身長
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人の身長測定

身長(しんちょう)は、人間ヒト)が直立した時の、又は地面から頭頂までの高さ。身の丈(みのたけ)、上背(うわぜい)、背丈(せたけ)、立っ端(たっぱ)とも言う。通常、メートル法[1][2]を使用する場合はセンチメートルで[3]インペリアル法を使用する場合はフィートとインチで表され、測点計を使用して測定される[4][5]。背骨と背骨の間にある椎間板が負荷の有無によって膨らんだり縮んだりすることで身長は約0.6?3cm変化する。そのため、起床直後は身長が一番高い値になり、就寝前が最も測定値が低くなる[6][7]
概要

平成30年国民健康・栄養調査によると、日本人男性の20歳以上の平均身長は 168.0±7.1cm、20 - 29歳の平均身長は 171.7±5.9cmであり、日本人女性の20歳以上の平均身長は 154.5±7.0cm、20 - 29歳の平均身長は 158.7±5.7cmであった[8]。文科省・学校保健統計調査によると2019(令和元)年度の17歳男子の平均身長は170.6 cm、17歳女子の平均身長は157.9 cmである。1989(平成元)年度とほぼ同じ数字であり、横ばい傾向が続いている[9]

身長を決定するのに遺伝と栄養状態がどのような役割を果たしているのかという問題は、人体計測研究の初期にしばしば提起されていた[10]ハプログループI (Y染色体)と呼ばれる男性における特定の遺伝子プロファイルは身長と相関している。生態学的データは、この遺伝的プロファイルの頻度が集団内で増加するにつれて、その国の平均的男性身長も増加することを示している。

身長と余命の相関については諸説あり、国家や人種別の平均身長と平均寿命において正相関及び負相関は見られない。平均より6cm高い男性の認知症リスクは10%低くなる[11]。身長の低い群ほど脳卒中発症のリスクは上がるが、虚血性心疾患の発症については身長との関連は見られなかった[12]。遺伝的に低身長だと心臓病リスクが高く、約6.5 cm低下する毎にリスクが13.5%上昇した[13]。また、低身長は心血症である可能性が高く、がんになる可能性は低い。ハワイ大学は、加齢の影響を減少させる「長寿遺伝子」のFOXO3が、より小さな体格の個人においてより一般的に認められることを見出した[14]。低身長は慢性静脈不全のリスクを低下させる[15]

集団が遺伝的背景および環境因子を共有する場合、平均身長はしばしば集団内の特徴を表す。集団内の例外的な身長変異(平均から約20%の偏差)は、ときに巨人症または小人症に起因する[16]。これらは特定の遺伝子または内分泌異常に起因する疾患である[16]

人間の身長の発達は、2つの重要な福祉要素、すなわち栄養の質と健康の指標となる[17]。貧困地域や戦争地域では、小児期や青年期の慢性的な栄養失調などの環境要因により、小人症のような疾患がなくても成長の遅れや成人身長の著しい低下が生じることがある。
概念

人の身体的な大きさを示す指標のひとつとして用いられている。一般に、裏をべたに床につけ、背筋を伸ばした状態での、足裏から頭部の一番高い位置までの長さである[注 1][注 2]

身長は地域差が非常に大きい。また、後に述べるように先進国を主として近現代には大幅な身長の増加があったのをはじめ、同じや地域、時代によってもかなりの変異が見られる。

なお、身長は一日を通して一定ではなく、平均身長の男性で約2 cm程度の変化がある。これは、朝起きたときには椎間板が充分に水分を含んでいるが、夜寝る前には自重などにより圧迫され、かなり水分を放出するためといわれている。しかしこれらは個人の変異又は一時的なもので、人種あるいは地域集団に見られる身長の差や、時代による変化とは関係がない。

人の身体的な大きさは身長で表すのが一般的であるが、翻って動物全般の大きさをどのように測っているか比較すると、身長といった測り方はむしろ例外的で、人間以外の動物は、多くは全長 としての先端部からの先端部の長さを用いたり、体長として、の長さ(尾は含まない)を用いたりすることが一般的である。哺乳類恐竜の大半はが長く体長に比して体の高さが大きいので、体高を用いることがある。これは4本脚で直立した時のの高さの値で、を上に上げた高さではない(キリンの類を除く)。
身長の決定要因

