{float:none!important;max-width:100%!important;box-sizing:border-box;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow>.thumbcaption{text-align:center}}1a. キヌフラスコモの拡大像: 巨大な節間細胞からなる主軸とその節部から輪生する小枝があり、皮層や托葉冠を欠く。1b. ヒメカタシャジクモの拡大像: 主軸や小枝は皮層で覆われ、節部に托葉冠がある。1c. シャジクモ属の一種 (Chara hispida シャジクモ類の主軸 (中軸[16] main axis; 茎状部 stem; 枝 branch) は節部と節間部の繰り返しからなり、直径は 0.1?4 mm、長さはふつう 5?50 cm ほどだが、2.5 m に達する種もいる[1][5][9][11][12][14]。 主軸の節部は、多数の節部細胞 (nodal cells) からなる柔組織である[17][18]。節部細胞は核を1個のみもつ (単核性)。節部からは小枝が輪生する。シャジクモ属などでは、節部から皮層細胞が生じ、上部または下部へ伸長することで節間細胞を覆う皮層を形成することがある (下記参照)。 節間部は1個の巨大な節間細胞 (internodal cell) からなり、ときに長さ 20 cm に達する[1][5][9][13]。節間細胞内は大きな液胞で占められており、表面付近に薄く存在する細胞質は、表層部と内層部に分かれている[5][9][13]。表層部には、ミトコンドリアやペルオキシソーム、列状にならんだ多数の葉緑体が存在する。細胞質の内層部は、顕著な原形質流動を示す[19][20]。節間細胞は多核性であり、ときに1,000個以上の核をもつ[5]。
特徴
体制
主軸