この項目では、栄養学で使われる分類について説明しています。色による肉や果物の分類については「赤肉」をご覧ください。
100gの生の赤肉が調理され65グラムに。
栄養学や疫学において赤肉(英:red meat)、赤身肉は、哺乳動物の肉で、牛豚羊馬ヤギの肉である[1]。単に肉(食肉)のことである[2]。家禽(鳥)や魚は含まない[1]。さらにハム、ベーコン、ソーセージといった加工肉 (Processed meat) を分類し、こうした分類から食生活指針の推奨が構成される。
世界保健機関 (WHO) / 国際がん研究機関 (IARC) は、2015年に主に結腸直腸癌のリスクから、赤肉をおそらく発がん性がある2Aに分類した[1]。加工肉は塩、塩漬け、発酵、燻製などの加工によって処理された肉であり、このグループ1(発がん性あり)に分類される[1]。2007年には、世界がん研究基金 (WCRF) が週に赤肉500g以下を個人の目標として、また公衆衛生上の目標を週に300g以下とし、加工肉についてはできるだけ食べないよう推奨している[2]。これらをうけての日本での検討では平均摂取量の少なさから諸外国より弱い関連性がみられたが、「日本人のためのがん予防法」の目標には採用されていない[3]。ハーバード大学医学部の見解では、赤身肉や加工肉は確かに体に悪く、赤身肉よりも白身肉が比較的推奨されるというエビデンスが蓄積されつつある[4][5][6]。しかし、動物性タンパク質を炭水化物から食事に切り替えた場合に、認知機能の改善が見られたということである[7]。 2016年の文献レビューでは、1日100グラム以上の肉が消費された時のリスク増加は、脳卒中と乳がんで11%、心血管疾患死亡率は15%、結腸直腸がん17%、前立腺がん19%であった[8]。また、別の研究は82グラムあたりのリスク増加を見出しており(右図)、1日42グラム以下とした場合、死亡リスクは7.6-9.3%低下する[9]。 1日82グラムの摂取によるリスク増加[9]赤肉加工肉 肉に含まれるヘム鉄は無機鉄と同様に、発がん性物質のN-ニトロソ化合物(ニトロソアミンなど)の生成を促進したり[1][10][注 1]、脂質過酸化生成物 (LPO) の形成を触媒したりする可能性がある[12]。また、特に火の上での高温調理は複素環式芳香族アミンのような発がん性物質を生成する[1]。メディア、特に畜産産業は健康的な食事の一環として肉の消費を奨励しているが、ハーバード公衆衛生大学院によれば、肉の摂取量が多い場合、結腸直腸がん、心臓疾患、糖尿病のリスクが高まることがこれまでの研究で示されているため、家禽(鳥)、魚、豆など他のタンパク質源に比べると、健康を保つために最適な食事ではない[1]。ミオグロビンの量が肉の色を決めており、豚では鶏や魚より多いことから、赤肉に分類される[13]。 地中海食では、特別な日にだけ肉を食べており、こうした食習慣は理想的である[1]。 2015年のアメリカの食生活指針では、持続可能性(サステナビリティ)の概念が導入され、人間の健康と天然資源を維持するために赤肉と乳製品の消費を抑えることに言及している[14]。 2002年の世界保健機関の報告書では、動物性タンパク質の摂取量が60gから20gに減少すると、カルシウム必要量が240mg減少するという推定がある[15]。 亜硝酸ナトリウムや硝酸ナトリウムといった食品添加物(発色剤)や、燻製処理は、N-ニトロソ化合物(ニトロソアミンなど)や多環芳香族炭化水素 (PAH) のような発がん性物質を生成する[1]。これらを使わない加工肉は「無塩せき」と呼ばれ、中小企業の商品に多い[16]。ハーバード公衆衛生大学院の解説では、硝酸塩が使われていないという加工肉は、しばしば天然の硝酸塩が豊富なセロリジュースで保存されており、安全性を判断するにはデータは不十分で、肉自体に他の発がん性物質の形成を促進する物質があるため、硝酸塩が使われていないとする加工肉でも、特別に扱わないということが最善であるとした[1]。塩分や脂肪分も多い傾向にある[17]。
肉
死亡リスク13%増加20%増加
心血管10%増加18%増加
がん16%増加21%増加
加工肉