「超音波探傷検査」とは異なります。
医療用超音波検査装置(TOSHIBA SSA-270A)
超音波検査(ちょうおんぱけんさ、英語: ultrasonography, US echo)とは、超音波を対象物に当ててその反響を映像化する画像検査法である。一般に「エコー検査」、略して「エコー」とだけ呼ばれることが多い[1]。超音波検査は非侵襲的な検査手法である他に、X線画像検査などとは違って超音波検査には被曝の心配がないため、放射線管理も不要なので装置さえ用意すれば病室でも行える上に、日を変えて検査を何回行っても問題ないこともあり医療分野で広く利用されている。また近年、金属材料などを対象として、レーザーを用いて超音波を励起・計測するレーザー超音波計測が行われる。肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓、脾臓、心臓、甲状腺、乳腺、下肢血管
を主な検査対象とするが、医師の判断で、胃や腸、膀胱などの検査も行われる[1]。肝臓がんや乳がんなどでは、血流を見る目的で、造影剤を使用して超音波検査を行うこともある[2]。本稿では、主に医療用超音波検査について記述する。対象物に探触子を当てて超音波を発生させ、反射した超音波を受信し、画像データとして処理する。超音波を発生させると、ごく短い時間のうちに、その音は対象物の中を進んでいき、骨などの固い組織に当たると大部分は反射する[注釈 1]。また、組織の境界のように性状が変わる場所でも一部が反射したり、散乱が起こる。その後、体表まで戻ってきた超音波を検知する。この時、超音波を発生させてから、その超音波が体表まで戻ってきた時間を計測することで、体表からの反射が起きた場所までの距離を知ることができる。なぜなら、音速をv、超音波の反射点までの距離をLとすると、組織中の音速を一定と仮定した場合[注釈 2]、体表まで超音波が戻ってくるのにかかる時間tは、 t = 2 L v {\displaystyle t={2L \over v}}
と表せるので、 L = t v 2 {\displaystyle L={tv \over 2}}
と求まるからである。基本的には、これを利用して生体内部の様子を可視化する。
ただし、超音波が探触子から放射されると、超音波は減衰してゆくので、ある程度の強さの超音波を必要とする。しかしながら、超音波の強さを上げ過ぎると、超音波が減衰する時に熱を出すため、この熱によって生体に打撃を与える可能性がある。そして、約10 (W/cm)の強さだと、超音波のエネルギーそのものによって細胞そのものを破壊する[3]。したがって、使える超音波の強さには上限が存在する。なお、約0.1 (W/cm)程度の強さまでの超音波であれば、超音波による加熱作用も問題ないとされる[3]。
また、血流のように動きのある物に対してはドップラー効果を利用して、動いている方向を調べることも行われる。これを利用して、例えば、心臓の拍出量を調べたり、血流の逆流が無いかを調べたりすることができる。 基本的に超音波は液体・固体がよく伝わり、気体は伝わりにくい。そのため、液状成分や軟体の描出に優れており、実質臓器の描出能が高く、肺・消化管の描出能は低い。また、骨は表面での反射が強く骨表面などの観察に留まる。 開発当初のエコー検査では、音波を一方向のみに発射するだけのものであったが、その後改良され、扇状に音波を発生することで、対象物の断面画像がリアルタイムに見られるようになっている。
特徴
探触子の種類左はセクタ型、中央がリニア型、右がコンベックス型の探触子の先端部と、Bモードにおいて超音波ビームが発射される方向のイメージ。
Linear型(リニア型)
体表へ接触させる超音波のビームを発射する部分は平面である。ここから、その平面に対して垂直方向のビームを、何本も発生させる。つまり、超音波ビームの発射点を、平面上において隈なく移動させる方法で走査している。よって、全ての超音波ビームは平行である。したがって、特にSector型と比べると、体表に近い部分では広範囲に超音波ビームを当てられる。このため、主に体表に近い部分に位置する組織の検査に用いられ、例えば、体表近くの血管や筋肉、乳腺や甲状腺などを見るのに向く。
Sector型(セクタ型)
