赤毛のエイリークのサガ[1](あかげのエイリークのサガ、アイスランド語:Eiriks saga rauda、赤毛のエリクのサガ[2])は、サガの一つでアイスランド人のサガ
に分類される。赤毛のエイリークのグリーンランド入植とソルフィン・カルルセフニのヴィンランド探検を中心に扱うサガである。
同じ題材を扱った『グリーンランド人のサガ』と比べ、探検の描写が具体的である点、キリスト教色が強調されている点、それにグズリーズ・ソルビャルナルドーティルが物語の重要な役割を果たす点に特徴がある。
『グリーンランド人のサガ』には『赤毛のエイリークのサガ』についての言及があるので[3]、『グリーンランド人のサガ』の作者はこのサガを参考にしたようである。しかし、両者に記されている内容はかなり異なっており、互いに矛盾する点も多く見られる。
このサガは2冊の写本、ハウクスボーク(14世紀)とスカールホルトスボーク
(Skalholtsbok、15世紀)に保存されている。現代の文献学者はスカールホルトスボークのほうがより原本に近いとしている。オリジナルは13世紀に書かれたとされる。ソルヴァルド・アースヴァルズソン(Torvaldr Asvaldsson)とその息子エイリークは殺人事件をおこし、ノルウェーを追放されてアイスランドに移住する。エイリークはアイスランドでまた殺人を犯し、追放処分をうける。そこでエイリークはグンビョルン・ウールフスソン(Gunnbjorn Ulfsson)が西に流されたときにみたという陸地を探し、そこに移住することにした。そしてエイリークは首尾よくグリーンランドを発見し、ブラッターフリーズ(Brattahlid)に定住した。エイリークはショーズヒルドと結婚しており、レイフとソルステインという2人の兄弟がいた。ソルステインは父と共にグリーンランドで暮らし、レイフはノルウェーでオーラーヴ・トリュクヴァソン王のもとに滞在していた[4]。 アイスランド追放の際にエイリークを助けた仲間の一人、ヴィーヴィルの息子ソルビョルンは、経済的な理由からその娘グズリーズを連れてグリーンランドへ移住する[5]。このとき金持ちのエイナルは美しいグズリーズに縁談を持ちかけたが、ソルビョルンは断る。移住先のグリーンランドで大飢饉が起き、困ったソルビョルンたちの集落は高名な女予言者ソルビョルグを招いて吉凶を占ってもらうことにする。ソルビョルグは占いの準備に必要な『ヴァルズロクル』(霊を呼び寄せる歌)を歌える女性はいないかとみなに尋ねる。ただ一人、その歌を知っていたグズリーズは歌うよう求められるが、キリスト教徒の彼女はためらう。結局説得されてグズリーズが歌うと、ソルビョルグの占いはたちまち成功する。ソルビョルグはお礼にグズリーズの未来を占い、「お前の子孫はアイスランドで繁栄するだろう」と予言する。その後、ソルビョルグが占った通り天候はすぐに回復した[6]。 ある日、エイリークの長男、レイフ・エリクソンはグリーンランドからノルウェーへ向かう途中でヘブリディーズ諸島に流され、魔女ソールグンナと仲むつまじくなり子をもうける。ヘブリディーズ諸島を出帆したレイフはノルウェーでオーラーヴ・トリュクヴァソン王に謁見し、王からグリーンランド布教の任務を授かる。グリーンランドへ帰る途中、偶然にも小麦とブドウの木が自生している陸地ヴィンランドを発見した。
ソルビョルンとグズリーズの移住
レイフの航海 フェロー諸島の切手「レイフ・エリクソンのアメリカ発見」