身体尺
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手を使った身体尺。
1.シャフトメント
2.ハンド
3.パーム
4.スパン
5.フィンガー
6.ディジット

身体尺(しんたいじゃく)は、人間の身体部位を基準に定められた単位をいう[1]。手軽な単位として世界各地で自然発生的に生まれたが、後に個人差をなくすためにより客観的な基準に置きかえられた[2]。単位名の一部に身体尺に由来するものが残っているが、本来の長さとは異なっていることも多い。
概要

身体尺の多くが長さの単位であるが、両手ですくえる容積も単位として使われる[1]

古代エジプトメソポタミアで使われた古い身体尺にキュビットがあり、本来はから中指の先までの長さを指した。下位の単位としてはパーム(手の横幅)やディジット(指の幅)があった(単位の実際の名前はそれぞれの言語で「肘(前腕)・手のひら・指」を意味する語だが、英語の名称で統一)。

ヤード・ポンド法の長さの単位のうちフィートは「足」を意味する。英語のインチ(inch)はラテン語で.mw-parser-output .frac{white-space:nowrap}.mw-parser-output .frac .num,.mw-parser-output .frac .den{font-size:80%;line-height:0;vertical-align:super}.mw-parser-output .frac .den{vertical-align:sub}.mw-parser-output .sr-only{border:0;clip:rect(0,0,0,0);height:1px;margin:-1px;overflow:hidden;padding:0;position:absolute;width:1px}1⁄12を意味するunciaに由来し、体の部位から直接取ったわけではないが、他のヨーロッパの言語では親指を意味する語が使われることが多い(オランダ語: duim、フランス語: pouceなど)[3]ヤードの起源については諸説あって明らかでないが、キュビットの2倍に由来するともいう。マイルは歩幅(1複歩)の1000倍に由来するので、これも身体尺である[2]
身体尺に由来する各地の単位の例
古代中国

古代中国の単位の語源は必ずしも明らかでないが、漢字の字形や文献の記載から身体尺を起源としていたと考えられるものがいくつかある。たとえば『大戴礼記』に「指をしきて寸を知り、手をしきて尺を知り、肘をのべて尋を知る」というのは、寸・尺・尋を人間の体を使って測ったことを示す[4][5]。ただし現在の中国や日本の長さは身体尺としての長さとは大きく異なっているものが多い。

- 手を広げたときの親指の先から中指の先までの長さに由来する。約18センチメートル[6]

- 古来1⁄10尺とされるが、『春秋公羊伝』注に「按指為寸」といい[7]、『大戴礼記』に「布指知寸」というように、本来は尺とは独立の身体尺で親指幅に由来すると考えられ、インチと共通する[8]。なお『説文解字』には手のひらの最下端から動脈までの長さとしているが、小泉によるとこれが正しいとしても文字は後に作られたものであって本来の測りかたではない[9]

- 両腕を広げたときに指先から指先までの長さに由来する[10]ファゾムに相当する。

- 『小爾雅』に4尺を仞とし、2仞を尋とするという。それによると尋の半分で、体の中心から指先までの長さということになるが[10]、文献によって七尺・八尺・五尺六寸など一致しない[11]。水深を測るために長く用いられた[10]

- 成人男子の身の丈。『説文解字』は周尺(漢尺の八寸)で十尺とする[12]。約180センチメートル[6]。ただし人の身長は文献によって七尺とするものや八尺とするものがあり一致しない[13]

- 手のひらの下端から中指の先まで。制度として使われたことはないようである[10]

- 1複歩(2歩)あるいたときの距離に由来する[14]パッススに相当する。『小爾雅』に「?、一舉足也。倍?謂之歩。」という。

- 身体尺ではなく、ひしゃくの容量に由来する[15]。漢代には嘉量の実測値や『漢書』律歴志の記述から約200ミリリットルで、現在の日本の升の約1⁄10であった[16]。しかし両手でものをすくった量を表す「?・掬」が約200ミリリットルになり[15]、これが升の起源と考えられる[17]

古代日本

日本では奈良時代以後中国の度量衡を借用したが[18]、『古事記』・『日本書紀』などの文献にはそれ以前の固有の単位が痕跡的に残っている。ただし制度化されていたかどうかは不明である[19]。これらのうちにも身体尺がある。

日本固有の単位は長さのみで、量(体積)については確実なものが存在しない[20]

つか - 手で物をつかんだときの親指以外の4本の指の幅。パームに相当する。中国では正式の単位になったことがないため[21]、漢字は一定せず、「十握剣(とつかのつるぎ)」、「八拳須(やつかひげ)」、「八掬脛(やつかはぎ)」のように「握・拳・掬」などの字が使われる。後には矢の長さを表すのに使用され、『源平盛衰記』で矢の長さを「十二束(つか)三伏(ふせ)」といっている。ここで「伏」は指1本の幅で、ディジットにあたる[22]

ひろ - 両手を広げた幅。中国の「尋」と同じで、漢字も「尋」と書かれる[23]

あた - 親指から中指の先端までの長さ。『日本書紀』では「咫」、『古事記』では「尺」の字を用いる。「尺」の本義と同じだが、当時の尺とは長さが違いすぎたために『日本書紀』ではそれより短い「咫」の字をあてたものと思われる[24]

さか - 「あた」と同じ。漢字では「尺」と書き、音も「尺」の字音に近いため、中国との接触の影響によるかという[25]

アイヌ

アイヌ民族の間でも、独自の人体尺が使用されていた。

テ? - 両手を広げた長さ。日本本土の「ひろ」に同じ。体幹から指先までの長さは、「テ?の半分」の意で北海道アイヌ語ではアッテ?[26]樺太アイヌ語ではア?テ?と呼ばれる[27]

ウォ - 親指から人差し指の先端までの長さ。なお日本や中国の「尺」に当たる「親指から中指先端までの長さ」は、北海道アイヌ語ではシウォ(大きなウォ)[26]、樺太アイヌ語ではイヌクスン・モンペ?・ウォ(中指で計ったウォ)と呼ばれる[27]

イク - 人差し指の第一関節から第二関節までの間の長さ[26]

古代メソポタミア


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