『赤穂浪士』(あこうろうし)は、大佛次郎による長篇小説である[1]。これまで4回の映画化、3回のテレビ映画化、1回の大河ドラマ化が行われた。本稿では映画化作品についても詳述する。「#映像化リスト」も参照 赤穂事件を題材としたものの代表的作品で、映像化の回数も多い。従来の『忠臣蔵』では、主君の仇をとる「義士」として捉えられていた47人を、幕藩体制や時代風潮に抗う「浪士」として描いている。 『東京日日新聞』で、1927年-1928年にかけて連載された[1](挿絵・岩田専太郎)。その後、1928年-1929年に改造社から3巻本として刊行された[1]。様々な版本・文庫判で刊行され、現行は新潮文庫上下巻で、討ち入りの時期に併せ、2007年(平成19年)暮れに改版した。 赤穂事件を架空の浪人・堀田隼人の視点を通して描いている。隼人は、お仙や盗賊・蜘蛛の陣十郎らとともに事件の影で暗躍する。このため、本作の主人公はあくまでも堀田隼人であるが、映像化の際は、ほぼ大石内蔵助が主役になっている。また、多くの「忠臣蔵」ものの作品で千坂兵部が大石のライバル役として登場する事が多いのは、本作での設定描写の影響とされる。
概要
主な登場人物
堀田隼人 - 主人公。赤穂浪士の動向を探る。
蜘蛛の陣十郎 - 隼人の相棒。
お仙 - 隼人の愛人。
目玉の金助 - 隼人の子分。
吉良義央 - 浅野内匠頭の切腹や浅野大学の改易にも同情する人情味のある高家[注 1]。
小林平七 - 上杉家臣で吉良家重臣。
千坂兵部 - 上杉家の筆頭家老。「猫兵部」という綽名があり、猫が好き。
上杉綱憲 - 義央の長男。米沢藩藩主。
吉良義周 - 吉良家嫡孫。綱憲の次男。次期当主。
松原多仲 - 吉良家家老。羽倉斎宮門下。国学・神学を学ぶ。
大石内蔵助 - 浅野家家老。討ち入りを後悔したり、自分を「悪党」と卑下したりするなど従来の解釈とは異なる設定。
大石主税 - 良雄の長男。逞しく体格のいい若者。
大石良総 - 良雄のいとこ大叔父(良雄の祖父・大石良欽のいとこ)。坊主頭で陪堂のなりをしている。元・赤穂藩士。
大野九郎兵衛 - 浅野家家老で主に経済面を担当。内蔵助に家財を盗られて激怒する。
毛利元義 - 討ち入り直前に姿を消す。
柳沢吉保 - 幕府側用人。
特徴
赤穂義士を英雄としては描いていない。大石を「悪人」と評した箇所があり、また討ち入りを知った人物が「義士か?」[2]と何度も呟く。
時系列では故人の山鹿素行は、吉良・上杉(特に千坂高房)との深い関係の言及がある一方、赤穂義士とは無関係。
映像化リスト
映画
赤穂浪士 第一篇 堀田隼人の巻 - 1929年、日活太秦撮影所/日活、監督志波西果、主演大河内伝次郎
堀田隼人 - 1933年、片岡千恵蔵プロダクション/日活、監督伊藤大輔、主演片岡千恵蔵
赤穂浪士 天の巻 地の巻 - 1956年、東映京都撮影所/東映、監督松田定次、主演市川右太衛門
赤穂浪士 前編・後編 - 1961年、東映京都撮影所/東映、監督松田定次、主演片岡千恵蔵)
テレビ
赤穂浪士 (1959年、NET、主演:柳永二郎)
赤穂浪士 [3](1964年、NHK、主演:長谷川一夫)
赤穂浪士 (1979年、テレビ朝日、主演:萬屋錦之介)