体表へ接触させる超音波のビームを発射する部分は、Linear型などと比べて狭く小さい。この接触部分の1点から超音波ビームを発射する。そして、超音波ビームは角度を変えて次々と放射される。つまり、超音波ビームを発射する角度を変える方法で走査している。よって、いずれの超音波ビームも平行ではない。したがって、体表に近い部分は狭い範囲にしか超音波ビームを当てられないのに対し、体表から遠い部分では広い範囲に超音波ビームを当てられる。また、Linear型とは違って、Sector型ならば超音波ビームが入ってゆく場所は狭くても問題がない。超音波は骨に当たると、そこで反射して体表に戻ってきてしまうものの、Sector型なら、肋骨の間から、その向こう側へと超音波ビームを放射することも容易である。このため、例えば肋骨で囲まれた胸腔内の臓器を標的とした超音波検査、例えば心臓超音波検査などに用いられる。なお、産婦人科で用いられる経膣超音波検査
主に、以下の画像モードがある。 受信したエコーを表現するための方法はいくつかあるが、A(amplitude:振幅)モードとB(brightness:輝度)モードが基本となっている。超音波は直進性に優れており、音響インピーダンスの異なった物質間の境界面で反射がおこり、受信するまでの時間を元に物質までの位置を計算することが出来る。物質までの距離を横軸にとり、反射したエコーの振幅を縦軸にとったグラフがAモード像である。原理としては重要であるが、Aモードは実際の検査には、あまり用いられない。 Aモードではエコーの振幅と位置を表示していたが、この振幅を点の明るさ(輝度)として表示したものがBモードである。1本の超音波ビームでは、一次元像しか得られないが、複数の超音波ビームを発生させると二次元像を作成することが出来る。単に超音波断層検査と言った場合にはBモードを指すことが多い。 M(Motion:動き)モードとは、断面上のさらにある一直線上に注目し、そこでの音波反射の経時変化を画像化する検査である。心臓の弁や心筋の動きなど、動きのある部位を時系列で観察できるため、ドップラーエコーと同様心エコーでの有用性が高い。 ドップラー効果によって、反射した音波の周波数が変化することを利用して、物体がプローブに近づいているのか遠ざかっているのかを判定し画像評価できる。 ドップラーには、特定位置の超音波ビームの周波数変化を流速に変換しグラフ化するドップラーモードと、Bモード画像上に指定した領域での流速変化を色で表現するカラードップラーモードがある。特に心エコーで、心臓の血流を評価する際に有用である。 カラードップラーでは、「赤方偏移」「青方偏移」がそれぞれ「遠ざかる」「近づく」場合のドップラーシフトに当たるが、医療用機器では逆に「近づく」「遠ざかる」を表示している。 カラードップラーに比較して感度が高い。一方、フレームレートは落ち、分解能も落ちる。 Bモード並みの分解能とフレームレートを有する表示方法。メーカーにより名称が異なる。 超音波が伝わりやすいように、体の表面に検査用のゼリーを塗り、超音波を出す器械であるプローブをあてて検査を行う。食事をすると臓器が見えなくなるため飲食は禁止[1]。 主に以下のような検査の種類がある。 体表よりアプローチし、肝臓・胆嚢・膵臓・脾臓・腎臓・子宮・卵巣・前立腺等の腹部の実質臓器や妊娠中の胎児の評価を行う。また、胃・大腸・虫垂等の描写にも用いられる。ただ、子宮・卵巣・前立腺等は体表腹部超音波検査よりも経膣・経肛門超音波検査からの描出の方が優れている。 体表よりアプローチし、心臓・大血管の評価を行う。心腔内に関しては体表心臓超音波検査よりも経食道心臓超音波検査からの描出の方が優れている。
Aモード
Bモード
Mモード
カラードップラー
パワードップラー
ワイドバンドドップラー
検査の種類新生児をエコー検査する様子
腹部超音波検査詳細は「腹部超音波検査」を参照
心臓超音波検査詳細は「心臓超音波検査」を参照
頸部超音波検査詳細は「頸部血管超音波検査」および「頸部超音波検査」を参照
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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