赤色矮星
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HR図スペクトル型YSOT Tauri型星Herbig Ae/Be型星褐色矮星準褐色矮星白色
矮星



準矮星B主系列星OBAFGK準巨星巨星バリウム星赤色
巨星
青色
巨星
輝巨星超巨星赤色
超巨星
LBVWR型星極超巨星


赤色矮星[1](せきしょくわいせい、: red dwarf[1])とは、主系列星矮星)の中で特に小さく低温な恒星のグループである。主にスペクトル型がM型の主系列星を指すが、低温のK型主系列星の一部を含めることもある。表面が低温で赤色にみえるため、この名がある。

赤色矮星は、少なくとも太陽の近傍においては銀河系の恒星の中で最も一般的なタイプの恒星である。しかし光度が小さいため、個々の赤色矮星を観測するのは容易ではない。地球からは、狭義の赤色矮星に該当する恒星で肉眼で見ることができるものはない[2]。太陽に最も近い恒星であるプロキシマ・ケンタウリは赤色矮星であり、太陽系に近い恒星60個のうち50個が赤色矮星である。ある推定によると、赤色矮星は銀河系内の恒星のうち4分の3を占める[3]

太陽に近い最も低温な赤色矮星の表面温度は 2000 K 程度であり、最も小さいものは半径が太陽の 9% 程度、質量は太陽の 7.5% 程度である。これらの赤色矮星のスペクトル型は L0 から L2 となる。非常に重い褐色矮星のうち金属量が低い天体は 3600 K 程度の有効温度を持ちスペクトル型が晩期M型であるため、赤色矮星と褐色矮星はスペクトル分類上はある程度の重複がある。

「赤色矮星」という用語の定義と用法は、より高温で重い側の天体をどこまで含むかによって変化する。定義のうちの一つは「M型矮星」(M型主系列星)と同義であり、この場合は有効温度の最大値は 3900 K、質量は最大で0.6太陽質量である。別の定義ではM型主系列星の全てとK型主系列星の全てを含み、この場合温度は最高で 5200 K、質量は最大で0.8太陽質量となる。また別の定義では、全てのM型主系列星とK型主系列星の一部を含む。最も低温で低質量のM型矮星の大部分は褐色矮星であり実際には恒星ではないと考えられるため、これらは赤色矮星の定義からは除かれる。

恒星の内部構造の理論モデルによると、太陽質量の0.35倍より軽い赤色矮星は内部全体が対流層になる全対流を起こす[4]水素の熱核融合によって生成されるヘリウムが全対流によって恒星全体に均等に再分配されるため、中心核にヘリウムが蓄積するのが阻害され、核融合を起こすことができる期間が長くなる。そのため低質量の赤色矮星は非常にゆっくりと進化し、核融合の燃料が枯渇するまで、数兆年にわたって一定の光度とスペクトル型を維持する。赤色矮星の寿命に比べて現在の宇宙の年齢は比較的短いため、主系列段階より先の段階に進化した赤色矮星は存在しない。
概要赤色矮星の想像図

主系列星は、質量が小さいものほど以下の特徴を強く示すようになる。

直径が小さい

表面温度が低く、放つ光が赤みを帯びる(黒体を参照)

明るさが暗い

恒星としての寿命が長い

赤色矮星は主系列星の中でも特に質量が小さく、これらの特徴が顕著である。また、赤色矮星は活発なフレア活動を示す傾向があり、閃光星と呼ばれる変光星に分類されるものが多い。

赤色矮星のサイズや明るさは様々である。太陽系に最も近い恒星のプロキシマ・ケンタウリは、質量・半径がともに太陽の7分の1程度、可視光での明るさは1万8000分の1に過ぎないが、最大級の赤色矮星であるラランド21185は、質量・半径ともに太陽の半分弱、明るさは180分の1に達する。

最小の赤色矮星の質量は太陽質量の 8% 程度である。これより質量の小さい天体は、中心部の温度が上がらず、軽水素核融合反応を起こせない。このような天体は、恒星ではなく褐色矮星に分類される。一方、最大の赤色矮星の質量は太陽質量の46%程度と考えられ、これより質量の大きい恒星は終末期に膨張して赤色巨星へと変化することが予想されている。

赤色矮星は宇宙で最もありふれた恒星でもある。個数ベースで見ると、太陽近傍にある恒星と白色矮星のうちM型の赤色矮星が6割を占め、白色矮星を除くとその割合は8割弱に達する[5]
定義太陽から4.2光年と最も近い位置にある赤色矮星プロキシマ・ケンタウリ

「赤色矮星」という用語には厳密な定義は存在しない。この用語の最も初期の使用例は1915年であり、単に高温な「青い」矮星と「赤い」矮星とを対比するために使用された[6]。この用語の使用は確立されていったものの、その定義は曖昧なままであった[7]。どのスペクトル型の恒星が赤色矮星に分類されるかについては、研究者により様々な範囲が決められている。例えばスペクトル型が K8 から M5 までとするもの[8]、あるいは K5 より晩期のものとするものなどである[9]。その他には dM と略される Dwarf M star という呼称も用いられたが、この分類にはしばしばスペクトル型が K の恒星も含まれた[10]

現在の用例においても、赤色矮星の定義は依然として揺れがある。明示的に定義される場合、典型的には晩期K型星と早期から中期M型星を含むが[11]、多くの場合単にM型星のみに限定される[12][13]。また、全てのK型星が赤色矮星に含まれる場合や[14]、さらに早期型の恒星が含まれる場合もある[15]

最近のサーベイ観測では、非常に低温だが実際に主系列星である天体に対して、L2 や L3 のスペクトル型が与えられている。同時に、M6 や M7 程度よりも低温な多くの天体は褐色矮星であり、水素の核融合反応を維持できるだけの十分な質量を持っていない[16]。そのため、赤色矮星と褐色矮星のスペクトル型には大きな重複があることになる。このスペクトル型の範囲内にある天体は分類分けを行うのが難しい。
特徴

赤色矮星は非常に低質量の恒星である[17]。そのため中心部は比較的低圧で、核融合の速度は遅く、そのため温度も低い。エネルギーは、陽子-陽子連鎖反応によって水素からヘリウムが合成される核融合反応の過程で生成される。したがって赤色矮星が放射する光は非常に弱く、しばしば太陽の1万分の1程度の明るさになる。しかし生み出すエネルギーの量は 1022 W (10兆ギガワット) に達する。最も大きな赤色矮星、例えば HD 179930 や HIP 12961けんびきょう座AX星であっても、その光度太陽光度のわずか 10% に過ぎない[18][注 1]

一般に、質量が太陽の0.35倍より軽い赤色矮星では、核から表面へのエネルギー輸送は対流によって行われる。赤色矮星内部は温度に比べて密度が高く、内部の不透明度(英語版)のため対流が発生する。その結果として放射によるエネルギー輸送は減少し、その代わりに対流が恒星の表面へエネルギーを輸送する主要な形態となる。0.35太陽質量より重い恒星では、核の周辺に対流が発生しない領域を持つ[19]赤色矮星の主系列段階の寿命の理論予測[20]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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