超短波放送
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超短波放送(ちょうたんぱほうそう)とは、超短波(VHF:Very High Frequency)を用いる放送である。
概要「周波数変調#FM放送」も参照

国際電気通信連合(ITU)は、地域によって異なるが47 - 108MHzの間の周波数を放送用を含めた用途に分配[1]している。このうち、ラジオ放送用には、ロシアなど旧ソビエト連邦構成各諸国を含む東欧を除く欧米の大半では87.5 - 108MHz、東欧では68 - 74MHz(うち74 - 76MHzはガードバンドのため使用不可)、日本では76.1 - 94.9MHz[2](従来は90.0MHzまでだった)が割り当てられている。

周波数の特性上、送信所から到達する距離が短いため、国内放送、それもその中の一部の地域(日本での例は都道府県内、市区町村内など)を対象とした放送に用いられる。但し、VHFを反射するスポラディックE層(通称「Eスポ」)と呼ばれる特殊な電離層が、春から夏頃にかけての日中に突然出現し、普段聞くことの出来ない遠隔地の放送が受信できることはある。

1チャンネルの搬送波周波数間隔が200kHzあり、伝送できる周波数帯域が広く(占有周波数帯幅の許容値は200kHz)、S/N比が高くノイズに強いことやAMに比べて高音質のため主に音楽番組等が放送されている。音声信号の最高周波数は15kHzである。
変調方式

周波数変調(FM:Frequency Modulation)を使う。

@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}FMを使うからVHF放送全般が「FM放送」「FMラジオ」などとよばれる[要出典]。

また、多重技術を利用して音声多重放送(ステレオ放送)や補助通信業務(SCA:Subsidiary Communications Authority)と呼ばれる文字多重放送(文字放送)、独立音声放送、ファクシミリ無線呼出し(ページング、いわゆる「ポケットベル」「ポケベル」)が実施できる。この内、ステレオ放送は標準的に実施される。欧米では無線呼出しに電気通信事業者が参入するなど放送事業者とは別の事業者がいわば相乗りする事例もある。

ノイズや混信に弱い中波放送から転換する例も多い。ヨーロッパでは狭い地域に多数の局が林立することから、第二次世界大戦直後の早い時期に転換が進みFM放送の普及が促進された。また、中波放送をサイマル放送することもあり、日本ではFM補完中継局、韓国では「標準FM放送」がある。

一部の国ではデジタル化対応が行われている。詳細はデジタルラジオ#放送技術の規格を参照。
アメリカ

FMの歴史は1933年12月26日エドウィン・アームストロングが周波数変調の特許を取得して始まった[3]。アームストロングは1937年には世界初のFM放送局W2XMNを開設して放送を行った[3]

事業として初の放送は1941年開局のテネシー州ナッシュビルのWSM-FMで、初の民間放送でもある。

1961年には連邦通信委員会(FCC)がFMのステレオ技術を規格化して数百のFM局が開局[4]。連邦通信委員会(FCC)は1966年にはFMの放送内容をAMと分離することを決定し、FM放送の聴取者が増えるきっかけとなった[4]
日本
定義

日本では、放送法第2条第17号に「30MHzを超える周波数を使用して音声その他の音響を送る放送(文字図形その他の影像又は信号を併せ送るものを含む。)であって、テレビジョン放送に該当せず、かつ、他の放送の電波に重畳して行う放送でないもの」と、総務省令電波法施行規則第2条第1項第25号に「30MHzを超える周波数の電波を使用して音声その他の音響を送る放送(文字、図形その他の影像又は信号を併せ送るものを含む。)であつて、テレビジヨン放送に該当せず、かつ、他の放送の電波に重畳して行う放送でないもの」と定義している。つまり、VHFの上限の300MHzを超える周波数を使用するものであっても超短波放送という。放送法施行規則別表第5号第5放送の種類による基幹放送の区分(1)にもあるので、基幹放送の一種でもある。同表同区分(5)にはマルチメディア放送があり、その定義[5]は「2値のデジタル情報を送る放送であつて、テレビジョン放送に該当せず、かつ、他の放送の電波に重畳して行う放送でないもの」であるので、デジタルによる音声放送は超短波放送としてではなくマルチメディア放送としても免許されうる。

引用の促音拗音送り仮名の表記は原文ママ
周波数

日本での放送用周波数は、諸外国と異なり、76.1 - 89.9MHzが割り当てられた。周波数間隔はオフセットにより100kHzである。

FMによる放送の実験段階から、すでにテレビジョン放送に90 - 108MHzは1ch - 3ch(V-Low帯と呼ばれる)として使用されていた。

NHK放送センター(本部局)のFM実用化試験放送が開始された1957年12月24日から1961年6月18日の放送までは、周波数が87.3Mc・1kWであったため、NHK総合の1chとの電波干渉は起こりにくかったが[6]、1961年6月19日以後、出力増強により10kWに拡大するにあたり、電波干渉が起こることから周波数が82.5Mcに変更された[7]

この為、1ch(90 - 96MHz)をテレビ放送で使用[注釈 1]していた関東広域圏等では、テレビの受信妨害になるとして86 - 89.9MHzは「ガードバンド」として使用[注釈 3]できなかった(86.3MHzのFM GUNMAなど一部例外あり)。また、80.8 - 81.2MHzは軍用航空無線機の国際緊急周波数(243MHz)及びその近辺の1/3低調波に相当し、遭難通信妨害の原因になるため、同様に「ガードバンド」の扱いとして使用できない(上限がNHK-FM千葉の本局、下限がJ-WAVE本局。但し、ケーブルテレビ局でFMラジオの再送信を行う場合、周波数変換パススルーにてこの帯域が使われているケースも一部ある)。

テレビ放送のデジタル化により空いたV-Low帯については、マルチメディア放送と分け合う形となり、FM放送をデジタル化することも検討されたが中止になってFM補完中継局とコミュニティ放送に90 - 94.9MHz(ワイドFM)が割り当てられた[2]

99 - 108MHzは広域放送県域放送として行われるマルチメディア放送に割り当てられ、デジタル化したコミュニティ放送にも割り当てる予定であり、95 - 99MHzはFM放送との混信・干渉を避ける観点から「ガードバンド」と位置付けられ、原則として放送には使用しない[8]

なお、放送用周波数が決定する以前に、65.51MHzを用い長岡市長岡教育放送が設立されたが、これは免許上は固定業務の実用化試験局、つまり固定局に相当するものであり、電波法令上は同報通信[9]であった。放送というより市町村同報無線の原型というべきものである。
諸外国と割当てが異なることによる弊害

前述の通り、諸外国においては87.5 - 108MHz(目盛りは88 - 108)が使用されており、この周波数帯のみに対応したラジオを海外からの旅行者が日本へ持ち込んで受信したとしても、受信できる局が少ない・存在しないといったことが起きる。特に外国語放送においては、想定した聴取者に放送が届けられないことは大きな問題である。このうち、関東広域圏の一部を放送対象地域とするInterFM(現:interfm)は、2015年10月31日に受信環境の改善も兼ねて、従来の76.1MHzから89.7MHzへ周波数を変更した。

また、国外使用を想定していない日本仕様の日本車中古車として海外に販売された場合、日本仕様のカーオーディオでは現地の放送が受信できないといった問題も発生する。コンバーターを装着することで対応が可能であるが、それでも一部の周波数は受信できないとされる。


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