個人の身長は主に成長ホルモンとそれを刺激する女性ホルモンの分泌によって左右される。女性ホルモンは成長ホルモンの分泌を刺激し身長の伸びを促すと共に骨端線の閉鎖を促し、骨端線が閉鎖され成長ホルモンを止めてしまう。女性は男性より女性ホルモンの分泌が多いため、思春期開始が男性より早く、身長の伸びのピークも男性より早いが、骨端線も男性より早く閉鎖してしまうため、男性より低身長となる。思春期における身長の伸びのピークは男女とも陰毛が発生する頃となっており、男性はこの時点で既に思春期に入っている事に気づきやすく(女性は思春期開始から生じる乳房の成長開始で思春期が始まった事に気づきやすい)、男性は変声、女性は初経を迎える頃には身長の伸びのピークが過ぎており、今後あまり伸びなくなる[18]。女性ホルモンが全く作用しない男性では骨端線が閉鎖しないため高身長となる[19]。先天的に脳下垂体に異常がある場合、成長ホルモンが多くまたは長期間排出されると巨人症となり、逆に少ないまたは短期間排出の場合には小人症となる。思春期開始時期の平均身長は男性は約145 cm、女性は約134.1 cmで、思春期の身長の伸びのピークは男性は平均約13歳、女性は平均約10.88歳(10歳10か月-10歳11か月)でピーク時の女性の平均身長は約142.4 cmである[20]

身長は主に脳下垂体から分泌される成長ホルモンとその影響によって左右されることが明らかである。成長ホルモンは睡眠時に多く分泌されるため睡眠は重要であるが、睡眠時間帯による成長ホルモンの分泌量の影響はない[21]

思春期の身長の伸びはあまり個人差がない[22]とされる。そのため、身長を伸ばすには思春期前の期間が長く、かつ思春期前までにどれだけ伸ばせるかが重要で、これが大人になってからの身長を左右しやすい。

気候の影響が言われる場合もある。ベルクマンの法則によると、同種の恒温動物では寒冷地に住む種が熱帯地に住む種に比べて大柄になるとされる。これは、体が大きくなると表面積が増えて放熱量が増えるものの、体積の増加によってそれ以上に生産量が増加し[注 3]、寒冷地での生存に有利になるためとされる。人類も北欧人の方が南欧人より東アジア人の方が東南アジア人より高身長である。人類においては同人種間では当てはまるが他人種間ではあまり当てはまらない。例としてアフリカのディンカ族は温暖な地域の部族だが高身長である。


妊娠中に牛乳を多く飲むと子供の身長が高くなるという研究結果がある[23]
生まれか育ちか

遺伝学と環境との正確な関係は複雑で不確実である。

いくつかの双生児を対象とした研究[24]によれば、ヒトの身長の差は60?80%の遺伝率があり、100年前のメンデル主義者と生物測定学者の議論以降、ポリジーン遺伝であると考えられている。18万人以上を対象としたゲノムワイド関連解析(GWAS)により、成人身長と関連する少なくとも180の遺伝子座において数百の遺伝的変異が同定されている[25]。その後、調査対象となった人の数は253,288人にまで拡大され、同定された遺伝的変異体の数は423の遺伝子座で697にまでなった[26]。比座高(座高と身長の比)を用いた別の研究では、これら697の変異体は(1)主に脚の長さを決定する変異体(2)主に背骨と頭の長さを決定する変異体(3)全体の体型に影響する変異体、という3つの特異的なクラスに分けることができると報告されている。この研究により、697の遺伝的変異体が全身長にどのように影響を及ぼすかについての生物学的メカニズムの洞察が得られた[27]。なお、これらの遺伝子座は、身長だけでなく他の特徴も決定する。例として、頭蓋内容積に対して同定された7つの遺伝子座のうちの4つは、以前にヒトの身長に関連する遺伝子座として特定されていた[28]

2019年に発表された研究では、日本人約19万人のゲノム解析が行われて身長に関わる573の遺伝的変異を同定され、新たに身長に影響するSLC27A3とCYP26B1という二つの遺伝子が特定された[29]。また、低頻度の遺伝的変異は身長を高くさせる傾向があり、これは身長を高くする遺伝的変異が日本人の集団では自然淘汰を受けていたことを示唆し、高身長が日本人にとって何らかの不利な影響を及ぼしていた可能性を示している[29]

環境が身長に及ぼす影響は、米国に住む人類学者のバリー・ボギンとグアテマラマヤ族の子どもたちの共同研究によって示されている。


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