超高層建築物
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「Skyscraper」はこの項目へ転送されています。その他の用法については「スカイスクレイパー」をご覧ください。
ブルジュ・ハリファ

超高層建築物(ちょうこうそうけんちくぶつ)または超高層ビル(ちょうこうそうビル、英語: skyscraper)は、高層建築物(高層ビル)の中でも特に高い建築物である。

どの程度の高さ以上の建築物を超高層ビルと呼ぶかについては、統一された明確な基準はない(#定義参照)。
定義

どのような高さや階数の建築物を超高層ビルと呼ぶかについては、統一された明確な定義はない。

日本の法律では「超高層」という用語は用いられていないが、建築基準法第20条第1号では高さが60mを超える建築物に対してそれ以下のものと異なる構造の基準を設定しており、高さ60m以上の建築物が超高層建築と呼ばれることがある[1][2][3]。また、超高層ビル群があることで有名な新宿区は「新宿区景観形成ガイドライン」[4]を定めているが、そのうちの「超高層ビルの景観形成ガイドライン」の対象も「高さ60mを超える建築物」とされている[5]。さらに航空法第51条においても60m以上の高さの物件に航空障害灯の設置を義務付けている。

日本の場合、例として『広辞苑』では、「15階以上、または、100m以上の高さの建築物を超高層建築と呼ぶことが多い」としている[6]。階高を3 - 4mと仮定すると15階は45 - 60mにあたり、15階以上と100m以上とではその高さに大きな開きがあることになる。他の書籍の例を挙げると

書籍出版定義
マイペディア平凡社100m以上
建築大事典彰国社100m以上または15階程度以上
建築学用語辞典日本建築学会15階程度以上

と、100m・15階程度と書籍によって値は異なっている。超高層ビル尖塔高順の比較

日本初の超高層ビルとされるのは霞が関ビルディング(36階、地上147m)である[7]。それ以前に最も高い建築物であったホテルニューオータニ(17階、73m)は、超高層ビルとは呼ばれていなかった。

イギリスのskyscrapernews.comは、高さ150m(500ft)以上のビルを超高層ビル(skyscraper)と定義している[8]。また、300m以上(?1,000m以下)の超高層ビル(超高層建築物)を supertall building (supertall tower)、または単に supertall (スーパートール)と呼ぶ場合がある。

高さが1,000mを超えるビルはハイパービルディング(超々高層ビル、超々高層建築物)と呼ばれ、サウジアラビアジェッダジェッダ・タワーが建設中である。167階建て高さ約1,008m(尖塔高)の予定で、完成すれば世界初のハイパービルディングとなるが完成見込みは不明。
概要ホーム・インシュアランス・ビル(1884年)エンパイア・ステート・ビルディング

一般には超高層ビルと呼ばれ、摩天楼(まてんろう、「天を摩するほどの高楼」の意、英語の訳語[6])ともいう。英語では、skyscraper(スカイスクレイパー、「空を削るもの」の意)、Tower(タワー、「」の意)、Spire(スパイア、「尖塔」の意)などともいう。

ホーム・インシュアランス・ビルは一般的に外面・内面ともに耐火性の金属骨組を用いた最初の高層ビルと認識されている[9]。このビルは1884年に竣工し、1931年に解体された。

エンパイア・ステート・ビルディング1972年ワールドトレードセンターのノースタワーが竣工するまでの42年間、世界一の高さを誇るビルとなっていた。

世界で最も高い超高層ビルの座は、50年以上に渡りアメリカのビルが占めていたが、近年のアジア諸国の経済力の発展に伴いその座を譲り渡している。
建築の意義

超高層ビルは規模にもよるが、多くの場合巨大な需要能力を有するため、再開発事業などを計画する際に、区画整理後の敷地に建設される建物として超高層建築物が採用されることが多い。

エドワード・グレーザー教授などは超高層ビルにより経済的なイノベーションと人々の相互作用が可能になると主張している[10]

超高層ビルの建てられる場合として、不動産価格が高い土地に事業者が投資しようとする際に、投資資金の回収のため多層の建築を設けて収益を得ようとする事から結果的に超高層ビルになる場合や、限られた土地に大きな収容力を求める場合、土地や都市、国などのランドマークシンボル)として建設する場合などが挙げられる。また超高層ビルは周囲からも抜き出た高さとなる事も多く、周辺地域への影響も大きい。そこで、高い意匠性を持つ超高層ビルは、その地域や、ビル建築主、ビルを使用するテナントのイメージを向上させることもあるが、その建築が周辺地域から受け入れられない場合には、計画段階時に是正を求められたり、計画の修正や建築差止めを求めて訴訟が提起されることもある。

歴史的な地域(京都奈良東京浅草寺周辺など)や、既存住宅から突出した高さのタワーマンション計画に対して「周辺に利便をもたらさない」とする訴訟・反対運動の事例が特に日本において多い[11]。また超高層ビルの用地として初期のモダニズム建築を解体して再開発が行われることが多く、古典的モダニズムの賛同者から反発が寄せられるようになった[12]

省エネ対策の例としてベトナム政府は2017年に高層ビルのエネルギー効率向上計画を承認し、関連する法整備などを検討している[13]
耐震構造

地震や風圧対策(耐震構造)は、従来の建築物では「剛構造」という地震や風圧に耐える構造(人が走行中の列車内で脚を踏ん張って揺れに耐えることに例えられる)が求められてきたが、超高層ビルでは、地震の揺れや風圧にある程度建物を任せる「柔構造」の建築である[14]

さらに、昨今建設される超高層ビルでは、基礎部分に油圧装置(油圧ダンパー)を取り付ける、柱の中に低降伏点鋼を挟む(制震柱)、建物の上部にダンパーと呼ばれる錘(おもり)を取りつけたりして揺れを軽減する、などの方法(いずれも制震構造)を採用している[15]

また、基礎と上部建築物を切り離し、構造物の間に積層ゴムやベアリングを媒介して、横揺れそのものを逃す方法(免震構造)も開発されている。免震構造は古い構造基準で建設された老朽化しているビルにも有効であり、免震レトロフィット(改良、後付)工法もあるほどである。ただし、この工法は基本的に柱を切断しジャッキアップしたうえで積層ゴムやベアリングを取り付けるものなので、1階部分が空洞(駐車場や駐輪場など)であり、かつ十分な敷地が確保できる場所で重量の負担が一定のレベルを超えないことが条件とされている。
長周期地震動との共振

一般に、ビルが高ければ高いほど、そのビルの固有振動周期が長くなる[16]。そのため、超高層ビルでは、低層の建物ではあまり問題とされない、海溝型巨大地震などによる長周期地震動との共振の可能性が指摘されている[16]
超高層建築物における長周期地震動の実例

2007年7月16日新潟県中越沖地震では、六本木ヒルズの高層階用エレベーターが長周期地震動で緊急停止した[16]

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震によって東日本一帯に長周期地震動が発生した。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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