超光速航法
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超光速航法(ちょうこうそくこうほう)は、SFなどに見られる架空航法であり、宇宙船等の乗り物又は個人が光速を超える速さで移動するための技術
定義

相対性理論によると、物体の相対論的質量速度が上がるにしたがって増加し、光速において無限大となる。このため、単純に加速を続けるだけでは光速に達することも、光速を超えることもできない。宇宙を縦横無尽に駆け回るSF(とくにスペースオペラ)の恒星船ではこのままだと都合が悪いので、さまざまな架空理論にもとづく超光速航法が考えられている。ハードSFでは、最先端の物理学の仮説を利用して相対論の枠内でブラックホールを利用することにより、超光速を使わずに空間移動する方法や超空間での移動を用いる。

また、SFの設定では、超光速航法の関連技術を使って超光速通信も行われているとすることがある。そうでない場合、通信よりも超光速宇宙船で移動するほうが先に届くため、「通信宇宙船」を設定することがある。

超光速航法というと光より速いスピードとシンプルに考えるかもしれないが、話はそう単純ではない。例えば宇宙に近道を作るタイプの超光速航法では、光より遅い進行スピードで光より早く目的地に到着する。これは到着が早いのであって、速度が速いのではない。また、速度を計る時計の進みも相対性理論では場所によって異なり、ほぼ光速で飛行している宇宙船内やブラックホールの事象の地平面付近では地球上の我々から見ると時間はほとんど止まっている。すなわち、このような時間の遅れた系にいる観測者が『体感』する移動は、その観測者から見て光速は常に光速であるにもかかわらず、超光速航法と全く同じ結果になることがある。

つまりここで言う超光速航法とは、地球上のような弱い重力場中や何もない宇宙空間を光速よりも十分遅いスピードで運動している観測者の持つ時計で測って、出発点と目的地の間の距離を真空中の光速度で割るよりも短い時間で目的地へ到着する航法全般、ということになる。超光速航法を超光速と定義付ける重要なファクターは、多くの場合地球の時計なのである。

これに対し、空間の2地点を「くっつけて」移動する、あるいは何らかの方法で瞬間移動するものをワープという。いずれにしろ超科学的であることは間違いなく、厳密に区別できるものでもない。
研究機関
NASA, Eagle Works Laboratory
(Advanced Propulsion Laboratory: APL)

Limitless Space Institute(LSI)

Arizona State University - Enterprise Lab Group

種類
論文
アルクビエレ・ドライブ
アルクビエレ・ドライブ(Alcubierre drive)は、メキシコ人の物理学者ミゲル・アルクビエレ(英語版)が提案した、アインシュタイン方程式の解を基にした空想的アイディアである。これによれば、もし負の質量といったようなものが存在するなら、ワープないし超光速航法が可能となる。発表以来、それを基にした論文がたびたび発表され、物理学界の片隅で今なお議論が行われているテーマである。
ヘリカル・ドライブ
ヘリカル・ドライブは,核融合宇宙推進システム用に設計された新しい磁気慣性融合コンセプトである。高速で高出力のイオン加熱メカニズムとして磁気再接続を利用し、堅牢で安定した閉じ込めスキームとして天然プラズマ自己組織化を活用し、全体的なエンジニアリングの複雑さを軽減するために適度な比率で受動磁気圧縮を利用することで光速の99%まで到達させることができる。
SF

初期のSFやスペースオペラでは、相対性理論に言及せず、加速を続けることによって光速を越えている例がみられる。
バーゲンホルム航法
エドワード・E・スミスの『宇宙のスカイラーク』シリーズでは、相対性理論に触れたうえで観測事実として加速継続による超光速が実現されたとの設定で、理論は現実によって修正されるとされている。また、同じ作者の『レンズマン』シリーズでは、「バーゲンホルム機関」という装置で質量が持つ慣性を無効化し、宇宙船の質量そのものを無効化して超光速を達成している。
亜空間航法
SFテレビシリーズの『スタートレック』では、ワープ・エンジンによって宇宙船を包み込むように亜空間フィールドを発生させ、亜空間フィールドの膜に包まれた内部は、プランク時間以内に通常の空間に対して光速で進み出し、ワープ航法を行うという設定になっている。作中では、ワープ用の亜空間フィールドを「ワープ・フィールド」とも称している。亜空間フィールドの膜の中は通常の空間であり、宇宙船自体は通常の空間に対して静止している。亜空間フィールドの外から見ると、宇宙船は亜空間フィールドの膜に包まれて光速で移動しているように見えるが、宇宙船自体は亜空間フィールドの膜の中にある通常の空間に対して静止している。『スタートレック』シリーズでは、亜空間という架空の空間により、光速以上の速さで移動できないという相対性理論との矛盾を回避している。


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